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ダンジョンアタック 2

 クナト郊外。ダンジョン入り口。

いくつかのパーティが間隔をあけて集まっていた。


「ダンジョン内部はほぼ一本道だ。我々騎士団は最短の攻略を目指すため隠し部屋や枝道への探索は行なっていない。君たちが冒険者として寄り道したいのは我々も止めるところではない。が、生存率が急激に下がることは肝に銘じてくれ」

「では、駐屯地で待っている。ご武運を!」

騎士団の者たちはダンジョンの入り口から離れて敬礼のポーズをしたまま動かなくなった。


ぞろぞろとパーティが間隔を空けてダンジョンに侵入して行った。

昨日出くわした女の子たちのパーティもスカウトされた男を先頭に入って行った。目が合うなり目尻を指で下げ威嚇された。


 ヨシローは一番最後にダンジョンに潜ることにした。

騎士団の男たちはヨシローが潜る前からソワソワと動き落ち着きがなかった。足元にはイナゴを踏み潰した痕跡を残していた。


 ダンジョン一層目。

(本当に一本道だな)

先行したパーティの背中は見えなかった。ここまで来るのに三体のゴブリンに出会ったが、戦うことなく奥へ逃げられた。一体どこから湧いてくるのだろうか。


二層目に繋がる階段の先から人の叫び声が溢れてきた。ダンジョンの壁には間隔をあけて松明が掲げられていた。先行した騎士団が仕掛けていたものだが階段を降りるに連れ、冒険者とゴブリンが争い倒されて消えていた。ランタンを片手に慎重に下の階層へ移動した。


「おい!引き返せ。ゴブリンだ!」

ヨシローを突き飛ばして、手ぶらで荷物も仲間もおいて一層へ全力で逃げて行った。唖然としてヨシローは階下の暗闇の先を見た。ゴブリンが出るのは前もって確認済みだ。考えられるのは数が異常なほど出ているということだろう。


(ゴブリンは集団行動をするが低知能だと聞いている。組織的に進化してるかもしれないな)

魔疽がかなり濃く溜まっているのは行雲流水で確認済みだった。魔疽の濁った感じが気持ち悪い感じがして控えるようにした。


 さらに先に進むと、鼻にツンとくる臭いに思わず鼻に手を当てた。ドブ攫いをしている感じがした。

「お兄さん。やばいよ!」

三人組の女の子のうち二人が布で顔の下半分を隠しながら逆走してきた。


「私たちのツレがやばいよ。助けて!」

ヨシローの腕を掴みグイグイと先へ押そうとしたが、抵抗して

「説明して」

ヨシローが無理に女の子二人が掴む手を振り解いた。


「やばいんだって。いいから早く!」

会話が成立しなさそうだ。

「一緒に男の人がいたでしょ?」

「あいつは危険になったときの囮。全然役に立たないんだから。私たちのツレが逃げ遅れてやばいんだって!」


彼女たちの言ってることに胸くそ悪くなった。

「上に戻った方がいいよ」


彼女たちを置いて二層目の深いところまで歩いた。

先に潜ったパーティはこれを難なく撃退しながら三層へ到着したのかもしれない。実力の伴わない冒険者たちが、こうして犠牲を払いながら上に戻って行くか、命を落としてしまったのだろう。


しかし、戦いの痕跡は残っていた。パーティが落としたであろう荷物の一部や武器、ゴブリンが放ったであろう粗末な矢が散見できた。壁の松明を立て直し明かりを灯してよく見ると、真新しい剣の斬り跡が岩肌に刻まれていた。


では死体は。壁の松明やランタンで見渡す限りでこれだけのことが発見できたのに死体に関しては一体も見つからないのだ。


 ゴブリンは餓死に直面すると共喰いをする習性がある。人や家畜を襲うのは肉を喰う魔物だからだ。そして手先が器用でヒトを真似た武器を作り扱う。それでも扱いこなせてないので勝てないことはない。


ゴブリンの組織力も応戦できないことはない。色々武器を持つが戦略性がないためこれも勝てないことはない。


現実に戻ろう。目の前の惨劇はゴブリンと戦闘があったのだろう。倒された冒険者はどうしていなくなってしまったのだろうか。死体は。その場からどこかへ運び出されたのなら血の道ができるはず。引きずった跡もない。


 仕方がない。気持ち悪いが行雲流水を展開した。

たしかにやばい。全体的に潜んでいる感じだが数が読めない。岩影に潜んでいるが弱っている。


「助けて」

岩影をそっと覗くと、ツレの女の子だった。泣きながら恐怖にかられた顔をして救いを求めていた。


「ツレに突き飛ばされて、私だけ逃げ損ねた」

ヨシローが手を差し出すとしっかり握り返した。

「男の人は?」


「盾にした」

この子たちは何しに来たんだ。愕然としたが、女の子を引っ張り出した。

女の子の腹から下が無くなっていた。ヨシローは戦慄を覚えた。瞬間、ドロっとしたものが女の子を取り返しに掴みかかってきた。一瞬綱引き状態になったが力負けして女の子を奪われた。


 全体を確認はできなかった。だが間違いない。スライムだ。厄介なのがいたもんだ。ヒトでも魔物でもその排泄物だろうと見境なく捕食を繰り返し襲いかかる。小さなスライムなら排泄物処理係として処理層で飼っているのを聞いたことがある。


隠れて捕食の機会を伺っているこいつは大きさから大人ひとり分はあるだろう。動きは遅いが刃が通らない。今、唯一の対抗手段がヨシローの持つランタンの灯りだ。明るさを嫌いジメジメとした暗所をスライムは好む。そして火の攻撃が有効だ。


 壁の松明を大きく避けて不定形のこいつは岩影や岩の隙間を時間をかけて移動して獲物に近づく。


先に潜ったパーティはこのノロマの特性のおかげで気づかず三層に辿りついたのだろう。


ランタンさえ死守すれば通過はできそうだ。問題はゴブリンだ。先程の逃げ出した男はゴブリンと言っていた。ヨシローは剣を抜き身構えた。




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