表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/100

ダンジョンアタック 4

 分厚い扉が閉まった。

「イッたれ!出力全開だ!」

号令と共に、パーティの魔法使いが最大魔法をダンジョンボスに照準を定めた。

「神の怒り ウインドバースト!」


分厚い扉の外側では騎士団の指揮官や他のパーティメンバーが結果を待ち望んでいた。


 ヨシローは三層駐屯地の休憩所で天井を見ながら身体の異変について考えていた。いや異変がないことを考えていた。

思い当たった先は、邪神様の加護だ。多少の状態異常から耐性が付与された。という結論に行き着いた。

これは心強い。


そしてもうひとつ。深紅の宝珠だ。フィムの頼みでここまでやってきたのだ。これを上手いこと独占しなければならない。現状入手後は騎士団から三柱教に渡ってしまう。色々考えつつもウトウトと眠ってしまった。


 四層駐屯地、作戦本部。

「魔法が効かないな。参謀はどう見る?」

「これまで、火以外は何度も試してきました。やはりボスの弱点は火属性ではないかと」

「物理ではないのだな」


「これまで運悪く火属性の魔法使いがいませんでした。物理攻撃が届く間合いに迫ることは、ボスの攻撃パターンからみて至難の業でしょう。火力の高い火魔法使いを呼んでいただけたら答えはでます」


指揮官は何度と同じことを質問していた。

「有象無象の冒険者を招き入れたが、こうも運が悪いものか。火の魔法が一番ポピュラーだと思っていたんだが」

進捗がないから規律の厳しい騎士団を名乗っても気を抜いた者たちが出てくる。


 ヨシローが騎士団の詰め所に呼ばれたのは冒険者がヨシロー独りになったからだった。

「先程までパーティが二組いたんだけどね。事情を説明したら離脱したんだが。君はどうする?」

ヨシローはまず話しが聞きたいと申し出た。


「ダンジョンボスの条件を説明しよう。入れるのはパーティメンバーほどの少人数だけ。つまり騎士団のように軍単位で攻略はできないのだ」

「少数班に分けて攻略はしなかったのですか?」

「何度か試したさ。四、五人でパーティを組ませて攻略を試みたんだけどな。なんせ君たち冒険者と違って熟練度が低い。ダメだったよ。被害が大きすぎる」


「ボス攻略中は分厚い扉は開くことはない。開いたときはパーティが全滅した時だけだ」

「ボスを攻略したら?」

「それができてないから検証できないんだ」


指揮官は言う。

「君は剣士だな。ボスとは相当分が悪い。次の募集した冒険者が来たらパーティを編成してみるか?」

「あまり長居はしたくないですね」

ヨシローがチラと滞在している他の騎士団に目を向けた。指揮官も士気に関わることは理解しているようだ。指揮官がいる中、どこか気の抜けたように兵は立っていた。


「ところで、君は火の魔法を使うのか?その服、少し焦げてるな。ボスには有利だと参謀が言うのだが」

「…いいえ。確かな情報ですか?」

「検証はしていない」


ヨシローは考えこんで

「例えばですが、水や風を起こすのは至難の業ですよね。ですが火ならそこの松明を持ち込めば検証はできたかと思います」

「なるほど。君が参謀ならよかったと思ったよ」


「もうひとつ教えよう。ボスの行動パターンだ」

ヨシローは驚いた。

「ボスの姿は、部屋一面を覆うほどの体躯だ。三つ目の頭と胴。巨大な右腕のみの怪物だ。ボスはそこから動かない。右腕を振り回すだけで部屋の隅々まで届く。それほど巨大だ。想像の上をいくぞ」

「ボスを見たのですか?」

「まあ最後まで聞いてくれ。ボスは雄叫びを上げる。鼓膜が破けるほどにな。これが厄介で身体が麻痺する。その後、巨大な右腕で地盤を地鳴りがするほど叩きつける。天井から無数の岩盤が落ちてくる。これで死体の山の出来上がりだ。かろうじて息があったとしても右腕に叩かれぺしゃんこだ。このパターンを繰り返し根絶やしにするまで続く」

「指揮官殿の体験ですか?」


指揮官は笑っていた。

「私は騎士団を預かる者だ。前線には出れないよ。私の部下や、先陣を切った冒険者が息を引き取る間際に聞き出した貴重な検証結果だ。ありがたく参考にしろ」

「死に際に聞くことですか?」

「遺言書は書いてきただろ?私だって多額の金で雇われて国の命令で来たのだ。君も多額の報酬につられて来たんだろう。私は金のために犠牲者も糧にする。クナトの宗教や故人の思いなどで動くわけにはいかんのだ。ここはクナトの領土だ。私の故国ではない。損得勘定は有りで役をこなす」


ヨシローは言葉を失った。

「安心しろ。君がボス攻略を達成したら多額の報酬は約束する。しかし、君はボス攻略を約束できるかな」


言い返せないままヨシローは詰め所を出た。

指揮官の言葉にモヤっとするものがあった。少し深紅の宝珠を独占したい欲が芽生え頑張る気になった。


 ヨシローは思考を巡らす。

仮にボスを倒したとして、扉が解除されるのはまずい。最悪、騎士団とも戦う羽目になるだろう。

ボスの背後に地上に出る出口があればいいのだが。

上手くだし抜きたいところだ。


「勇敢な冒険者よ」

指揮官はヨシローの手に三枚の金貨を落とした。

「なに、全ての扉を開けた者にやってることだ。無事戻ってきたら残りをくれてやる」


分厚い扉が開いた。闇の中にヨシローは吸い込まれた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ