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廃石島 1

 ノラは上機嫌だ。

「楽しそうですね」

鼻唄が絶好調のノラにリタが言った。

「まあね。誰かと一緒に行動するなんて素敵じゃないか?ドラゴンの中ではあたしが初めてじゃないか?」

ノラは廃石島までの道のりが嬉しそうだ。


セシリアに見送られてヨシローたちは廃石島に向かうことにした。

「廃石島には何しに行くんだい?」

ノラは上機嫌ついでに質問した。


「まず、リタの剣を新調しなければならないんだよね」

ヨシローの言葉にリタは頷いて折れた剣を見せた。

「なるほど、ドワーフの奴ら採掘を生業にしてるけど鍛治も得意だからな。でもあそこは廃鉱だぜ」

ノラはリタの剣を摘んで、これは鋼自体が酷使しすぎてダメだと悟った。

「ドワーフがいるってことは、細々とだけど鉱山は稼働してるんじゃないかと思うんだけどね。閉山してても、こちらで鉱物を用意してでも打ってもらいたいんだよ」

「ふーん」


剣を納めたリタが

「これからの旅では、ヨシロー様の剣として使命を全うしなければならないので、少しでも良い鍛治師にお願いできたらいいのですが。どうも全力が今の剣には乗せきれてない感じがするのです」

「剣を打ってもらえたら、あたしと一度手合わせしてみないか?」

ノラは、というかドラゴンは好戦的なのだろうか。


「ぜひお願いします。わたしは自分の弱さを乗り越えたいと思っていました。わたしの敵はわたし。ノラに手合わせしてもらえたならきっと成長することでしょう」

圧倒的なドラゴンと戦えば心も強くなることだろう。

リタは心も強さも見ないうちに成長してたのだなとヨシローは感心していた。


「で、旦那さまは自身の目的はなんだい?」

「僕も剣は新調したいかな」

ヨシローは隠すことはないかとためらいを捨てた。


「実は、まず見せたほうがいいかな」

ヨシローはカバンからケルンの欠片を取り出した。

二人に見せたのは女性のボロボロになった左手。


ノラが突然後方に飛び魔力を解放しようとした。

「なんなんだ。禍々しさがヤバいぞ!」

今にも竜化しそうな息づかいのノラをなだめた。リタは少し怯えていた。

「ノラ。落ち着いて。ただの天使の遺体の一部だ」

ヨシローはカバンにケルンの欠片をしまった。リタを優しく撫でて落ち着かせた。


「なんてものをカバンに忍ばせてんだ。気づかなかったぞ」

ノラが用心しながら戻ってきた。

「ある堕天使に頼まれてね。さっきの遺体を復活させるために廃石島に行かなければならないんだ」

色々かいつまんだ説明になったが、これでいいと思った。


「廃石島に遺体を生き返らす何かがあるんだな」

ノラの言葉にヨシローは頷いた。

「ヨシロー様はそれを持っていて影響はないのですか?」

「堕天使に魂の楔を打ち込まれているんだ。だから平気だし、これまで二つの魔具も導かれ手に入れたんだ。あともう少しなんだ」

ヨシローは心臓を指差して言った。黙っていて悪かったと思い謝罪した。


「謝んなくていいよ。凄い人生ハードモードしてんだな。それでこそあたしの旦那さまだ」

基本長い寿命のドラゴンは天敵もいないため退屈が常であった。


「あたしはね。退屈しのぎに家出した。そしたらさ、竜殺しって名乗る人間があのでかい街にいるらしいんだ。で、聖女伝説もついでに聞いたからって本物と出会っちゃったし。ここ来る前にドワーフに門前払いくらったけど、旦那さまと出会っちゃったしで、今楽しいんだ」


「エメラルドグレイスに竜殺しがいる?物騒ですね」

リタは平静を装おうが旦那さまと出会ったと言うとこには文句を言いたかった。我慢だ。


「嘘ん臭いんだよね。あの街にそんな気配はないんだけどなぁ。まあホントにいたなら喧嘩売ってやるんだけどね」

ノラは二人のほうが強いと思っていた。


「ヨシロー様、陸の孤島と言いましたが何処にあるのでしょうか?」

リタの質問にヨシローが答えるより実際に立ち寄ったノラを見た。

「ん?ああ、廃山だからね。道が無いんだよ。閉ざされた場所にあったなぁ。メシとかどうしてんだろ?ってとこにある」

「道が無いのですか、辿り着けますでしょうか?」

「ノラがいて良かったよ」

二人はノラを頼りに見た。


「ん?なんだよ、ヤマメを食ったくらいでダメージは回復してないんだぞ」


「ウヒョー。人を乗せるなんて初めてだよ」

竜化したノラの背中に二人が乗り大きな鱗に掴まった。上空に上がる浮遊感と風を切る速さに息が詰まる思いでドキドキした。

「バレルロールしていいかい?」

「なんですか、それ?遊ばないでください」

リタが叱責した。

「地味に飛んで」

ヨシローも思った以上の高所の恐怖感と風圧に耐えながらノラにお願いした。


 山の中腹に螺旋状にくり抜いた穴が見えた。周りを緑で覆い尽くされた山に囲まれていたため徒歩で辿り着くには至難の業であっただろう。


螺旋の穴に降り立つとノラは人型に戻った。

「ねえ、あたしドラゴンだよ。扱い酷くない?」

二人は揃って首を振った。


「いくつか横穴がありますね」

「小さいのは空気穴かな?酸欠に気をつけて行かなきゃならないね」

三人は人が通れる一番大きな穴を選んで入ることにした。


「ノラはこの穴で間違いないと思う?」

「たまたま外でドワーフに会ったんだ。どの穴から出て来たのかわかんないや」


鉱物の塊を運ぶコロとか滑車が見当たればいいのだが、それらしきものはなかった。

「よし、行こう。粉塵も気をつけてなくちゃだね」

三人は防塵のために鼻と口を布で覆い洞窟へ足を踏み入れた。






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