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アクリテルガルデ 3

 ガサッ。テントが揺れた。リタは目を開けると、ホーニーがそっと近づいて来た。

リタは跳ね起きて後退りした。


「なんだよ。起きろ。見張りの交代だ」

固まっているリタをホーニーはやれやれといった感じでリタと間をとってあぐらをかいた。

「襲われると思ったか。襲わねえよ」


リタはいそいそと剣を抱えてテントを出た。

後をついて、ホーニーも出てきた。

「いいか、夜が明けるまで焚き火の火は絶やすな」

あらかじめ集めた枝を焚き火に放り投げた。

「夜襲だと思ったらおもいっきり騒げ。野盗だろうと魔獣だろうと危険を感じたら全員を叩き起こして構わん。依頼主にも遠慮するな。その場で叫べ。一人づつ丁寧に起こして回るんじゃねえぞ。寝首をかかれるのが一番生存率を下げちまうからな」

ホーニーの言葉に全てコクコクと頷いた。


「戦えないなら、今はできる限りのことはしろ。オレたちは傭兵だ。仲間だ。依頼を果たすまで生き残る。もちろん依頼は果たす。傭兵ってのを簡単に言ってしまうが難しい仕事だ。仕事ってのはどんな職種においても簡単に説明できて中身は難しい」

ホーニーはリタと並んで焚き火の側に座り込んだ。


「なんか質問とかねえのかよ?」

ホーニーがぶっきらぼうに話題を振った。

「あの、依頼主さんはなぜ、従者がいないんですか?」

「おっ?いいな。よく観察できてるじゃないか。まあ、そこんとこはグラフさんが詳しいんだろうが、本来なら商隊ってのは依頼主の他にいろんな役割の従者がいるが、何故か?荷物がなんだが察しがつくか?」

「わかりません」


「ある意味正解だ。オレたちは詮索しちゃいけねえ。だが経験を積むとある程度予測はできる。今回はこの荷台の商品を購入した人物がいる。依頼主は商会を名乗っているが運送屋だな。それを目的地まで無事運び終わるまでがオレたちの仕事なわけだが、目的地がわかるから何を捌くのか、だいたい予測はできてくる」

「詮索はしない」

「そうだ。グラフさんはヤバい取り引きには応じねえ。だから安心して仕事に従事すればいい。まっ、大した商品じゃねえよ。金にはなるだろうがな」

ホーニーは荷台を指差し言い切った。リタは焚き火に枝を放り投げた。


「なぜ傭兵になったんですか?」

「いいね。オレたちの故郷は本当になんもねえのよ。それは姐さんから聞いたろ。売るもんがねえから自分たちを武力として売る。それしかねえ」


「戦争もすると聞きました」

「そうだ。まったく敵ってわけじゃねえのにオレたちは相手を殺す。大金を貰ってるからな。ある意味生きていくためならなんだってしてきた。その歴史の上で今のアクリテルガルデがあるんだ。その強さ、信頼と地位を築いてオレたちは高額依頼を交渉できるんだ」


「オレも戦争に行ったんだぜ。怖くてよ。殺せば英雄だなんて言われたりするが、何人殺してもそんな気分にはなれなかったな。手が震えてな、心が荒んだよ。戦争後遺症でな、アレが勃たないんだよ。だから、まぁ安心しな。そろそろオレは寝る。なんかあったら構わず起こせ」

ホーニーは立ち上がり、頭を掻きながらテントに入って行った。


 リタは焚き火を見つめながら、自分の今の在り方を自問自答した。足手まといではヨシローを困らせてしまう。それではいけない。思いを果たすまで諦めない心を持ちたい。

夜は更けていく。


「ヒィッ!」

リタが悲鳴をあげ後方へ吹き飛ばされる。

「退がってろ!オレたちは後衛だ」

ホーニーが庇ってくれる。


「無茶はするな」

グラフが剣を納めリタに忠告する。

「グラフさん、すいません。多分昨夜オレが焚き付けたから、変にやる気になっちまいまして」

ホーニーが弁解する。


「また野盗ですね。どうします?」

ヴィオラが最後の一人を片付けてグラフのもとにやって来た。

「索敵するにも、人数を削られたんだ。仕方ない。迎え討とう」

もう一人傭兵がいれば斥候や野盗のアジトを調べる索敵ができたものだが、ゴードンにケチられた。


 ヴィオラはリタたちのもとに集まり

「ホーニー、すまない。私も昨日リタを焚き付けた」

ホーニーは構わないですよと合図した。


「危険もなんのその!アクリテルガルデはすごいですな」

だんだんゴードンの言葉にイラつきを隠せないでいた。


「ジリ貧だな」

グラフの言葉にヴィオラは目を閉じた。

「ずいぶん野盗が多いですね」

大所帯の野盗は珍しい。こんな荷台ひとつの馬車を襲っても分け前は少ないのは明白だ。そしてアクリテルガルデの旗を掲げているのだ。襲撃を躊躇するのが野盗のかしらなら、頭の隅に考えがあってもいいはずなのだ。


声を潜めた。

「グラフさん。荷物の中身は女ものの衣類と、装飾品だけですよね」

「そのはずだ。中を確かめた上で依頼を引き受けた。ゴードンの取り引き先はさる辺境伯だ。ヤバいものはない」

「ですが、目的地はブロッセルです。辺境伯のもとへ届けるわけじゃないのが気になります」

「ブロッセルがどういうとこか知ってるだろ?」

「そりゃ、まあ」


「積荷の確認だな。契約以外の物を運ばされていたなら、ゴードンは吊し上げだな」

グラフが腕を組んだ。

「ホーニー!ゴードンを呼べ」

ヴィオラが指示をだしホーニーが走った。







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