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勉強会

 冬先輩の提案により、勉強会は今日へと前倒しになった。なんでも、冬先輩に用事ができたとか。深追いはしないでおく。理由はまぁ、しばかれるからと言っておこう。

「はい。じゃあ行くよ」

「はーい」

 冬先輩が全員をまとめる。今日は冬先輩と俺と、春と秋だ。みんなそれぞれがヤバい顔をしている。切羽詰まった顔というか、追い詰められた動物みたいな顔をしている。

「あ、そうか! テスト8日前か!」

「……約、テスト1週間前だな」

「おわった……」

 夏休みからの一発目のテストが始まろうとしている。長期休みでまだ勉強グセが治っていない時期でのテストだ。もはや高校側が羽目に来ている。

 冬先輩と隣で、春と秋は後ろで2人並んで歩いていた。すると、冬先輩から話しかけられた。

「……みんなやばいのか?」

「そーですね。唯一大丈夫なのは秋くんくらいですね。春に至ってはヤバいとかの次元じゃないです」

「……そうか。わかった」

 覚悟を決めたような顔で前を見直した。どうやら、勉強会に向けて気持ちを入れ直しているのだろう。もしくは諦めたかのどっちかだ。

「はい。じゃあ教科書出して」

 ファミレスに着いてからというもの、すぐさま席に座り教科書を開いている。ドリンクバーはもちろん。おつまみ的に食べられる物を頼んだ。高校生のチョイスは揚げ物中心だが。

「先輩ー。ここの作者の気持ちってなんですか?」

「なになに……」

 国語だった。その文には「波がある。そこに私は立ち、空を見上げる」とある。その前の文では、「人間関係に疲れた私は、癒やし目的で海に来た」とある。その後の文には、「入道雲。それは私を励ましてくれるかのように、綺麗な形をしていた」とある。

「んー……?」

 冬先輩は頭を抱えた。正直に言うと、国語は苦手だと昨日言っていた。「作者の気持ちなんてわかるわけないだろぉ!」というタイプの人だ。

 そんな人が今、人の気持ちに寄り添おうとしている。急にやれと言われてもできないものだ。できるならば、日常に隠れた天才と呼ばさせてもらおう。


 数時間後。冬先輩は机に突っ伏してうなだれていた。自分の頭の良さを発揮できなかった。

 国語では気持ち問題で心をくじかれ、秋くんの理系問題についていけてなかった。日本史に関しては俺の方が上だった。

「どうして……」

「冬先輩……大丈夫っすよ」

「そーですよ! 冬先輩がいてくれるだけでやる気が出てくるんですから!」

 冬先輩がばっ、と顔を上げた。春のフォローが上手かった。そのおかげで、冬先輩も機嫌を取り戻したみたいだ。

 ちなみに秋はまだ理科の問題を解いている。ほんと、飽きないものだ。熱心で関心関心。

 しばらく、春によるカウンセリングが続けられた。

「3年生ってね、何かと考えることが多いんだよ」

「それは……進路ですか?」

「そう。進路が一番の敵だね。2番目は周りの人」

「周りの人?」

「そ。総合型で受験している人はもう結果が出ているからね。大体は受験終わった組と、終わってない組の二手に分かれる」

 この1年も後半に差し掛かる時、3階のフロアは地獄みたいな雰囲気だった。階段通り過ぎるだけで、張り詰めた空気が伝わってくる。

 先生が気を引き締めているのかわからないが、この学校はかなり引き締めつけてくるらしい。

「危機感を持てとか、勉強しろ、とかね。正直、ストレスのオンパレードだよ」

「……」

 3年生のリアルな愚痴を聞いて、固まっていた。かなりグロい。来年、俺たちもそうなると考えると吐き気がしてくる。

 楽観的な考えが取り柄の俺でもさすがに危機感を覚える。

 テスト、今からでも頑張ってみるか。

 そう決意した、勉強会なのであった。

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