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戦場を駆ける

「コロ、シテ、、モ、ヤシテ、オ、ネガ、イ」

ヨシローは駆け回りながら、トレントの波状攻撃を凌いでいた。足場が悪いがテスカトルとの遊戯で鍛えたから立ち回ることができた。

「燃やす?系統は水だ。他の方法は」

相性が悪かった。トレントに対して謝罪までしようとしたが、攻撃が止まない。


「クル、シ、、イ、コ、ロシテ」

ヨシローはトレントの攻撃を全て打ち払い、絶対に刃が強硬な身に食い込まないようにした。剣を持ってかれたら形勢は一気に不利に陥る。


「ダメ、、イヤ、ダカ、ラダガ、、イ、ウコト、キ、カナイ」

「ハヤ、クコ、、ロ、シテ」

「シ、、ネナ、イ」

怨嗟の声がこだまし、ヨシローの判断を鈍くする。


「強くなってるじゃないか。エリーナ」

剣撃を撃ち合いながらも余裕でシュヴァは挑発する。

「遊んでるの?」

メッサリナがシュヴァが本気でないのを見て言った。


「殺る気がないのね。じゃあ、せめて死なない程度に内臓を潰してあげてさしあげて。エリーナ様は国民の母を目指すつもりみたいですので、子宮はいらないみたいですの」

シュヴァの猛攻に耐えるエリーナの意識が怒りとともにメッサリナに向けられた。

「狂ってんなぁ。同情するぜ」


シュヴァが同情の証に仕切り直してくれた。間合いをとってエリーナの出方を待った。

「すげえ身のこなしだな。誰が師事した?俺は西部で残飯ばっか食わされてよ。剣筋が鈍っちまった」


とんでもない。余計な雑念と傲慢さが抜けて剣技のひとつひとつが冴え渡り神経を擦り減らしながら捌いてるというのに。

もったいない男だ。


 エリーナは一つ呼吸をして全力で突進した。返り討ちにしようとシュヴァが一撃を繰り出す。捌いて反撃の一撃を撃つ。二撃、三撃と斬撃の応酬を繰り返す。

「おぉ。凄えな」

シュヴァが圧倒された。エリーナは無呼吸状態で神速の止まない剣撃を繰り出す。


右腕が宙を舞ってボトッと落ちた。

シュヴァが無くなった右腕を押さえながら、エリーナの左肩口に刺したロングソードを蹴り上げた。

エリーナは勢いで後方に倒れ悶絶した。


 シュヴァは出血を押さえながら膝から崩れ落ちるもエリーナを睨んでいた。が、その目には戦意を失っていた。エリーナはロングソードを引き抜き止血を自分で始めた。運良くチェストプレートが戦闘不能を回避した。


「逃げなかったんだな」

エリーナはメッサリナを視界に収めた。

「仕方ない。ですわ。貴女しつこそうですもの」

メッサリナは懐から瓶を取り出した。


「なんだそれは」

エリーナの予想が的中した。

「切り札よ」

栓を抜いてシュヴァに向かって投げた。瓶の中から種籾がこぼれた。こぼれた種籾から根が伸び、シュヴァの滴り落ちる血溜まりに触れ反応した。


「メッサリナ。お前ってやつは」

「ふん。足掻くわよ」

エリーナは痛みを堪えてシュヴァに突進した。


 シュヴァの右腕がみるみるうちに植物に侵食されてしまった。

「何?どうなんの」

意識を朦朧とするシュヴァは現状が把握できず、植物と化す自分の右半身を見つめ呟いた。


 一瞬でシュヴァの上半身が削り取られた。

エリーナは立ち止まって、シュヴァの残った身体の一部と自分との間に立ちはだかる影を見上げた。


神獣テスカトルが咆哮をあげた。空気がビリビリと伝わり聞くもの全てをすくませた。

同時に、メッサリナを攻撃した。


メッサリナは吹っ飛ばされ身体を強打し倒れた。

テスカトルはエリーナの方を振り向いた。


 エリーナは目の前のシュヴァの植物化が止まっていることを確認した。

「魔物化の暴走が止まってる」

とりあえず一安心して、メッサリナの元へ向かった。


「こいつ、やばいな。命を冒涜しやがる」

テスカトルはヒトの命や魔物の命を弄ぶことに怒っていた。が、「ウにゃウにゃ」としかエリーナには聞き取れない。


背中を強打して呼吸し辛そうだ。アバラも何ヶ所か折れているのを確認した。メッサリナは当分動けないだろう。気も失っている。


 エリーナは片膝をつき、テスカトルにお礼を申し上げた。

「人間のいざこざに、手を貸していただきありがとうございます。まだ宮殿でヨシローが頑張っているので、わたしは向かいます」

エリーナはテスカトルに再度お辞儀をし立ち去ろうとした。


振り向いたエリーナの首根っこを噛みヒョイと背中に乗せた。

「お前には、別の件で命をかけてもらう」

テスカトルがそう言うと稲妻のように走り出した。

「テスカトル様。ウにゃウにゃってなんでしょうか?わたしが急ぎたいのは宮殿のほうです。そっちではありません」

振り落とされないようにしがみつくのが精一杯だった。止められなかった。


 国境付近。

バシ・リサが先陣を切り行軍していた。

サンテール国内で異常事態が発生している。国王の崩御か。違うな内乱か。サンテール側の軍に統率の乱れが生じている。

それなのに、鉄壁の守りは貫いておる。流石だな。


情報は少ないが、チャンスはあろう。戦況は徐々にこちらへ傾きつつある。

「進軍を止めるな。敵国の情報は逐一報告しろ」

粉塵が舞う中、じわじわとサンテール王国はバシ・リサの手に堕ちていくのだった。


 雷鳴を置き去りにし、稲妻の如く現れたのは神獣テスカトルだった。

バシ・リサは扇子をヒラヒラさせ、目前の粉塵を蹴散らした。

テスカトルの咆哮がフラン帝国軍の行軍を震え上がらせた。


 







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