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トレント・異

 トレントが死に物狂いで自害しようとしている。残念ながら意思に反して、ヨシローへの攻撃は止まない。ヨシロー自身も全ての攻撃を躱わせていたわけではない。傷を負いながらも本体に飛び込み攻撃を試みるも決定打にはならず攻めあぐねていた。


トレントは必死に自分の中にある邪悪な核を取り出そうともがいていた。口の中に自在に動く自らの枝を何本も飲み込み何かを引っ張り出そうとしていた。そして別の邪悪な意思でヨシローを攻撃していた。


「グル、ジ、イ、、イダ、イ」

トレントが泣き叫びながら核であろう異物を引きずり出した。しかし、ヨシローも防戦一方で核を攻撃できない。邪悪な意思に負けてトレントは核を飲み込んだ。


 そう何度もチャンスが巡ってくるわけがない。トレントはもう一度、核を引きずり出そうと綱引き状態で苦しんでいた。次を狙ってヨシローも覚悟を決めた。足がもげようと致命傷を受けようともトレントを苦しみから解放するために全身全霊を掛けて攻撃することに決めた。

攻撃を躱しながらタイミングをうかがい狙いをさだめた。


 バシ・リサは扇子の動きを止めた。側近の参謀が全軍に戦闘体制を維持したまま待機を指示した。

「何用かの。ここは戦場。いかに勇者といえど子供がいる場所ではないがの」

バシ・リサの前に降り立ったエリーナは疲労を極めながらも前に歩み出た。


「バシ・リサ殿。これ以上の進軍は辞めていただきたい。サンテールは今危機に直面しております」

「まるで子供じゃないか。我は敵国じゃぞ。攻めてくれと言うてるもんじゃないか」

バシ・リサの近衛兵が鎧の軋む音を立て前に出た。

「生け捕れ」

参謀が指揮した。

近衛兵が襲いかかるも、テスカトルが威嚇した。


「神獣、テスカトルじゃな」

フラン帝国軍がざわつき始めた。

「よい。全軍待機。剣は抜くな、納めよ」

参謀がバシ・リサに目配せする。

「かまわん。こっちが全滅するぞ」


「何が起きてる」

「…暴走が。国王様は」

エリーナはなんと説明すれば良いか迷った。

「よい。理解した。じゃが、それとこれとは別じゃ」


「サンテールブルク宮殿は今ヨシローが任にあたってます。彼が対峙しているのはトレント。この国では見かけない魔物です。しかも異様な姿をしてました」

「異様?知らんな。確かにトレントの苗木が外に流出したことは確かじゃ。じゃが、あれは森を守る魔物じゃ。ヒトを襲うことはそうそうない。そして、火に弱い。簡単に対処できる魔物じゃ」


「異様化したのは、多分植物学に精通して薬学を修めた者の仕業。トレントは暴走しております」

「なるほどな。サンテールに攻めてもトレントの処理まで担うはめになるのじゃな。こちらとしても兵を無駄に削るのは本意ではない」

エリーナは頷いた。


「しかし、子供が責を負うのは関心せんな。大の大人に頼るべきじゃな」

「父上は。フラン帝国にて停戦の交渉に努めている。情けないことにわたしには他に頼れる大人がいない」

「ほう、そうか。そうじゃったの。確かアレクセーヴ公。なかなか頭がキレる。あれの娘だったの」


バシ・リサは扇子で仰ぎながら

「しかしこれは、兵を撤退する理由にはならんがの。

王のいなくなった国はいとも容易く手にしやすい。次なる王はあれか。ちと物足りない器だがの。あれを王とするならどのみち」

その言葉が言い終わらないうちにエリーナは首を振った。


バシ・リサは扇子を広げ口元を隠した。

「滅びゆく定めに逆らうか」

「国を思うがわたしの思い。国民あっての王の器。かつてわたしは王家に嫁ぐ身として生を受けました。国母としての誇りはまだ失っておりません」

「そなたが王になり替わり国を導くのか?ならば我とやり合うかの。今ならサシでもかまわんがの」


エリーナは剣を地に突き立てて

「わたしの首を差し上げます」


バシ・リサは笑った。

「国は救いたい。国母になりたい。戦争は止めたい。大忙しじゃの。首一個差し出して全部やり遂げるつもりか。肝が据わった女は好きじゃ」

扇子をバチンと閉じ高らかに笑った。


「これよりサンテール周辺諸国にトレントの情報を与えよ。国境を一時封鎖し災害に備えよ。我が帝国軍は進軍。暴走したトレントを王国領土内で駆逐。斥候を出して情報を収集じゃ。サンテール軍にも使いを出せ」

バシ・リサは参謀に伝えると

「伝令!」

参謀が叫び側近の者たちが迅速に散らばった。


「もう一人の勇者が苦戦しとるのかの。そなたが必要なんじゃないか」

扇子で早よ行けとばかりに振った。

エリーナはまたテスカトルに首を噛まれ背中に乗せられた。そして宮殿に向かって走り去った。


「よくやった。不器用なりに」

テスカトルは「ウにゃウにゃ」としか聞こえていないエリーナを褒めた。


「いいんですか?」

「参謀。不満かの。この国は我が治めるよりあれに任せた方がよい。十分に旨みがある。そう思ったがの」

「子供が責を負うもんじゃない。と言ってたような、ないような」

「なんじゃ。参謀は道化師も演じるのか。あれは子供なれど立派な王の器じゃ」



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