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「狙い?何の話??」
疑問系の言葉とは裏腹に顔は余裕の笑みを浮かべたままだ。
『何を言っているのかわからない』という表情ではない。
これは話す気がないのかはたまたこちらがどう出るのか様子見しているのか・・・・・・。
「私も裕一郎様も、皇様は大変 頭の回転の早い方だと思っています。
そんな皇様が何の狙いもなくあの様な発言をするとは思えません。
私、もしくは高良田財閥に何か恨みでも?」
「まさか!天下の高良田財閥に喧嘩を売ろうなんて思ってないよ。」
「直接手を下さないあたりが大物相手への攻撃としては有効かと思いますが。
まあ、今回はそれを信じるとして、高良田財閥でなければ私ですか。
恨まれる心当たりがありませんが。」
一本背負いに関してはテレビでの発言を見る感じ面白がっていた様なので問題ないはずだ。
後は恨まれる覚えはない。
強いて言えば華穂様に関してだが、特に邪魔はしていないはずだ。
一弥には本気でいくなら止めないとも言ってある。
・・・・・・・・・存在自体が邪魔ということだろうか。
「唯ちゃんを恨む?それこそありえないね。
俺はこんなに唯ちゃんに夢中なのに。」
髪を一房取られて口づけられる。
何をしても絵になる男だ。
こんな男を独り占めする女性はファンの恨みを買うのも仕方ないのかもしれない。
ただの誤解なのでその恨みを受け取る気はまったくないが。
それに残念ながら、甘い戯れ言に心動かされるほど乙女ではない。
「恨まれていないならよかったです。
それではなぜあの様な発言を?」
「別に狙いなんてないんだけど・・・・・・・。
そうだねぇ。強いて言えばお仕置き・・・・・かな。」
「お仕置き?」
全くもってお仕置きされる理由がわからない。
「そ。俺からの連絡を絶とうとしたお・し・お・き。」
口づけた後、一弥の手の中でくるくると弄ばれていた髪がつんつんと引っ張られる。
「俺がこーんなに想ってるのにつれなくされちゃあ、意地悪したくなっちゃうでしょ。」
顔は楽しそうな表情を浮かべているが、その目は昏い。
「唯ちゃんも華穂ちゃんもメッセージはブロックしてるし、隼人にも取り継ぎさせない様に言い含めてたでしょ。こっちから連絡が取れないならそっちから連絡取ってもらうしかないかなぁって。」
「・・・・・・・華穂様から連絡があったはずですが。」
ブチ切れた華穂様が一度連絡したが、それが取られることはなかった。
「んー、唯ちゃんから連絡欲しかったし、どうせだったら電話じゃなくて会いたかったからねぇ。」
つまり、私に会いたかったのであんなことを言った・・・・・・と。
そんなことのために・・・・・・・!!
身の内で怒りがぐつぐつと煮えるのを感じる。
あの放送後、どれだけたくさんの人に迷惑をかけたか。
私の周りだけじゃない。
顔も見たこともない高良田グループの社員だって被害を受けた。
事務所社長をはじめとした一弥の周りだって大変だったはずだ。
それなのに・・・・・・・!!
怒りをこめて薄笑いを浮かべた一弥の顔を睨む。
目が合った瞬間、焚き火に水を大量にかけた様にじゅっと音を立てて怒りが消えていくのを感じた。
後には黒く焼け焦げた苦いものだけが胸の内に残る。
昏い眼。
本来なら私は怒り狂って一弥を糾弾してもいいはずだ。
でも、そんなことをしても一弥の心にその言葉が届くことはない。
一弥にとっては歌以外のすべてがどうでもいいのだ。
周りも、そして自分でさえも。
何を言われても響かない。周りを振り回してもなんとも思わない。
ただそのとき面白いと思った方に転がっていくだけ。
刹那的で享楽的な生き方。
「可哀想な男・・・・」
思わず一弥の頬に触れる。
「俺を無視してた唯ちゃんがそれを言う?
ま、今は唯ちゃんに会えたし、これ以上無視されることもないだろうし、可哀想じゃなくなったよ。」
「何が可哀想だか本人がわかってないあたりが可哀想なの。」
「・・・・・・・なんかそれ俺がアホみたいに聞こえるんだけど。」
若干、一弥の頬が引きつっている。
「まぁ、可哀想だと思ってくれるんなら甘えておこうかな。慰めてくれるんでしょ?」
先ほどの表情とは一転、妖艶な笑みを浮かべる。
フェロモンというものに人間が嗅ぎ分けられる匂いがついたら、きっとこの場は蒸せ返るほど甘いのだろう。
「そうね。可哀想だから、友人として慰めてあげる。」
一弥は何故か華穂様の方には行かずに私に執着している。
それが何故なのかわからないが、華穂様に救われる気がないのなら仕方ない。
だったらその気になるまで待つだけだ。
いつか華穂様に心惹かれる日まで、もしくは華穂様以外に一弥を救ってくれる人が現れるまで、私は友人として傍に居てこれ以上昏い方に堕ちていかないように支えていよう。
いつまでも一弥が大好きな歌を歌い続けられるように。
子供にするように一弥の頭を撫でる。
流に撫でてもらったら嬉しかったし、これで一弥も少しでも浮上してくれればいいなと思い撫で続ける。
「・・・・・・男女の間での慰めってもっと大人な行為じゃないの?」
「そういうの一番嫌いなくせに。」
「・・・・・・・なんで唯ちゃんにはわかっちゃうかなぁ。」
困ったように切なく笑う一弥。
今、その瞳に昏い色はない。
女好きだけど女嫌い。
その場の雰囲気に流されて関係を持ったが最後、一弥はあっさり興味をなくすのだろう。
いたずら心が湧いて、撫でていた手を後頭部に回してぐいっと引っ張る。
すると思い通り見事に一弥は私の方に突っ込んできた。
「うわぁっ!?」
ちょっと自分の体をずらして着地地点を調整する。
ぼすんと音を立てて一弥の頭はうつ伏せに私の太ももに着地した。
「特別に膝枕もつけてあげる。」
自分がされて嬉しかったことは他の人にも。
流からもらったらあたたかい気持ちのお裾分けができますように。
流に甘やかされて唯は羞恥心をどっかに忘れてきたようです。




