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researcher

 狼男はその瞬発力を活かし、攻撃をしかけた。サクランは右腕の自身の骨で作った槍の束を切り離し、新たに骨の剣を創り出した。左手に携え狼男の斬撃を止めた。

「骨のクセになかなか、硬いな」

「毎日、カルシウムとってますので」

サクランが狼男ごと弾いた。その着地点をトンカチが攻め立てる。


(アンノウンより早いぞ。人型で動く魔物は総じて器用に立ちまわる、な)

距離をとったところを水撃で追撃した。遅れて参戦したヨシローが斬りかかる。


「テラーハウリング」

狼男の咆哮がサクランを強張らせた。トンカチの動きも止まり狼男に蹴り飛ばされた。


「ヨシローさん?」

ヨシローには効かなかった。状態異常耐性を持つため果敢に挑む。サクランが痺れから回復するまでヨシローは持ち堪えた。トンカチは蹴られた頭を両手で撫で再び参戦した。

ほんの数秒、動きを止めてくる咆哮が厄介だ。


「ヨシローさん、あの咆哮を耐えられるので?」

「体質です」

「助かります。あの咆哮、魔力ごと拘束するみたいで看破は厳しいです」


 狼男はヨシローを前にして

「変わった体質だな。あとで研究材料として解剖せねばならんな」

ヨシローは踏み込み、一閃を加えた。ヒラリとかわし

「これならどうだ?ガルートキシン」

狼男の鉤爪が紫に毒毒しく変わりヨシローを襲った。剣で弾くも毒の飛沫を浴びてしまった。

狼男はヨシローを観察する。まじまじと見届けると

「毒にも耐性あり、か。面白い」


 不意を突いてトンカチのフルスイングが炸裂した。狼男を吹き飛ばしたが強者の貫禄で立ち上がった。


「ジャベリン!」

サクランが外套の前を開き肋骨をミサイルのように変形させ発射した。計六発のジャベリンが狼男を襲った。


「テラーハウリング」

狼男の咆哮が撃ち落とした。

「身体の一部を魔力で武器化できるのか?効かんな」

三発を撃ち落とし残りを鉤爪で叩き落とした。

逆立った体毛が次の猛攻を脅威と感じさせた。


 トンカチとヨシローが左右から斬り込みにかかった。ヨシローの剣戟を素手で受け止めトンカチを後ろ蹴りで吹き飛ばした。


ヨシローの剣が手に食い込んだまま狼男が吠える。

「さあ。斬り落としてみろ。人間では難しいだろう」

引くことも押し斬ることもビクともしない。狼男の牙が遅いかかる。

「水撃」

顔面至近距離にヒット。よろめく狼男から離脱できた。顔を押さえ耐え忍ぶ狼男。


「人間。無詠唱で魔法だと?どうやって身につけた」

鼻への攻撃は効いたみたいだ。

ヨシローは答えない。


「ヨシローさん。話す必要はないですよ」

サクランが割って入った。サクランの剣が背骨のように変形した鞭となって攻撃した。狼男はヒラリとかわした。

「骨も変わった生態だな。標本にしてやる」


「ちょっと強いですね」

サクランがヨシローに耳打ちした。

「勝つことだけを考えましょう」

ヨシローが勇気づけた。


「オレは人間だった時は研究者でな。興味が尽きんのだよ。お前たちみたいなレアな存在を見るとな」

「?」

サクランとヨシローは驚いた。目の前の怪物は今なんと言ったのだと。


「よし、興味を惹いたか。オレは人間だったよ。普通に貴族の家系に生まれ、学術で良い成績を納め将来も嘱望されたヒョロッヒョロのもやしみたいなヤツだったよ」

狼男が語ろうとしたところを、トンカチだけは攻撃を仕掛けた。あとの二人が我に返り遅れて駆け出した。


 トンカチを力任せに踏みつけ、その脚に手を置いた。ミシミシとトンカチが潰されていく。

「話しを聞きたいだろう?」

そう言って二人を制止した。


「構いません。攻撃しましょう」

サクランが言うも、トンカチに大きなヒビが入った。

やはり躊躇してしまった。


「ある時、国を騒がす怪物を討伐したという報せがあってな。その死体に立ち会ったのだよ。夢中で解剖したさ。ありとあらゆる実験をその血肉で試したんだ。骨の髄までしゃぶるようにな」

狼男はトンカチを蹴り飛ばしサクランたちに返した。狼男の話しに聞き入った様子から話し続けてよいと解釈したのだ。


「移植って知ってるか?植物なんかで試したことがあるが、動物では上手くいかないらしい。オレも豚の皮で他人を試したことがあるが駄目だった。しかし、この怪物は違う。オレの腕を差し出して実験したが馴染んだよ。体質が関係するとみたね。オレの体質は怪物共の能力を受け入れる器なんだとな。ならば、オレの欲する能力を手に入れれば、オレは究極を目指せる、ってわけだ」

ヨシローは理解に追いつかなかった。サクランはゾッとした。


「オレは自分の地位も何もかもを捨てた。目の前に不老不死の素材があるなら手にするしかないだろう。オレは永遠をその研究に捧げるのだ。万物の能力を手に入れ究極の生物となったとき、はたしてオレはオレなのか。それを確かめたい」

「このヒト、狂ってる」

サクランが憎悪を向けた。


「かなり端折ったが、ご清聴ありがとう」

狼男が戦闘体制をとり再び殺意を剥き出しにした。

「狼に変身するだけだと思うか?」

狼男の肩から腕が生えた。計四本の腕が爪を尖らせた。

「テラーハウリング!」

狼男の咆哮がヨシローたちを襲う。












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