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前回と打って変わって倍くらい長いです。

屋敷に戻ったのは一弥と別れてから1時間半後。

テレビでは一弥の緊急記者会見の放送が始まるところだった。


『今日は俺のために集まってもらってありがとうございます。

今回の交際報道について直接俺の口からお願いしたいことがあってこの場を設けました。』


硬い表情のまま一礼する一弥。


『今回の報道で相手の方には大変な迷惑をかけてしまっています。

相手の方は一般人です。俺のことはいくら追いかけ回してもらっても構いませんので、彼女のことはそっとしておいてあげてください。

彼女の職業は特殊です。彼女の住まいは仕える主人の屋敷です。

そこにマスコミの方々が張り込むのは勤め先への迷惑になります。これが続けば彼女は職を失ってしまうかもしれません。」


言葉を重ねるに連れどんどん苦しく辛い、痛みを耐えているかのような表情に変わっていく。


『一部のファンの方にもお願いです。

今回の報道で、不買運動など彼女の主人の会社に迷惑をかけてしまっています。

建物への落書きなど犯罪になるようなことも発生していると聞いています。

大切なファンのみんなが警察に捕まるなんてことになって欲しくありません。

俺、ファンのみんなも大好きだし、その会社の社長もとてもいい方で恩を感じています。

大好きな相手が大切な人を傷つけるなんて、耐えられません。』


目を伏せる一弥からは涙が流れてもおかしくないほど悲壮感が漂っている。

・・・・・・・そのうち俳優デビューとかするんじゃないだろうか。


『今回の件の謝罪として、その会社の広報活動については無償で受けようと思っています。

具体的にはまだ決まっていませんが、俺、そこの商品もともと好きなんです。

手頃な値段なのにしっかりこだわりがあって。

だから、売れなくなって商品自体がなくなってしまったら嫌なんで、精一杯宣伝しようと思ってます。

不買運動をしていたファンの方は是非買ってください。俺の好きなものを好きになってくれたら嬉しいです。』


その姿はとても真摯でいつもの姿とのギャップもあり、訴えかけられる強い思いが伝わってくる。


『これから質疑応答を始めます。

可能な限りこの場でお答えしますので、今後の取材への配慮をお願いします。』


次々と記者の手が挙がる。


『先日の発言から4日経っていますが、なぜこのタイミングで記者会見を?』


『まさかこれほどたくさんの方に迷惑をかけるなんて思っていなくて。

これ以上、被害が広がらないようにとこのタイミングになりました。』


『お相手の方との出会いは?』


『仕事の関係でパーティに出席した時に、ご令嬢の付き添いで来ていた彼女と出会いました。』


『いつ頃からお付き合いをされていらっしゃるんでしょうか?』


『それは・・・・ふたりだけの大切な記念なので秘密にさせてください。』


『お相手の方のどんなところが好きですか?』


その質問にちょっと戸惑ったような表情をすると、ほんのり頬を染める。

記者たちがどよめいた雰囲気がテレビから伝わってくる。


『その質問はなかなか照れますね。

全部ですが・・・・、特に彼女の仕事熱心なところに惹かれます。

だから、彼女にはこのまま平穏に仕事を続けて欲しいんです。』


『お互いなんて呼び合っていますか?』


『向こうは名前で呼んでくれます。俺はちゃん付けで呼んでます。』


『芸能人でいうと誰に似てますか?』


『・・・・・誰にも似ていないです。俺にとって唯一無二なんで。』


『ご結婚は?』


『いつかできればいいですね。』


ここで画面がスタジオに切り替わった。

もともと昼のワイドショー時間だったのだろう。


『えー、会見の途中ですが、番組終了のお時間となりましたのでこちらで失礼いたします。

この会見の続きは夕方のニュース、もしくは明日のこの番組でご覧ください。』


番組司会者の言葉の後、さくっとCMに切り替わった。







隣で一緒にテレビを見ていた華穂様の視線が痛い。


「唯さん、愛されてるねぇ♡」


昨日まで怒り心頭という感じだったのに、すっかり騙されている。


「華穂様、あれは全て演技ですよ。

昼に会った時は、あんな殊勝な態度欠片もありませんでした。」


「えぇえ!?そうなの???」


「アカデミー賞ものですね。」


相変わらず上手い言葉のチョイスだった。

嘘は言わず真実は語らない。


【彼女】=【she】

【好き】=【like】


どの言葉もうがった読み取り方をすればどんな解釈でもできるようにしている。

明確な答えを求められた質問は、上手くはぐらかしているし、結婚についても相手が私だとは言っていない。

放送は終わってしまったが、この調子ならどんな質問もそつなくこなすだろう。


これでどこまで効果が出るか・・・・・・・。





記者会見の効果は絶大だった。


ネットでは新たに見せた一弥の真摯な一面に賞賛の嵐で『わたしもあんな風に愛されたい!!一弥に守られたい!!』と悶える女性続出。

高良田グループへ嫌がらせも、一弥からの直接のお願いとあってぴたっと止んだ。

芸能レポーターの反応も上々で会見のコメントを使って女好きの一弥がついに真実の愛を見つけて優しくあたたかくなったと持ち上げている。


・・・・・・この通りならゲームでいけばハッピーエンドなのに。


実際は真実の愛でもなければ、ヤンデレが絶賛進行中で優しくもあたたかくもなっていない。

あー、頭が痛い。


マスコミは邸の前から綺麗さっぱりいなくなった。

会見での自粛要請で大半の記者たちが引き下がったし、残るしつこい記者たちには裏で『これ以上続けるなら相手へのプライバシーの侵害で訴える。取材した局の番組やインタビューには一切出ない。』と脅しをかけたらしい。

この脅しは業界内にあっという間に広まり、それだけ一弥は本気だ、男らしいとますます一弥の株を上げる結果になった。


一弥が無償で宣伝活動をすると宣言した高良田グループは全社大喜びで、裕一郎様からとても感謝された。

フェリシテのCMはもちろん、豊福デパートは一弥を使って若い女性客を取り込もうとウキウキ計画を練っている。

一般消費者への販売を行なっていないグループ会社でもイメージキャラクターとして使えないかと画策中だ。

この機会に一弥を使い倒す気満々らしい。




こうして、週刊誌の報道から始まった騒動は終息した。

一弥は音楽番組での発言と記者会見でチャラ男を卒業し、一途男子として新たなイメージと人気を得ることになった。


・・・・・・・・・すごく釈然としない。

一弥に利用された感が半端ない。

なにが『狙い?何の話??』だ。

すっとぼけていたが、明らかに計算されている。

しかも私以外全て丸く収まっているのに腹がたつ。


華穂様から分けていただいたお菓子を手で掴んで口に放り込む。

これは一弥から迷惑をかけたお詫びにと高良田家贈られてきたものだ。


放り込んだ瞬間、近づいた手首から新緑の香りが香った。


・・・・・・・・まあ、悪いことばっかりじゃなかったかな。


香りがささくれた心を癒してくれる。

貰ったあたたかさはまだ私の心に広がっていた。

これでスキャンダル編は終わりです。

香水が流からのプレゼントだと一弥にバレたら監禁コースだなぁとか思いながら書いてました。

ヤンデレこわい。


ブックマークありがとうございます。

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