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ひとしきり泣いて心も体もすっきりした私を流は送ってくれた。


と、思ったのだが


「あの、流様、どこに・・・?」


連れてこられたのは超有名ホテルだった。

しかも入り口から一般客とは違うというVIP専用ロイヤルスイートだ。


「そんな顔で帰せるか。女をそんな顔で返すなど俺のプライドが許さない。」


・・・・・それには何も言えない。

きっと泣き腫らした顔はものすごく見苦しいことになっているだろう。


「高良田社長には許可は取ってある。

俺は社に戻らなければならない。

明日、昼前に迎えに来るからそれまでにいつもの顔に戻っておけ。」


「私、財布も携帯も持ってないんですが・・・・・・。」


急に連れてこられたため本当に身一つで何も持っていない。

・・・・・・・まあ、財布を持っていてもおそらく100万近くするであろう宿泊料を払えるとは思わないが。


「食事はルームサービスを好きに頼め。

料金は気にするな。

女に払わせるような甲斐性なしではない。

ここは槙嶋うちのグループ会社だ。

エステでもなんでも好きに使え。

着替えは後で準備してやる。」


「いえ、そこまでしていただくわけには・・・・」


「タダで受け取るのがイヤなら、俺へのアドバイス料だと思え。

お前のアドバイスは非常に役に立つ。

これからも期待している。」


・・・・・・ここまで言われて断るのは逆に失礼にあたるだろう。


「ありがとう・・・ございます。」


ホテルのことだけでなく、邸から連れ出してくれたこと、ゆっくり泣かせてくれたこと、ずっとそばにいてくれたこと。

全てのことに感謝を込めて礼をする。

今はまだ何も返せないけれど、最大限の感謝の気持ちを言葉と笑顔で。


「・・・・・・・・・・」


流が固まってしまった。

・・・・・・・顔が腫れてるから怖い笑顔になってしまったのだろうか。


「あの流・・・・」


ピリリリリリリ


流の携帯が鳴る。

慌てたように電話に出ると、くるりと後ろを向いてしまった。会社からかかってきているようだった。


流が慌てるなんて珍しい。

後ろをから見える流の耳がほんのり赤いのは気のせいだろうか。


「俺はもう戻る。

今日一日ゆっくり過ごせ。」


電話を終えると、流は私の頭を撫でてから去っていった。

・・・まずいな、ちょっとクセになりそうだ。






ピンポーン


インターホンが鳴ったのは夜8時過ぎのことだった。

流が戻ってきたのだろうか?

モニターを覗き込むとそこには流ではなく制服姿の女性の姿があった。


「どちら様でしょうか?」


『豊福デパートの者です。槙嶋流様のご依頼で参りました。』


豊福の外商部!?なんで??


慌てて扉を開けると、モニター越しでは気がつかなかったが来ていたのは華穂様のドレスを買いに行った時に世話をしてくれた店員のうちの一人だった。


「ご無沙汰しております。平岡様。本日は槙嶋流様よりご注文いただきました商品をお持ちいたしました。」


「あの槙嶋様は何をご注文されたんですか?」


恐る恐る聞いてみる。

彼女は巨大なトランクを3つも持ち込んでいた。

・・・・あれ全部購入済みとか言わないですよね?


「平岡様のお泊りセットということでお伺いしております。ご本人に選んでいただいた方がいいということで、いくつか種類をお持ちしました。」


とりあえず全部ではないことにホッとする。


「こちらのホテルはアメニティが充実しておりますので、お着替えと化粧道具を中心にお持ちしました。」


そういってトランクから商品を取り出し始める。

まずは下着。ブラとショーツとスリップのセットが10セット以上。

全て同じサイズで私にぴったり。

・・・・・・私、豊福デパートでサイズを測ったことはなかったはずなのだが。

服の上から見てわかったのか・・・恐るべし。


次にメイク道具。

ファンデーションやマスカラはもちろん、ビューラーやヘアアイロン、熊野化粧筆などの道具まで充実している。


その後に服。

1着10万はするであろう服が20着。

それに合わせた靴やバッグ、アクセサリー多数。


魔法のトランク?

と思いたくなるくらい大量の品が出てきた。


大量の品物の中から必要最低限の下着とメイク道具を選ぶ。


「これだけお願いします。」


「はい、かしこまりました。お洋服はどちらになさいますか?」


「持って来ていただいたのに申し訳ないんですが、これだけで大丈夫です。」


服は若干不衛生だが明日屋敷に戻ってから着替えればいい。

帰りのためだけに10万なんて払えない(私が払うわけではないが)



なぜだかクスリと笑われた。

なにかおかしなことを言っただろうか??



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