優等生はいいな
翌日の昼休み。俺は何故か、冬先輩に呼ばれている。場所は屋上。どうやら、優等生なら先生もあんまり苦情を言わないらしい。
「あーあ。優等生っていいなー」
屋上までの階段を上がる。その声はこの階段上に響いていた。だけど、聞き取れないタイプの響き方だ。壁の上のガラスから日が差し込む。まるで悪いことをしたくらいに、暗い。
「あ、やっときたね」
扉を開けると、まずは風がお出迎えしてくれた。最近は風が吹いている。流石のお天道様も9月初句で力尽きたようだ。冬先輩は柵に腕を置き、街の景色を見ていたところだ。
「はいはい、来ましたよ……って四季さん?」
「はいはい! どーもどーも!」
冬先輩の横に四季さんが居た。会ったのはファミレスで大量に奢らされた以来だ。だからいいイメージはあまり持たない。いや、性格はいいんだけどね。
「それで……なんでこの場所に?」
「あぁ、それはだな」
ごくり、と喉が動いた気がした。何を言われるかわからない冬先輩相手では身構える必要がある。無意識に拳を握りしめて。
「一学期の成績。ちゃんと取れたのか?」
「……え? い、いえ……」
冬先輩が腕を組む。こりゃあ説教もんだ。一学期は冬先輩に教えてもらったのにも関わらず、赤点を何教科か取ってしまった。だから毎回、俺に当たりが強い。
「はぁ……お前な。ここで落としたら受験にだって……」
「まぁまぁまぁ! 説教よりもまずはテストだよ!」
四季さんが冬先輩の暴走を止める。ふぅ……助かった。四季さんが居なければこの場は冷え切っていただろう。
「それで……お二人は仲がいいんですね?」
「あ? あぁ……まぁたしかにな」
「大体は一緒にいるからねー!」
四季さんが冬先輩に抱きつく。手振りでは嫌がっているが、満更でもない顔をしている。そのくらい、仲が良いのだろう。
「それより。今日の放課後、ファミレス行くぞ」
「それって……」
「そうだよ。勉強だよ」
「でも勉強会は来週……」
「うるさい」
言葉を遮ぎられた。その目つきは鋭く、他を寄せ付けない。あくまで俺の感想ですよ!?
冬先輩と四季さんは下に降りていった。腕時計を見ると10分くらい時間があったので、風に揺られながら街を見ることにした。
「……やっぱいいな」
ビルが何棟か並んで、何処に公園があって、交番があって……。何気ない街並みも、テストという嫌なことを前にすると癒されるものだ。
「おい! 閉めるぞ! 早く出ろ!」
……冬先輩の怒声が鳴り響くのであった。




