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課外学習

 サンテール・ル・ロゼ。

サンテール王国および近隣諸国の王族貴族の子息令嬢が集まる学舎。高い水準の教育が行われているため、こぞって子供たちを入学させようとする。

なにより、ここで培った人脈や上位爵位の学友と繋がりを持つことによる恩恵が目当てだ。


茶色のテイルコートを纏ったヨシローはなるべく視線が合わないように廊下の端で立っていた。前を黒のテイルコートの生徒たちがヨシローに見向きもせず通り過ぎていった。


黒は一般の爵位を持つ生徒。茶色は従者と位置付けられている。

そして生徒の中でもテイルコートの下に着用しているベストの色で成績優秀者や役職者とわかるようになっている。一般は黒である。


「待たせたな。昼は食べたか?」

エリーナが講堂から戻ってきた。青のベストだ。どれほどの上位階級の色かはわからない。

「エリーナ様、そのような言葉はもったいなくございます」

ヨシローが背筋を伸ばして、エリーナから教材を受け取った。

「ふふ、似合ってないな。作法の教育は免除してるのだ。構わないから好きなように振る舞え」


歩きながら会話をした。

「どうだ。しばらく学校生活をしてみて気づいたことはあるか」

エリーナはまっすぐ堂々と歩く。その後をヨシローが追う。

エリーナを見る周りの生徒が全員道を譲る。凛とした姿に見惚れる者、畏れを抱く者。立ち塞がる者はいなかった。


「フラン帝国の留学生はいません。あと購買のパンはチーズが練り込んであって美味です」

「そうだ。昨年はフランの生徒はいた。つまり、情勢に変化があるやもしれないわけだ」

サンテール国内にフラン人はいない。しかし、フラン製の品は増えている。


「ジョン王太子殿下はいてもいなくても評判は悪いですね」

「そう言うな。あれでも未来の私の夫になるのだ」

「ジョン様にまとわりついているメッサリナ様がいろんなところで関係を拗らせて回ってますね」

「男爵令嬢だな。王太子殿下の好みもやれやれだな」

「明日、ジョン様たちが課外学習から帰って来られます。と、同時に明日からエリーナ様の班が課外学習に向かうのですね」

「ああ、準備しておいてくれ」

「ちなみに班のメンバーは?挨拶しないと」

「私と君だ。言ったろ、私はぼっちだと」

学校生活で気づいたこと。エリーナは孤立していた。いや、孤立させられていた。

「それと、購買のパンの情報はいらん。美味いと思ったら私の分も購入しておけ」


 サンテール東の砦跡。新しい街道ができたため捨てられた大昔の砦跡の調査が、エリーナ班の課題だ。

「名門校の課外学習は難易度が高いですね」

エリーナの装備の着用をアシストしながら目の前にそびえ立つ廃砦の門を見上げた。


「バカ言うな。仕組まれたんだ。一個師団レベルの課題だよ。学生の手に負えるもんじゃない」

「メッサリナあたりですか?」

「なんの恨みを買ったんだろうな」


「ここは、本来由緒ある砦でな。サンテールの開祖様たちが入植する際の最初の拠点として築いたそうだ」

「伝説のテスカトルという神獣とともに開拓されたそうですね」

「そうだ。予習してきてるとはやるじゃないか」


「課題内容は、遺跡の中心部での調査だ。遺物を発掘しろとかじゃあない。当時の生活や慣習がわかればいい」

「遺跡を見て回ったくらいでわかるものでしょうか?」

「そのために図書館がある」



エリーナの支度ができた。本来であればピクニック気分もかねて豪勢なランチも用意するため大荷物で大所帯で行動するわけだが、完全に冒険者の装備と荷物だった。


「ここからは、様付けは要らん。連携に支障が出る。自分の命を盾にするな」

ヨシローは頷いた。

「ヨシローはエモノは何を選んだ?」


両手に剣を持って見えるように差し出した。

「ハンガーか。ヨシローらしいな」

エリーナのアーミングソードよりも短く、片刃の狩猟用の剣だ。握った感覚で小回りが利いて強靭な刀身が気に入った。


 課外学習は着々と進行した。石垣に刻まれた落書きから当時の狩猟生活や開墾のスケジュール管理、暮らしの中でのイタズラ描きをエリーナが解りやすく説明してくれた。生活に使っていた痕跡はないが、壁画を見ながらでも当時の開拓者たちの大変な思いを汲みとることができた。本当に説明が上手い。


 途中でウサギの魔獣と遭遇した。角が生えているのでそうだとわかったが、それ以外の見た目はウサギだった。なんなく討ち取ることができた。


「ヨシロー」

エリーナがハンドシグナルで岩影に身を潜めた。ヨシローも咄嗟に身を屈め状況を確認した。


ゴブリンの群れだ。以前、南の洞窟で沸いたゴブリンでなく、野良ゴブリンだそうだ。知恵を持ち、起用に道具を真似て使用するそうだ。


「討ちますか?」

「当然だ」

ゴブリンの繁殖能力は非常に高いため、数が増えると厄介事の種になる。


 全部で十三体。エリーナが最後の一体を討ち取った後、剣を預かり剣身の血を拭き取りエリーナに返した。


「お見事です」

「見事なのはヨシローだよ。魔力探知が精密すぎる」

「あっという間の制圧でしたね」


ヨシローの魔法については秘密だそうだが、あの精密さは宮廷魔術師のレベルとは訳が違う。なにより援護の水魔法の射撃が無詠唱なのは聞いたことがない。

エリーナはあらためて討伐の後処理をするヨシローの

姿を見た。


 






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