ギャンブル依存症
俺達は春の提案でなぜか階段で4階まで行くハメになってしまった。だが! これを乗り越えれば念願のゲーセンだ!
「何しようかなー……!」
そんな声が階段中に響き当たる。そこら一帯の壁は全部白で、なにかと神秘的だった。左側の壁はガラスとなっていて外の風景が一望できる。
日も傾きかけた赤い太陽が見れる時間帯。やはり俺はこの時間帯の景色が好きだ。
街一帯が赤く染まる。それは「遊びのタイムリミット」という小学生の頃の合言葉を思い出す。だが、今。俺達は成長してこんな時間まで遊べるようになった! 電車も赤い太陽に照らされ、昔の大阪環状線バリの色になっている。それは言い過ぎかもしれないが。
「はい! 一番乗り!」
階段の頂上からそんな声が聞こえてくる。「ほら、頑張って行くよ」と秋に言われた。外の景色を見すぎて足が止まっていたらしい。
「やっとついた……」
エレベーターなら、一瞬で終わることも自分の足でやればなんでも旅のようだ。
ゲーセンは相変わらずうるさかった。ずっと何かしらのゲームの音が響き渡るし、高音のピコピコらしき音がずっと鳴っていた。これでこそ、ゲーセンの雰囲気だ。
「まずなにするー?」
「決まってる。まずはメダルゲームっしょ!」
俺はそう答えた。そしたら満場一致で了解をもらった。気が合う友が居てよかった。
俺達はゲーセンの奥に進む。手前側が100円でできるゲームが並んでいて、奥側にメダル専用ゲームがバラバラに置かれている。
メダル両替機に100円を突っ込み、15枚をゲットした時だった。
「くそ……! やってられるかぁ!」
何処かで聞いたことのある声がした。その声は奥のパチンココーナーから発声しているらしい。
「何処かで聞いたことが……。ちょっとこれ持ってて! すぐ戻る!」
俺は返事を聞かず、春にメダルの器を預けてパチンココーナーに足を踏み入れた。
すると、その声の正体がすぐにわかった。紫色の髪で、メガネをしている。そんな女子だ。
「なにやってるんですか」
「あー? なにって……」
俺は声を掛けた。その人物は振り返って俺の顔をまずまずと見る。そして、声に詰まった。
「冬先輩。ここの常連だったんですね」
「ちが……なんでそう決めつける!」
「だってさっき、荒い声がメダルコーナまで響いていたから」
事実を淡々と言うだけで、冬さんはおどおどする。この状況下は有利だ。
「っていうかここに来て大丈夫なんですか?」
「18歳以上ならいいのだ! まぁ……学校にバレたら終わりだがな! がはは!」
冬さんは学校とプライベートでかなり性格が変わる。学校では後輩に優しい神先輩と揶揄されているが、プライベートでは怠惰でしかも、ギャンブル依存症だった。ギャンブルの場にいるときだけテンションが上がるという、なんとも厄介な人だ。
俺は頭を抱えた。こんなのでも俺より頭がいいのだから。




