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アクリテルガルデ 4

 拘束されたゴードンを他所にグラフはみんなに頭を下げた。

「悪いなみんな。ヤバい案件になっちまったな」

「麻薬。ですかね。初めて見た」

ヴィオラが袋を覗いて言った。


「リタ。こないだ言ったことに訂正がある。詮索はしろ。オレたちは死の商人の片棒を担ぐわけじゃねえ。この白っぽい粉は人間を快楽に導いたあと、完全に駄目にする。経験は学びだ。オレも今学んだ」

ホーニーの言葉にリタも状況が最悪になったことがわかった。


「御者の二人と情婦はシロだ。ゴードンは置いていくか?粉はどうする?我々が手を引くか?」

もう三日ほど歩けばブロッセルに到着するだろう。

みんなの視線がグラフに集まり、進むべき道を仰いだ。

「ゴードンは役人に引き渡す。辺境伯に説明願おう。我々アクリテルガルデを欺くと痛い目にあうと思い知らせねばならん」


「てことだ。ゴードンさん。ヤバい粉を運ぶ人間を辺境伯が探していた。みんな目を背けた中、金に目が眩んでお前は一人手を挙げた。ってとこか?だからお前は大商会だの威張ってたくせに一人で動いていた。御者も雇われだ。情婦も買った女だ。そんなとこだろ」

ホーニーがナイフで拘束されて動けないゴードンを脅した。


「金のためにやったんだ。大金が積まれたんだ。私じゃなくても誰かがする!それほどの大金なんだ。そうだ、お前たちも金で雇われて仕事をするだろう。同じじゃないか。え?」

ゴードンが助けを請う。


「私たちは仕事を選ぶ。この世界で禁じられている粉には手を出さない。お前は契約違反だ。アクリテルガルデの旗に泥を塗ったな」

ヴィオラは冷めた目でゴードンに唾を吐いた。


「粉を狙って襲撃が来るなら、情報はどこから漏れた?」

グラフが厄介な問題を抱えてしまいピリッとした空気で周囲に緊張感を与えた。


「どうしやす?粉を野盗に渡してしまえば依頼は安全にこなせるかと思います」

ホーニーが解決案を提示した。

「辺境伯は粉が欲しいんだろ?野盗に粉は渡せない。粉は万が一のため交渉材料として使わせてもらう。無論、辺境伯にも粉は渡せない。大陸間条約に触れるからだ」

ヴィオラが提案を退けた。


「契約を不履行にするか?ここまで来て報酬なしで帰ってしまっては酒も買えん。どうするか?」

グラフは眉間に皺を寄せ目を閉じ思案した。


「グラフさん。ブロッセルへ向かいましょう。ここでは法も無視されてしまい野盗の意のままです」

ヴィオラが進言した。

「そうだな。ここは危険だ。全員集めろ。事情を説明する」

グラフの言葉にヴィオラはリタを呼んだ。リタは事情を知らない御者と情婦の見張りを任されていた。


 馬車は急ぎ足でブロッセルに向かった。

夜になると普段と変わらず焚き火をし、飯の準備をした。静かに飯を食べ就寝した。

「見張りは私もする。先に休め」

ヴィオラがホーニーに指示した。


「リタ。すまんな。大変なことになった。やることは変わらんがな」

ヴィオラがリタの頭を撫でた。

「覚悟ですよね。頑張ります」

リタの返事にヴィオラは優しい眼差しをみせた。


 大きな爆破音のような破壊が起きた。

馬車が横転し人影が吹き飛ばされた。

「そうとうな女好きと聞いたんだがにゃあ」

人影が粉塵の中から姿を現した。


「早い段階で見つかってよかったよ」

ヴィオラが剣を抜いた。


馬車の中からグラフが出て来た。

「さあ、大捕物だ」

大剣を軽々と回し構えた。


「なかなかの剛剣だにゃあ。どこでバレた?」

情婦は無表情な時とは別人の余裕ある顔つきでスカートを捲り上げた。太ももの付け根に忍ばせたナイフを抜いた。


「全員疑ったさ。素性を知らんからな」

ヴィオラがリタを後ろに隠した。


「なるほど。いい月だにゃあ」

情婦が言うと同時にヴィオラが斬り掛かった。鍔迫り合いを蹴りで距離を取ろうとするもヴィオラは第二、第三の剣戟で間合いを測らせない。


 リタは走ってテントで休んだホーニーを呼びに行った。

「ホーニーさんがいない!」

リタは叫んだ

「放っておけ。あいつは外からくる野盗を任せてある。役不足だがあいつしかいない」

グラフが回りを見渡した。御者が二人いない。


 グラフの大きな一歩が瞬く間にリタに詰め寄りテントごと薙ぎ払った。影に隠れていた御者を一人袈裟斬りに臥した。風圧がリタの髪をなびかせた。


「ひゅー。やるにゃあ。こりゃ負け戦さだわ」

情婦がヴィオラに圧倒されるも余裕の表情だ。


「斬られて終わるか、諦めて逃げるかしたらどうだ?」

「何言ってんだにゃあ。末端価格いくらだと思ってるんだ?引くわけにはいかないにゃあ」

ヴィオラと何度も斬り結び情婦が言う。


「お前たちが野盗を間引いてくれたおかげで一人当たりの取り分が増えたにゃあ。大所帯になりすぎて難儀してだんだよ」

「そうか。なら、全滅しろ」

ヴィオラが情婦のナイフを叩き落とした。情婦は間を入れず両手にナイフを出して構えた。


「回天!」

リタの突進とバネを活かした突きが、荷馬車を掠めようとする御者を一撃に倒した。

「ふははは。子犬。お前を連れてよかったぞ」

グラフが笑った。






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