スパルタ教育
「えーと……? つまり……こう……ですか……?」
「……夏」
「あ……はい……」
「ふざけてる?」
「い、いえ……」
「じゃあなんでまた同じ間違え、するの?」
「え、えーと……」
優雅にファミレスで食事をしている周りの人からの視線が俺達が座っている5番テーブルに集まっている。ここはテーブルの中でも中央付近。なので、四面楚歌状態だ。
数学の問題集。それも、冬先輩の握りしめた拳の餌食だ。同じ間違えを繰り返す。それに腹が立ったのだろう。しかも、追い詰めて来るタイプの怒り方だ。
「うまーい!」
「四季、黙ってて」
「んー! これもいい!」
「……」
「あのー……四季さん……? そろそろいい加減に……」
「夏。早く教えてよ。なんで?」
「ぁぅ……」
冬先輩の隣に四季さんが座っている。ただ座っているだけならば良かったのに、パフェやらチョコケーキやら。俺でも食べ切れるかわからない量のスイーツが四季さんの前に整列している。
カオスだ。目の前では怒り狂って居る冬先輩。その横ではスイーツの食レポをしている四季さん。で、冬先輩のサンドバッグ、俺。この状況で勉強? 笑わせないでほしい。
「いい? この世の中では同じミスは通用しないの。すぐ干されて誰も何も頼んでくれなくなるよ? わかってるの?」
「あ……はい……」
「じゃあなんで同じミスするの。わかってないんでしょ?」
「はい……」
「どっちだよ! わかってるの? わかってないの?」
「……」
「とろける~!」
「なんだこの状況……」
「あ? なにか言った?」
「な、なにも!」
一向に勉強が進まない。もはや人生相談みたいなものだ。正直、スイーツの匂いでお腹が減って集中できない。と言っても冬先輩の堪忍袋は膨れ上がっている。どうしろと言うんだ。
俺の顔を睨むような目。それが冬先輩だ。学校では見ることができないだろう。四季さんは……いつも通りだ。お昼休みのお弁当を食べる時でも見れるだろう。
「……はい。出来るまでには成長できたみたいだね」
「はい……ありがとうございました……」
「美味かったー! ありがとね!」
「いえ……」
街灯が付き始めた頃、俺達はファミレスを出て、帰路に着いた。スイーツの山の代金は俺が支払った。もはや財布から叫び声が聞こえる。これも俺の叫びなんだよな……。
スマホを見ると、19時03分。まさか、2時間30分の内1時間近くは人生相談だとは……。
「あ、明日も来いよ! 次は秋たちもな!」
「え? あぁ……はい……」
「なに? なにか文句ある?」
「な、ないです!」
「また奢ってねー」
「それはちょっと……」
「え……そんなぁ……」
四季さんには悪いけど、俺は限界だ。冬先輩に肩を組まれ、勝手に身構える。もうトラウマだ。




