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後半は華穂視点
華穂様の眠りが深くなったのを確認してその体をそっとベッドに横たえ、そのままふたりで静かに部屋を出た。
「秀介様、付き添ってくださりありがとうございました。」
「いえ、患者さんがしっかり休んでいるか確認するのも医者の役目ですから。
処方箋を書いておきますので近くの薬局で薬をもらってきて、華穂さんが起きたら飲ませてあげてください。」
「はい。」
「華穂さん本人に自覚はなくてもやはり環境の変化が与える負担はありますから、ゆっくり過ごせるようにしてあげてください。」
「わかりました。」
すっと秀介が右手を上げる。
あげられた右手はそのまま私の頬に触れ、首をなぞっていく。
「これは華穂さんだけではなく、あなたにも言っているんですよ。」
秀介の目が少し寂しそうに咎めるように細められる。
「環境が変わったのは平岡さんも同じです。
普段は仕事上難しいでしょうから、華穂さんが休んでいる今こそゆっくり休んでください。」
「は、はい・・・・」
離れていく手にほっとする。
触れられた肌を通して心臓の音が伝わるんじゃないかと思うくらい早鐘のように鳴っていた。
「せっかくこちらに来たので庭師さんのところに寄って行きますので見送りは結構です。
先程言ったことはきちんと守ってくださいね。」
好青年の顔に戻ると、秀介は私の前から去っていった。
うーん、あれは天然なんだろうか狙ってやってるんだろうか。
どちらにしろ随分タチが悪い。
おそらく触診だったのだろうが、あの触れ方では相手が勘違いしても仕方ない気がする。
病院でもあの調子なら院内は秀介目当ての女性患者であふれているだろう。
イケメンは罪である。
頬への感触を忘れるように首を振る。
お手伝いさんに処方箋を頼んだら、言われたとうりゆっくり部屋で休むとしよう。
その日、華穂様の熱はずっと下がらなかった。
何度か様子を見にいったがいつも眠っておられた。
ベッドの横のドリンクが減っているので起きている時もあるようだが、水分補給だけしてまた眠ってしまっているのかもしれない。
桃缶か・・・・・・
桃缶はゲームでは華穂様にとってお母様との想い出の味だった。
ゲーム通りであれば、秀介の看病でお母様を思い出して寂しくなっているかもしれない。
私は幸いにも未だ身近な人間を亡くしたことはないが、子供の頃に亡くした親を恋しいと思うのはどんなに時が経っても変わらないのではないだろうか。
私は一本の電話をかけた。
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おでこへのひんやりした感触で目が覚めた。
「おとう・・・さん・・・?」
「ただいま。まだ熱は高いようだね。薬を飲まないといけないけど、何かたべられそうかな?」
「ももかん・・・・」
「わかった。秀介くんからたくさんもらったみたいだから持ってきてもらおう。」
お父さんが頼むとすぐに唯さんが持ってきてくれた。
お父さんがわたしの体を起こして食べさせてくれる。
氷で薄めてあるのか、甘すぎずさらりと流れていく冷たい甘みがひりひりと痛む喉に気持ちいい。
「『風邪の時には桃缶が一番!』って言って、夏美・・・お母さんにはよく食べさせられたな。
華穂もよく食べたか?」
「うん・・・。熱が下がるまで毎日出してくれた。」
3日も食べてるとさすがに飽きてくるからいらないっていうんだけど、絶対食べなさいって怒られてしぶしぶ食べてた。
「今日ね、久しぶりにお母さんの夢を見たよ。」
「そうか。どんな夢だった?」
「お母さんがトントンって布団を叩いて寝かしつけてくれる夢。
夢の中のお母さん、覚えてるのよりとっても若かったから子供の頃の夢のなのかな。」
「若くて美人な姿を思い出してくれるなんて、お母さんも嬉しだろうな。」
「美人だなんて言ってないよ。」
「でも、お母さん美人だったろう?」
「・・・・・・うん。」
「お母さんは大学時代モテモテで、お父さんは振り向いてもらうのに必死だったからな。
さぁ、薬を飲んで布団に入って。
そばにいるからゆっくり眠りなさい。」
お父さんの言葉にくすりと笑ってしまう。
「お父さん、夢の中のお母さんと同じこと言ってる。」
「お母さんと息ぴったりなんて嬉しいな。ほら、おやすみ。」
布団に入ったわたしをトントンと叩いてくれる。
お母さん、わたし、お母さんとお父さんの子供でよかったよ。
幸せだなぁっと思って目を閉じた。




