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充実した日々というのは過ぎるのが早く、気づけば日曜日になっていた。

今日の華穂様は裕一郎様と出かける予定になっている。



『ちょっとおしゃれな格好をしておいで。』


という裕一郎様の指示で、今日の華穂様はグレーのボレロのカーディガンに茶色の糸で花柄の刺繍の入った白いワンピース、ビジューのついたミュールを身につけていた。


・・・・・この格好、今日の行き先はもしかして・・・・


「お父さん、今日はどこに連れて行ってくれるの?」


「今日はサッカーを見に行こう。この間会った、隼人くんのいるチームの試合だよ。」


「サッカー??」


『サッカーなのになんでおしゃれ?』と華穂様の顔には書いてあったが、裕一郎様は『着けばわかるよ。』というだけで詳しくは教えてくれなかった。




フェリシテスタジアム


東京ウィンズのホームスタジアム。

国際試合なども行われるかなり大きなスタジアムだ。私たちは正面ゲートではなく、反対側に設けられた特別ゲートから中に入る。


床にはレッドカーペトが敷かれており、私と同じような黒服を来た従業員がずらっと並んで迎えてくれる。

並んだ従業員の奥には東京ウィンズ社長の一ノ瀬社長が待っていた。


「高良田社長、華穂さん、今日はお越し下さりありがとうございます。」


「今年初めてのスタジアム観戦だから楽しみにしていたんだ。解説よろしく。」


「はい、おまかせください。では、まずは食事にしましょう。」


案内されたのは前面がガラス張りになった部屋だった。

そこには10人くらい座れそう長机が置かれていて、細かい刺繍の入ったテーブルクロスがかけられている。


高いところからグラウンドを見下ろすのはなかなかいい眺めだった。

一ノ瀬社長がいらっしゃるので華穂様もおとなしくなさっているが、ワクワクが抑えられないといった感じだ。


「なかなかいい眺めでしょう?隣の部屋ではガラスに面したソファーがありますので、食事の後そちらに移動しましょう。」


3人が席に着くとワインが運ばれてくる。

食事はフランス料理のようだ。


「華穂さんはサッカーを見るのは初めてですか?」


「はい。サッカーって学校の授業でやったくらいで、テレビとかでもあんまり見ないし、ルールもよく知らなくて・・・。」


「おっと、それは責任重大ですね。今日は是非とも楽しんでもらってしっかりサッカーファンになってもらわなくては。」


一ノ瀬社長は食事をしながらサッカーについて、それと裕一郎様がいかにサッカー好きで力を入れているかという話をしてくれた。


「スタジアムの名前もそうですし、フェリシテビバレッジがスポンサーに入ってから、選手の補強や育成にしっかり力を入れることができるようになりました。」


フェリシテビバレッジは高良田財閥グループの飲料メーカーだ。

東京ウィンズ最大のスポンサーでスタジアムの命名権も買って、ウィンズを全面的に応援している。


「普通、企業のスポンサーの方々は忙しいので資金提供だけでなかなかスタジアムに足を運ばれることはないんですが、高良田社長は毎年10試合以上観戦に来られるほどのサッカー好きなんです。」


「自分が応援してるチームが頑張ってる姿を生で見れるのは、最高の贅沢だからな。

華穂も一回体験したら病みつきになるよ。」


話は盛り上がり、あっという間に試合開始時刻になった。

全員観戦ルームに移動し、グラウンドに目を向ける。

子供たちと手をつないで選手が入場してきた。

一ノ瀬社長が主だったウィンズの選手について華穂様に説明をしてくれる。


「あ、あの真ん中の選手わかりますか?この間パーティに連れて行った若宮隼人です。ポジションはミッドフィルダー・・・・ピッチの中央付近でプレーする選手でそ。攻撃も守備も必要な難しい役割なんですよ。」


眼下にはゲームで見たままの姿の隼人がいた。

白い生地に緑のラインの入ったシャツと緑のパンツ。

その表情は先日のパーティーと違って強く引き締まっていて、試合前の緊張感を漂わせている。


選手たちがピッチに広がっていく。


ホイッスルが鳴る。



試合開始だ。

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