暑すぎて眠いものも寝れない!
「ぁ゙ー……」
正直、俺は限界だった。エアコンも当たらず、風も熱風。そして、先生の熱意。全てが暑い。暑いんだよ。
「はい! じゃあここを……八月!」
「ぁ……? はい!?」
俺はとっさの指名に肩を震わせ、声が裏返った。そんな俺の反応に数人が笑う。冷房が効いた席に座ってる人は、もうみんな、夢の中だ。
「ここを微分しろっ!」
「びぶん……? なんですか、それ? おいしいんで……」
「食べ物じゃねぇ!」
俺の言葉は最後まで聞き取られなかったようだ。そのくらい、価値のない言葉だったらしい。
「いいか!? 微分はなぁ……というか、全部なんだが! 覚えろ! こ・う・し・き、をな!」
ふと黒板を見ると、プロジェクターが起動していて、その画面によくわからない数字やアルファベットが書いてあるものが映し出されていた。
「なに……あれ……?」
「公式だよ。言い換えると、説明書みたいなものだよ」
隣の席の秋が教えてくれた。だが、説明書は説明書でも、難しい説明書ならば俺はわからない。だけど、秋はちゃんとわかっている様子だった。
「ねぇ秋……放課後、教えてくれない?」
「いいけど……ほんとに僕でいいの……?」
「何言ってんだよ! お前しかいない!」
俺の声は思っていたよりも響いており、気がつけばまた、標的の的だった。
「お! 八月もやる気出たか!」
「いやちが……」
数学の先生が堂々とこっちに近づいてくる。何か重そうな紙の束を持って。しかも俺の席は前から3列と、あまり後ろではない。
「なら……! はい!」
机に置かれた、紙の束には、何やら怪しげな数字が書かれていた。
「……まさか」
「そうだ! やる気を出してくれたからあげる! 明日までな!」
そう先生が告げたとき、チャイムが鳴った。俺は絶句するしかなかった。そして、その紙の束から視線を逸らせなかった。
「……どんまい」
俺の横から遠慮がちな声が聞こえてきた。いや、同情だ。
その後も俺はいろいろな授業でなぜか当てられた。理科では実験台にされ、体育では、見本役となったが失敗したりと、不運続きだった。
そして今、昼休み。俺は秋と机をくっつけて食べていた。
「なんだよもー! 全てが暑すぎてなにもできない!」
「たしかにね。今日はやけに当てられるね」
「なんで当てるんですかって聞いたら、全員眠そうな顔をしている、と言われたの! そんなに眠そう!?」
「はは……残念ながら……雰囲気が……」
俺はうなだれた。秋が言うならそうなのだろう。実際、俺にも自覚はある。だって暑いんだよ!
「雰囲気って……どうすることもできないじゃん……」
秋の言葉が心に強く刺さった。




