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エピローグ









あの夜はジークリンドとセフィリアの大声と泣き声の所為で寝つきが悪かったよ……

ま。今となっては笑い話だからいいけれども。


「そうじゃ。後はそのメモ書きに従って修練を積めば、その内モノに出来るじゃろうて」

「ありがとう」


今は家の前で変身…やっぱりカッコ悪いね。

変化のオーラを習得する為の修練の真っ最中。

それを横目に僕は切り株に腰をかけて優雅に読書を楽しんでいる。


「終わったようだね。お疲れ様、二人とも」

「ジンよりも飲み込みが早いから楽なもんじゃて」

「ありがとう!頑張ってまたジンの犬になるから!待っててね!」


ラヴは優秀だ。

それは話していて気付いていたけれど、どうも僕よりも断然に賢い。

主人としては情けないけれど、どうしようも出来ないところでは悩まない。


ヒューリーが揶揄って来るのはムカつくけどさ。これも友人同士の付き合いってやつなのだろうと我慢我慢。


そしてラヴ。

みんなといる時は自然なんだけど、気を抜くとすぐにこの口調になってしまう。

その相手が僕だけなのが救いか。


「今日で人とのお別れだよ。大丈夫?」

「うん。大丈夫」


人との別れ。

そう。レイチェルの我慢の限界は目の前。


「それよりも…忘れずに来るかしら?」

「安心して。彼女はグルメだから、絶対に忘れていないよ」


グルメ。そう、グルメなんだ。

ジークリンドが起きてからすぐにでもと、ラヴは言っていたのに。

それなのに、五日も期間を置いたのはレイチェルの方から。


なんでも…『我慢した後の方が絶対美味しい…ちょっと飢えてくるから、五日後に』

そう言って消えてしまった。









「ただいま」


その第一声を聞き、僕は心底驚いていた。


「凄い…あのレイチェルが…自我を保っているよ…」

「我を忘れるくらいの我慢なんて、中々出来ない」


いや、以前していたよね?

ま、いいか。


リビングでみんなと一緒に寛いでいると、本日の主役がやって来た。

いつもの様にフードを目深に被っているけれど、心なしか楽しそうな雰囲気を醸し出していた。


「ジークとセフィ…リアも来たんだ」

「当たり前でしょ?」


セフィリアとジークリンドは下の街で冒険者活動をしながら暮らしている。

セフィリアとジークリンドの幸せそうな顔を見る度、こうなって良かったと、環境や境遇、それから友人達への感謝の気持ちで一杯になる。


セフィリアも名前を隠すことはやめたし、これで万事上手くいった。

表面上はね。

内心では皆が皆、思うところは多々あるのだ。

それが集団の中で生きていくということ。

事実問題は尽きない。


ま、そんな難しい話は置いておくとして。


「レイチェル。ここで良いのかい?」

「これだけのご馳走。綺麗な皿に盛り付けていても良かった」


うん…意味がわからないよ。

なんでラヴを皿に乗せるんだよ。


「レイチェル。私はいつでも構わないわ。その代わり、しっかり吸血種にしなさい」

「それは私が決めることじゃない。でも、感覚が言っている。ラヴは間違いなくこちら側の世界に来るって」


そういうと、入り口に立っていたレイチェルはラヴの側へ移動し、椅子に座るラヴの後ろに立ち、流れる金の髪を掻き分けて、首元へ自身の口を近づけていった。











「体調はどうだい?」


血を吸われた直後、二人は倒れた。

ヒューリー曰くオーラを最後まで吸い尽くされたらしい。

それが回復したからラヴは目覚めた。


「…ジン。おはよう」


心は犬のままだけど、肉体は人間。

本来であれば、起きてそばに僕がいたらすぐにでも飛び掛かりたいのだと思う。

前世がそうだったからね。


でも今は人間。

いくら若い身体とはいえ、寝起きにフルで身体が覚醒することは難しい。


だから代わりに手を繋いでいる。

人間はこうすると安心するから。


「身体に異変は感じないわ。お腹も空いて…普通くらいかしら?」

「そう。ヒューリー曰く肉体が変質するだけで魂の変質はないって話だったけど、その肉体にも異変がないなら大丈夫そうだね」


要観察。

けれど、深く心配する必要はなさそうだ。安心したよ。


「レイチェル…は?」

「それがね…」


そう。何故か血を吸った方のレイチェルまで倒れてしまった。

想定外のことで、倒れるレイチェルを支えることは間に合わず、そのまま床の上で気絶してしまった。


「ヒューリー曰く、吸いすぎが原因らしいよ。余程ラヴの血が美味しかったんだね」


正確にはオーラが。

レイチェル曰く、ジークリンドの現在は普通らしい。

逆に僕は変わらず美味しそうなのだとか。

でも、もう僕には血が流れていないからね。


不必要な機構はこの身体には備えられていない。

この身体に備えられている生きていく上で必要のないものなんて、それこそ見た目くらいのものだ。

後は普通の生物とは異なる身体。


でも、体温はある。

血液代わりに定期的にオーラを巡らせているから、その副次効果により体温が発生しているとのこと。


その定期的なオーラの循環は任意。

僕が定期的に回さなければ末端から塵になっていくみたいだね。

それも別に日に何度も必要な処置でもない。

少し身体に異変を感じて、それで思い出してからオーラを巡らせるくらいでも問題ないのだとか。


つくづく便利な身体になったものだ。


勿論、不便なところもある。


「これで私…ずっと貴方と生きていける…」

「そうだね」


お互い肉体が変質しなくなったね。

老化もなければ成長もしない。

技術でカバーすればいいから、それも不便だと思わないけれど。


僕達はこれから悠久の時を共に歩んでいく。

恋人でも、兄弟でも、親子でもないけれど。

それでもきっと僕達は家族なんだ。

血は繋がっていなくても、繋げた血を残せなくても、絆が二人を永遠に離さないから。


「レイチェルを揶揄いに行こうか?」

「ふふっ。そうね。きっと、真顔なのに顔を赤くして怒るわよ?」


レイチェルは平静を装うからね。身体は小さいのに変なプライドはあるんだから、面白い子だよ。


「行こう。明日もきっと良い日になる」

「ええ。例え世界が滅んだとしても、貴方となら最高の一日になるわ」


僕達はリードの代わりに手を繋ぎ、仲良く部屋を後にするのであった。















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        人物紹介

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ジン(東条 仁)『両耳に小さな鈴のついたイヤリング、180cm、黒髪、17歳』

ラヴ(アメリア・ウイ・テリエ・ロカディリアス)『165cm、金髪、17歳』


レイチェル・ハントレー・ザルビスパ(吸血種、オーラの師匠、カーバインの元パーティメンバー、銀髪、150cm、270歳差)

セフィリア・ミスティア・アルバート(元第三王女、剣術武術好き、赤髪、168cm、同い年)

ジークリンド・アイル・オーティア(銀髪、黒い剣、180cm、同い年)


以下、ジンの旅での登場人物


アイン(剣の里前、黒に近い茶髪、9歳差)

グレナード・グレード(剣王、紫の長髪、180cm、34歳差)

ギルテン(剣聖候補、青髪、180cm、2歳差)

ベル(剣聖候補、金髪ショート、170cm、1歳差)

ヒューリー(ハイエルフ、上台地、白髪、165cm、1420歳差)

エスエル(大精霊、上台地、姿ない、二千歳以上)

初めに想定していた半分くらいまで漸く辿り着けました。

この話を書いた辺りから投稿を始めています。


後半分…

この小説の反応次第ではもう少し増えるかもしれません。


まだまだ続きます。

これからもよろしくお願いします。多謝。

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