表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/103

ダンジョンアタック 1

 ふと、周りを見回した。観光に来た人も信者の人も静寂に包まれて身動きを一切していなかった。会話も瞬きも呼吸すらしていなかった。


ヨシローは老人の方を向いた。

「三柱の聖遺物は女神像だけになってしまった。妹をよろしく頼む」

老人は立ち上がりヨシローの方を向いた。顔の半分が鱗で覆われて片目が空洞だった。杖をつく音だけを残して立ち去ると、時間が戻ったように周囲の人たちの雑音も帰ってきた。


 ヨシローは老人を追いかけて外に出た。いなかった。元からいなかったかもしれない。そんな気もした。だが、紛れもなく妹を守るよう託された。


「気弱そうなにいちゃん。あんたも腕試しに来たんだろ?さあこっちへ!」

勢いよくダンジョン攻略の受付をしている男がヨシローの腕を掴んだ。


「ほう。サンテールの貴族学校の服だな。勉強はできそうだ」

冒険者風の大男が受付の用紙を渡してきた。

「詳しいですね」

「これでも旅の冒険者を生業にしてるからな。どんな情報だって持っていても邪魔にはならねえ。用紙に記入したら説明してやる」


渡された用紙は遺言書みたいなものだった。

「命の保証はできねえ。死んだらこいつは届けて欲しい人のもとに必ず送ってやる。無事生きて功績を立てりゃあ報酬が貰える。ただ無様に生きていたなら冒険者を辞めて転職しな。それが冒険者ってもんよ」


ヨシローは用紙を渡して建物の奥に入って行った。

隣国騎士団の旗が飾られ、奥の壇上に騎士団の一人が立っていた。

「冒険者の諸君。長きにわたるこのダンジョン攻略に君たちの力を借りて終止符を打つ。目指すは深紅の宝珠を手に入れること!」


深紅の宝珠。紅竜の真眼ではないのか。いや名称が違うだけでモノは同じか。まったく別ものか。

ヨシローは頭を悩ませた。


「ダンジョンの構造を説明する。四層からなる内部の奥底に魔疽がある。ここがダンジョンのボス部屋だ。分厚い扉の向こうに鎮座していて我々は苦戦を強いられている。扉の前に騎士団の駐屯地がある。ボスの情報はそこで手に入れろ。次にその上の層にも駐屯地がある。ボス部屋前の駐屯地が本陣だから魔物の類いに挟まれないよう駐留している。まずはそこを目指して欲しい。一、ニ層はゴブリン程度の雑魚敵ばかりだ。お前たちの実力ならば難はないだろう。が、実力の伴わない半端ものは今すぐ辞退してくれ。我々は死体を拾うことが仕事ではない」


「深紅の宝珠は誰のもんだ?」

強そうな冒険者が言った。

「騎士団が入手するのがベストなわけだが。君のように百戦錬磨の猛者が先に手に入れたなら、我々が報酬とは別に大枚をはたいてでも買い取ろう。交渉の場を設けさせてもらう。他の者たちも貢献度によってそれなりの報酬は用意するつもりだ。その役割も持つための駐屯地だと思ってくれ」


 そして、魔疽の充満したダンジョンでは中には形を変えたり、他の魔物や罠、仕掛けが発生したりと放置しておくとまったく別ものになってしまう恐れがある。そのため駐屯地をおくことでダンジョンの変化を抑える役目を持つそうだ。ボスといえど魔疽を浴び続けると変化や進化をするものもいる。騎士団が攻略を急ぐため外部冒険者を募った隠された訳があった。


「これは騎士団と勇猛な冒険者諸君との共同戦線である。だし抜く、横取り、抜け駆け一切不要!」


騎士団の言葉に強そうな冒険者が先陣を切って雄叫びを上げた。他の冒険者も一気に雰囲気にのまれた。

ヨシローは別のことを考えていた。


 建物から出ると、やる気に満ち溢れた冒険者たちが溢れていた。ガチャガチャと鎧が擦れる音を立てせわしくしていた。


「お兄さん」

ヨシローに声を掛けたのは三人の女の子たちだった。


「私たち、新米の冒険者で強くなりたくて応募したんです。お兄さん歳が近そうだから声掛けてみたんだけど、私たちとパーティ組みません?女子だけだとゴブリン相手でも不安で」


ヨシローはびっくりした。可愛らしい出立ちで戦いとは無縁そうな女の子が声を掛けてきたのだ。

ヨシローは首を振ると

「ちっ」

一瞬にして女の子の人相が変わった。


女の子たちは手のひらを返すように振り向き、別のソロの冒険者にアタックしに行ってしまった。

身振り手振りしてヨシローを指差し、ヨシローを冷たい悪者扱いでもしてるのだろうか。上手く取り入って仲間にしたようだ。


 周りを見渡すと、既存のパーティもいれば、即席のパーティを作る人たちもいた。

そして、一時解散となった。ダンジョン攻略への参加はどのタイミングでもいいとのことだった。

新たなパーティは結束力を固めるために酒場に行ったり、慎重に道具屋を回る者、そのままダンジョンに向かう者たちと様々だった。


 ヨシローは一度、宿に戻った。

「おじいさん。巡礼は終わりました。明日はダンジョンに向かう予定です」

「そうか。古い祠の女神様にも会えたか。三柱様も嬉しかろうて。ダンジョンか。中のことは知らんが昔はクナトの若いもんでゴブリン狩りをしていたな。気をつけるんじゃぞ」


バチン。と窓を叩く音がした。二人で様子を見に行くとイナゴが窓の下でひっくり返っていた。

「はて、イナゴがなぜ?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ