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かなり長くなってしまいました(・_・;

軽くノックをし寝室に入る。

まだおやすみだと思ったので返事は期待せずに扉を開けたら予想外の人物がいた。


「祐一郎様、昨夜は一晩こちらに?」


祐一郎様には昨日、仕事の後少しでもいいから華穂様を見舞ってほしいと電話をしていた。

娘大事な祐一郎様はいつもよりかなり早く帰ってきて手ずから華穂様の看病をしていたが、まさか朝までいるとは思わなかった。


「いや、出勤前に顔を見にきただけだよ。

今日も私がいない間、華穂のことをよろしく頼む。」


「はい、かしこまりました。」


『よろしく頼む』と言った祐一郎様は華穂様の顔を見つめたまま動かない。


「私は・・・この子に無理を強いていると思うか?」


「・・・・・・・・少なくとも、華穂様ご自身は無理をしているとは思っていらっしゃらないと思います。

以前華穂様は『言われて始めたことだけど、新しいことを覚えるのは楽しい』とおっしゃっていました。

ただ、華穂様に自覚はなくても環境が変われば負担はかかるのでゆっくり過ごしていただくようにと秀介様に言われました。

華穂様の体調の変化に気づけ無かったのは私の責任です。大変申し訳ございません。

今後はこのようなことがないようもっとくつろげるスケジュールにしていきたいと思います。」


たとえイベントで避けようの無かったことだとしても、華穂様が体調を崩すまで気がつかなかったのは事実である。

一昨日の夜まで華穂様が翌日体調を崩されるなど思ってもいなかった。


「華穂も私も唯くんに責任があるなんて思っていないよ。

・・・・きっとこの子は母親と一緒でひとりで抱え込んでしまうタイプだから、よく見ていてやってほしい。

頑張りすぎて潰れてしまわないように。」


「はい、これまで以上に華穂様を守り支えていくことを誓います。」


祐一郎様はその返事に切なそうに私が笑う。


「華穂の結婚相手が君みたいな人物だったらいいな。」


「たとえ私のような男性が現れても、祐一郎様は華穂様の結婚を認めるのをとても渋られると思います。」


「・・・・・きっと男親なんてみんなそんなものだよ。」


「そうかもしれませんね。」


くすりとふたりで笑いあう。


「そろそろ出るよ。今日も早めに帰ってくる。」


「はい、いってらっしゃいませ。」









サイドテーブルに届いた花を置く。


「ん・・・・」


「華穂様、起きられましたか?」


私の気配で起こしてしまったようだ。


「お父さんは?」


「華穂様のお顔をご覧になってお仕事に行かれました。

今日も早く帰ってきてくださるそうです。」


「わかった。・・・それは?」


華穂様の視線の先には先程テーブルの上に置いた花がある。


「宗純先生からのお見舞いのお花です。」


ピンク色の紫陽花とそれを囲むように小ぶりの薄青の花と黄色いオンシジュームが小さな花器に可愛らしく活けてある。

宗純らしくない可愛らしい生花だ。

いつもの凛とした強さではなく、癒しと紫陽花の花畑で踊るオンシジュームが元気をくれるそんな作品。

華穂様のことを思って活けられているのがよくわかる。


「愛らしいですね。

他にもいろいろ届いていますよ。少々お待ちください。」


一度部屋を出て朝一で届いた荷物を持って戻る。


「こちらは一弥からです。」


届いた箱を華穂様の前で開ける。

中からさらにラッピングされた箱とメッセージカードが出てきたのでそれを華穂様に渡す。

ベッドから体を起こした華穂様はちょっとウキウキした様子でラッピングを解く。


「「・・・・・・・・・・・・・。」」


うん、これにはどんな反応をしたらいいんだろう。

中から出てきたものに沈黙しつつメッセージカードに手を伸ばす。

華穂様が開いたカードには


『ホントは俺が癒しに行けたらいいんだけど、かわりにこれで俺を思い出してね。 ー 一弥 ー』


中身は一弥のCDとBD・DVDだった。

これまで出したアルバムとライブディスク全部入ってるんじゃないかと思うくらい箱の中にはぎっしり詰まっている。

ベッドで寝ながら楽しんでねということだろうか。


気を取り直して次に行こう。


「東京ウィンズの一ノ瀬社長からは果物かごがきています。」


お見舞いの定番でメロンやリンゴがカゴから覗いている。


「あとは隼人様から・・・・」


ダンボールの封を切り中を覗く。

隼人らしい中身に笑いが漏れてしまう。


「どうしたの?」


箱の中身がまだ見えない華穂様は首をかしげる。


「いえ、隼人様らしいなと思って。」


ダンボールに直接物が詰まっていたのでかしげる穂様に見えるようにベッドの家に乗せる。


「ひえピタにスポーツドリンク・・・栄養補給ゼリー?」


可愛いラッピングもメッセージカードもなく、中身はとても実用的。

真面目で素直な隼人らしい。


「きっと隼人様は風邪の時、この3つで乗り切るんでしょうね。」


「そうだね。でも、なんでみんなわたしが寝込んでること知ってるのかな?」


「宗純先生は本日の指導は体調不良でお休みする旨を昨日連絡しました。

一弥と隼人様は昨日グループメッセージがきておりましたので、華穂様がその日は携帯を見れないことをお伝えしました。

一ノ瀬社長はおそらく隼人様からお聞きになったのかと。」


私の説明に華穂様が納得したように頷く。


「宗純先生と一ノ瀬社長には全快してからお礼状を。

一弥と隼人様には体調がよろしければグループメッセージでよろしいかと思います。」


まだ少し熱はあるが昨日よりはずいぶん元気になったようだ。

リビングに置いてあった携帯もサイドテーブルに置いておく。


「おかゆは食べられそうですか?」


「うん、大丈夫。」


「では、作ってもらってきますので一旦失礼いたします。」





厨房でおかゆが出来上がるのを待っていると携帯に着信があった。

空太からだ。


『おはようございます。空太です。

朝から電話してすいません。華穂から風邪の引いて喉が痛いってきいたんで・・・・・』


出勤前だからと手短に要件を告げる空太。

それに了承して電話を切った。




「お待たせいたしました。」


おかゆを持って華穂様の部屋に戻る。


「ありがとう。・・・・・これ。」


華穂様がおかゆの隣に置いてある小鉢に驚いた顔をする。


「空太様がわざわざ電話をくださいました。

華穂様は喉が痛い時はいつもこれだから・・・と」


大根おろしに砕いた氷と蜂蜜をかけたものだ。


華穂様の目からぽろりと涙がこぼれる。

思わず出てしまったのか慌ててそれを手で拭う。


「風邪引いて弱ってるのかなぁ。

なんか蜂蜜大根も桃缶も泣きたくなるくらい嬉しい。

他にもたくさんお見舞いもらって・・・。

具合悪いのになんだかとってもいい気分なの。」


目を潤ませながら笑う華穂様はとても可愛らしい。

贈り主たちにこの喜びようを見せてあげられないのが残念なくらいだ。


「泣くほど喜んでもらえるなんて、空太様たちも嬉しいと思います。

次にお会いしたら今のお気持ちをしっかり伝えないといけませんね。」


大きく頷く華穂様はとても幸せそうで、祐一郎様にもこの顔を見てもらいたいなと思った。


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