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せ、精神的にR15?
キリのいいところでちょっと短め。
穏やかな時間が流れる。
『マジで唯ちゃんって想定外の行動をとるよね』などとぶつぶつ文句を言っていた一弥も起き上がろうとはせず、撫でられている。
大人しく・・・・・とはいかないが。
私の膝にのの字を書いたり脚を撫でたりと悪戯をするので、抗議したら『それくらいで怒るなんて、俺を膝枕する覚悟が足りないんじゃない?』と怒られた。
膝枕に覚悟がいるなんて聞いたことがない。
「それで今回の件、どう収束させる気だったの?」
「別に俺このままでも何も困らないし?」
「私は困るんだけど。」
「唯ちゃんが執事クビになったら俺が世話してあげる。
えーきゅーしゅーしょくって奴?
本当に仕事したいならうちの事務所で仕事すればいいよ。
うちの事務所、人材不足でロクなのいないし。」
「遠慮します。
華穂様のお側を離れるなんて考えてません。
もし万が一クビになった時はまた海外に行く。
国内でこれ以上騒がれたくないし。
永久就職やこの事務所でマスコミの餌食になるのなんて真っ平ごめん。」
永久就職とか飽きっぽいくせに何を言っているのか。
そんなことしたらあっさり捨てられなくなるのに。
あぁ、それとも相手に首輪つけたまま自分は自由に遊びまわる気なのか。
最近は“永久”でもなくなってるし、金だけ払って飽きたらポイ捨てするのか。
今の一弥はただ、簡単に靡かない私が面白いだけだ。
子供が初めて見たおもちゃを欲しがるのと一緒だ。
手に入らなければ入らないほど欲しくなる。
・・・・・・・・絶対捨てられないとゲームで確約されている華穂様以外の相手を探すのはかなり大変そうだ。
なぜ華穂様に恋してくれないのか。
うちのお嬢さまのどこが不満なのかと問い詰めたい。
『まあ、そんなに簡単に落ちてこないよね。』とまたひとりで何かぶつぶつ言っている一弥は、名残惜しそうに太ももをひと撫でした後起き上がった。
「唯ちゃんの膝枕サービスに免じて収束させたげるよ。」
自分が蒔いた種なのにずいぶん偉そうだ。
「どうやって?」
「まあ見てなよ。」
自信満々にいう一弥はかなり悪い顔をしている。
すると、急に一弥が至近距離まで近付いて、そのまま包み込むように抱きしめられた。
私の肩に頭を乗せて、耳に直接届くように囁きかける。
「今回俺から離れようとしたことはこれで許してあげる。ただし・・・・2度目は無いから肝に銘じてね。」
ぶちっ
一度かき消された怒りの火が再び燃え上り、堪忍袋の緒を切った音がした。
一弥の後ろ襟を引っ張って無理矢理引き剥がすと襟首を掴みなおして詰め寄る。
「それはこっちのセリフ。今回は友人として許してあげる。
ただし、今度華穂様や裕一郎様に迷惑がかかるような真似をしたら、絶対に許さない。
どんな手を使ってもあんたを潰す。」
突き飛ばすように手を離す。
離れて見る一弥の顔には妖しい笑みが浮かび、目がギラギラと光っていた。
「あぁ・・・・やっぱり唯ちゃんはいいね・・・・。ゾクゾクする。これだから眼を離せない・・・・・。」
全身を縛り付けるような視線に動けなくなる。
「あわよくば華穂ちゃんと引き離して手元に置いておこうと思ってたけど、やっぱそれじゃダメだね・・・・・・。
華穂ちゃんを守ろうとする時の唯ちゃんが一番綺麗だ・・・・・。
どうしたら綺麗なまま手に入れられるのかな・・・・。本当に一筋縄じゃいかない・・・・・。」
陶然とした表情のまま、先ほど離した距離をゆっくりと詰めてくる。
私は一弥の瞳を見つめたまま動けない。
視線をそらした瞬間、何か恐ろしいことが起きる気がした。
こつん
見つめあったまま、一弥の額が私の額に触れる。
「君は俺のものだ。それを忘れないで。今は綺麗なまま捕まえる方法がないから自由にしておいてあげる。」
そっと触れるだけのキスをしてゆっくりと一弥の顔が離れていく。
「すぐに唯ちゃんが華穂ちゃんのそばにいても問題ないようにしてくるよ。
唯ちゃんが一番綺麗でいられるところに戻してあげる。今は・・・・・ね。」
妖しい笑みのまま部屋を出ていく一弥の背中をピクリとも動かず見ていることしか出来なかった。
ヤンデレをキーワードに追加しておきます・・・・。




