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アクリテルガルデ 2

 アクリテルガルデ。勇敢な守り人という意味らしい。その旗を掲げてるうちは野盗の類いは恐れをなして襲ってくることはない。それほど強大な組織であり、戦闘訓練をされたものたちの集まりなのだ。

たまにそれを知らずか疑ってか襲ってくる野盗がいる。


「グラフさん。どうします?」

ホーニーが取り押さえた野盗の首に刃を当て確認した。グラフは剣を一振りして血飛沫を飛ばし、今しがた野盗を斬り伏せた後だった。

「野盗の情報は要らん。片付けろ」

いうや否やホーニーは野盗の頚動脈を一瞬で捌いた。


「あと、これもどうします?」

ホーニーが指差したところにリタが怖気付いていた。

膝が崩れて落ちてガクガク震えながら大粒の涙を浮かべていた。グラフはリタを見て

「剣を握ってるのがやっとじゃないか。子犬はヴィオラに任せておけ。依頼主に安全の確認をしたあと積荷を見てこい」


ホーニーは言われるがまま走って行った。グラフは周辺を見渡し、潜伏した野盗の残りがないかを確認して回った。

「ヴィオラ!」

グラフが叫んだ。戻ってきたヴィオラの手には野盗のものらしき返り血を浴びていた。


「子犬を慰めろ。すぐ出発する」

グラフが腰が抜けて立てないリタを指差した。

「珍しいですね。見捨てないんですか?」

ホーニーが口を挟んだ。

「道中、お前たちの暇つぶしにはなっているんだろ。まあ、剣を抜いただけでもよしとしてやろう」


ヴィオラはリタの手を引いて馬車の荷台に乗せた。

「怖かったか?魔獣相手だと頑張るのにな」

「すいません」

リタは今出せる精一杯の声を振り絞って言った。


「構わんさ。しかし剣を構えた以上、どこかでリタは大きな選択をしなければならなくなる。剣を振るか諦めるか。命を左右する選択だ」

ヴィオラは難しいことを言ったかなと思って、少し黙ることにした。リタは鼻を啜りながら泣くのをやめた。


「いやぁ、素晴らしい!アクリテルガルデは少人数でも一騎当千ですな。安心しましたよ」

ゴードンは手を叩き賞賛した。

グラフは出発を促すと御者は鞭を振って馬を走らせた。


「リタよお。当てのない旅をするってのは覚悟が必要なんだぜ。今まで何もなかった。これからもない、ってことはないんだぜ」

ホーニーが慰めのつもりで言ったがヴィオラにあっち行ってろ、と睨まれた。


「私は生まれた時から傭兵だったからな。この生き方しか知らん。リタのようにいきなり傭兵になった奴もいるが、やはり初めは戸惑うものだ」

ヴィオラは厳しい言葉を言うが心に留めて欲しいと言葉を続けた。

「先程の野盗は殺して略奪をする集団だ。傭兵は殺してでも守るといったところだ。力の使い方を間違えないで欲しい」


「ヤるかヤられるか」

ホーニーがまた、戻ってきてチャチャをいれるが、ヴィオラに無言で追い返された。


 夜になった。

「意外と順調ですな。野営は初めてだし、飯もそこそこ。こんな経験はなかなかできないでしょうな」

ゴードンは笑って連れの女性と馬車に戻った。


「あの女性はなんですか?全然表情を顔に出さない」

リタがヴィオラにこそっと問いかけた。

「ありゃ、情婦だ。今からおっ始めるぜ」

グラフは干し肉を齧りながら答えた。


 ヴィオラはリタの手を引いて馬車から離れた。

「リタはまだ知らなくていい」

馬車はひとりでに数分ほど揺れた。

ヴィオラはその間、リタの耳を塞ぎ抱きしめていた。


「リタはある人を探してるのだったな。その人はリタにとってなんだ?血縁者か、それとも思い人か」

「思い人?わたしにこの剣をくれた方です。孤児だったわたしに生きていく術を教えてくれました」

ヴィオラはふふんと笑った。

「まだ脛かじりの途中なんだな」


「この先もその人を探す旅をするならという前提で話すが、聞き流してくれてもいい」

ヴィオラの真剣な言葉にリタは頷いた。

「私は常日頃、貞操帯というものを着けている。野盗の中には無慈悲に貞操までも略奪する輩がいる。私の場合は自尊心まで奪われたくない思いからだが、リタもいずれその思い人に出会うことがあったなら純潔を捧げたいという気持ちが込み上げてくるだろう」

リタは一生懸命に理解しようとしている。

「先程、依頼主から一騎当千と言われたが、アクリテルガルデは負け知らずというわけではない。私だっていつか殺される日がくるだろう。そのとき運悪く辱めを受けながら殺してくれなんて言いながら死ぬのは嫌だからな」


「負けることもあるの?」

リタは泣き出しそうになった。

「女が剣を持つってのは色々と覚悟がいるのさ。守るものが多いのさ」


 リタはテントの中でシーツに包まりながら思い人について思いを馳せていた。

もし、本当に仮にヨシローに出会えたならどうなるのだろうか。嫌われたりしないだろうか。きっと邪魔な存在なのだろう。足手まといは否めないはず。それでも一緒に行きたい。ヨシローの旅に連れて行って欲しい。


ヨシローはなぜ旅をしているのか。たくさん聞きたいことがある。たくさんのことを、ヨシローが見る全てを一緒に見たい。

ぼんやりと思い出しながら、リタ自身の決意で里を出たことを覚悟に変えて剣に誓おうと思った。

ウトウトと瞼が重くなるのを感じながら、睡魔に身を任せてしまった。







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