期末テスト対策
しばらく冬先輩とうどんをすすっていると、あの二人が帰ってきた。二人の顔はどちらとも浮かばない顔だった。
「おー……負けた?」
「……うん」
「メダルって……なに」
春は残念そうだ。思っている感情がそのまま、表に出ている。秋は……もう負けすぎてメダルの存在すら、忘れてしまったらしい。いや、なかったことにしたらしい。
「そうだよね! 現実逃避したいよね!」
「え……あ、はい……」
「……誰?」
冬先輩が現実逃避という言葉を口にした。なるほど、この人もなかったことにするタイプなのだろう。だが、負けた当日は凹むタイプだ。なぜなら、さっきまで凹んでいたからだ。
「冬先輩だよ……」
小声で誰と秋に言われたので、俺も小声で返してあげた。すると、信じられない、といった目で俺と冬先輩を交互に見ている。
「え……? 冬先輩?」
「そうだけど」
一度、しーんとした空気が流れた。その空気に耐えきれなくなった俺は秋の方に目をやると、口をポカーンと開けて固まっている。
「……まじ?」
「なに、どうしたの?」
俺にぼそぼそと聞いてきた。それを不審に思った冬先輩が秋の目を見つめる。
「いや、なにも……」
冬先輩は落ち着きを取り戻して、学校でよく見る冬先輩に戻っていた。だから秋は目をそらした。至って普通の冬先輩だ。
「あ! それより、テストやばい!」
「……嫌なこと思い出した」
春が頭を抱えている。テストがやばいのだろう。もちろん俺もね! 秋はもうよくわからない感情と言った顔だ。冬先輩はニコニコの表情が固定されている。
「冬先輩! 頼む!」
俺は席から立ち、土下座。さっき清掃員さんが通り過ぎたことは把握している。だから大丈夫だ。
「はぁ……まぁ、いいよ。そこまで言われるならね」
顔を上げる。そこには冬先輩の目があった。それは人を見る目ではなかった。言葉だけで見ると温かい。多分、俺以外の人が居るからだろう。だって俺には酷い言葉をマシンガンのように吐く。
俺の後ろから大歓声が起こっていた。春と秋だ。周りの人からは白い目を向けられている。それすらも気づいていない様子だった。
「はいはい。うるさいよ」
手を叩く冬先輩。先輩としての、学校の評判通りの冬先輩だった。
それから勉強会の日程を決めて、そそくさと俺は帰った。あの三人は人生相談という名のお喋りをするらしい。もう勘弁だ。あ、でも明日になんか言われてたような……?




