表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/113

廃石島 3

「うるさいわい」

三人はもう驚かなかった。


「わっはっは。こいつはヴィヒテル。細工師じゃ」

「紹介なんぞ要らんわい。儂の、わしの、わし…」

立派な髭を蓄えているが頭が禿げている男は、テーブルに座ると髭を丁寧に手櫛で整え大人しくなった。

「歓迎するぞい」


「あと、スクナというのがいるんじゃがな。まあいいだろう。乾杯といこうかの」

ツヴェルクもテーブルについて酒瓶の栓を開け乾杯した。


「旦那さま、あの酒は?」

「以前、クナトに居たときに買った残りだよ」

「あたしも飲みたい!ドラゴンが酒好きだって知らないの?」

ヨシローは首を振った。ドラゴンもドワーフも酒に目がないなんて知らなかった。


「子犬の嬢ちゃん。酒を注いでくれんかの?」

「あっ、ハイ!」

リタは忙しく注いでまわった。ドワーフたちはにんまりして楽しそうだった。


「にいちゃんたち。あとでスクナを紹介してやる。あいつは鍛治師だから顔を覚えて貰っとけ。腕は確かだ。損はしねえ」

「ありがとうございます」

ヨシローとリタが感謝した。


「ところで、もう一つお願いがありまして。漆黒の廃魂を探してます。知りませんか?」

三人のドワーフは真剣な顔つきになって酒を一気に飲み干した。


「にいちゃん。そういう物騒なもんは持つもんではないと思うがの」

「およそヒトならざるものがこの世に遺したもんだろうが、人間の手に余るもんじゃ」

「何処で聞きつけたかは知らんが、手を引きなされ」

ドワーフ三人が口を揃えて冷めた口調で言った。


「漆黒の廃魂とは何ですか?」

リタが酒を注ぎ終わって聞いた。

「あれは神殺しの魂の欠片と言えばいいのかの」

「神を殺したがために、天国にも地獄にも行けずにその辺の石ころのように朽ちた魂の欠片じゃ」

「手にしたところで、価値はない。金にもならん。役得なしじゃ」

リタはヨシローを見た。


 ヨシローはあらためて、フィムとケルンの話しをした。ドワーフたちは腕を組み目を閉じて深く考えた。

「いったん、保留にさせてくれ。客人用の部屋がある。好きに使ってくれ」


「竜殺しとか神殺しとか、ちょっとワクワクするな」

ノラは楽しそうだ。

「ノラ。何故ヨシロー様と同じ部屋を使うのですか」

リタがヨシローと同じ部屋にノラが入ろうとしたところを引き剥がした。


 翌日、ツヴェルクに連れられてスクナに会いに行った。

「スクナ。入るぞ」

扉を開けると熱気がヨシローたちを襲うように通り抜けた。

スクナは手を止め立ち上がった。

「鉄は掘れたかい。ツヴェルク!」

ドワーフたちと同じく小柄で鍛治師らしく筋骨隆々で髭を生やした女性が槌を持っていた。


「客人かい?まいったな、たいした武器は作れてないんだ。鉄が採れないんだよ」

スクナはツヴェルクの顔を見た。鉱夫のツヴェルクは首を横に振った。


「その辺にあるやつでいいなら売ってやるよ」

スクナの言葉にヨシローは樽にある剣を試しに何本か手にとってみた。

「おっ、それにいちゃんに馴染むんじゃない?」

ヨシローが手に取ったのはグラディウス。刀身は肉厚の幅広の両刃で、先端は鋭角に尖っている。

「そいつはかなり昔に作ったやつでさ。二種類の鉱石を混ぜてさ丈夫で切れ味もいいぜ。貸してみな。グリップの調整をしてやる」

ヨシローもこれがいいと内心思った。


「嬢ちゃんはどれがいいんだい?」

「わたしは刺突技の特化した武器がいいんですが」

スクナは木剣を渡した。

「振ってみな」

リタは素振りを何度かしてみせた。


「レイピア、いやエストックだな」

スクナはリタの身長や手の大きさ、握力、筋肉のつき方を触診で観た。

「嬢ちゃんには長くて重く感じるかもだが、鎧通しの剣だ。貫通力がずば抜けている。期待してろ」

「それはどの剣ですか?」


リタが樽の中を漁っていると

「エストックはうちには無いよ」

スクナが言った。

「嬢ちゃんのは打ってやるよ」

スクナはツヴェルクを見た。ツヴェルクは無言のまま三人を連れてスクナの鍛治工房から出て行った。


「掘れー!掘って掘って掘りまくれー!」

ツヴェルクの号令とともにヨシローたちはツルハシを精一杯振った。

「ツヴェルクさん、ここ掘って鉄でるんですか?」

「俺の勘を信じろ!」

「最近鉄が採れないんじゃないのですか?」

「四十年じゃったかのう、鉄は見とらんわ」


ノラの手が止まった。

「アホらし。廃石島は名の通り廃石しかでないじゃん」

ツルハシを捨てて鍛治工房に戻った。


「あたしはこっちに感じる魔力に興味あんだよねぇ」

工房内をくまなく見渡した。

スクナが立ち上がった。

「あんたも武器が欲しいのかい?」

「いや、あたしは強いやつと喧嘩したいってだけで」


工房の炉の中が怪しいと感じた。

「おいおい、珍しいもの飼ってんな」

炉の中から火まみれのトカゲが顔を出してきた。

「なんだ、ずいぶんな殺気じゃないか」


火の精霊サラマンダー。炉の中の高温を維持しスレナの鍛治を手伝っている。もちろん火を消すこともできる。

互いに視線をバチバチと衝突させていた。

「トカゲのクセになんつー魔力だ」

「ドラゴンは相変わらずマナーがなってないな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ