テスト前の憂鬱感
俺はあんまり覚えていない。なぜ、職員室に来たのか。なぜ、俺は怒られているのか。まったくだ。あ、そうだ。満腹感のまま寝てしまったことは覚えてる。
「お前ら……今何時だと思ってんだ……」
担任の樫木先生が目の前にいる。左右には秋と春が座っている。春はなんともなさそうな顔だ。強いて言うなら面倒くさそうだった。秋は俯いていて、何を考えているかはわからなかった。
「んー……1時!」
「……はぁ……4時だ。6時間目から40分経っている」
いつの間にやら、無意識に授業をサボっていたみたいだ。俺は頭をかいた。秋は相変わらず俯いている。
しばらくすると、樫木先生の手には原稿用紙3枚分があった。それを1枚づつ配り、「明日な」と強めに釘を指した。
「あー! めんどくさーい!」
俺は発狂した。春は慣れているので、「ちょちょいと書けば終わるよー!」と呑気なことを言っていた。対して秋は、さっきから目に光がない。
「どうしたんだ!」
「はぁ……まさか、寝ちゃってたとは……」
「まぁまぁ! 切り替えてゲーセン行こ!」
春はそう言って教室を飛び出した。俺は意気消沈している秋の腕を掴み、下駄箱まで連れて行った。
わざわざ、俺が靴箱を秋の分まで開けてやった。秋は「どーも……」とだけ言っていた。流石に靴を履き替える意力はあるみたいだ。それよりも先生の説教の威力がデカいが。
春はそそくさと先に外に出ていた。俺達は合流して、駅前までのなんともない道をひたすら歩く。夏休みで久しぶりに見た道も2日もあれば、特別感から憂鬱感に変わっていく。
秋は相変わらずテンションが低い。歩く姿もなんかおぼつかない。そんな秋を見かねた俺は、近くのコンビニでシュークリームを買って差し出した。
「ほら……。そんな顔してたら可愛い顔が台無しじゃん」
そう言った瞬間、秋はみるみると元気を出していた。シュークリームをばくばくばくっ、と勢い良く食べている。
「そーだよね! うん、そーだよね!」
と、相変わらずの自問自答で誤魔化していた。春は「意外と食べるじゃん!」と言って笑っていた。いや、「アンタも食べるじゃん」と言いかけたが止めた。
流石に屋上の記憶がまだ残っている。あれは相当、髪にも心にもきた。
ゲーセンは、駅の後ろにどデカいビルがある。その中の4階に位置している。ほかの階ではスーパーや薬局、ましてや眼科などもある。眼鏡屋があるので便利だなぁ、といつも思っている。
俺達はエレベーター……かと思ったが春が、「階段で行こう!」と言い出した。春が先に行って、俺達が後だ。
春のスカートは折っているので、際どい所がよく見える。
俺の視線に気がついた秋が小声で何か言ってきた。
「ほんと、飽きないね……」
秋の目には冷ややかな冷たいものを感じた。




