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結局、一弥はしっかり私の連絡先までゲットして離れていった。
なんだかしてやられた気がするが、もし一弥と華穂様が出かけることになった場合はこちらから連絡が取れた方がいいし、まあいいだろう。
一弥が離れてしばらくはゲームに関係のない財界の皆様との挨拶だった。
華穂様もしっかり調子を取り戻し、しっかり挨拶をしている。
その様子を私は元の位置に戻って安心しながら見ていた。
おっ・・・・・・あの姿は・・・・・
ショートレイヤーに切られたサラサラの黒髪が清潔感を醸し出している。
ちょっと幼い顔立ちはパーティーに慣れていないのか緊張気味だ。
ゲームと違うのは今の服装。
紺のジャケットにグレーのスラックス。ジャケットの胸にはチームのエンブレムが着いている。
パーティーにユニフォーム姿で来たらおかしいもんね。
一弥が革ジャンだったのは・・・・イメージ戦略というものだろう。
若宮隼人
サッカーチーム 東京ウィンズに所属する20歳の若きエース。
日本代表にも選ばれている次代を背負って立つサッカー界期待の星だ。
爽やかなルックスの好青年なのだが、恥ずかしがり屋なのかインタビューなどではやや落ち着かない様子を見せる。
それがまたプレーしている時とのギャップ萌えで女性の心を撃ち抜くらしく、彼のおかげでグッと女性のサッカーファンが増えているという。
彼の所属する東京ウィンズのスポンサーに、高良田グループの飲料メーカーがついている。
彼自身もスポーツ飲料のCMに出ていたはずだ。
それに彼には裕一郎様個人に恩があったはず。それで今回クラブ社長とともに来ているのだろう。
「一ノ瀬社長、隼人君、久しぶりだね。試合が終わって疲れているだろうに来てくれてありがとう。」
「いえ、ご招待いただきありがとうございます。
隼人の奴は高良田社長に会えるのが随分楽しみだったようで、今日の試合は特に気合が入ってましたよ。」
ニヤニヤとからかうような視線を向けられた隼人の顔がちょっと赤くなる。
「あぁ、さすがに試合全部は見れなかったからダイジェストで見たけど、ハットトリックすごかったね。最後のDF3人抜いてからのシュートなんて芸術的だった。また上手くなったね。」
裕一郎様の褒め言葉にハニカムような笑みを浮かべる隼人がかわいい。
なんだか周りの人間の多くが男女問わず小動物を見るかのような、生温かい視線を彼に向けている。
「隣にいるのは娘の華穂だ。
華穂、こちらは東京ウィンズの一ノ瀬社長と若宮隼人選手。
隼人くんは私の息子みたいなものだよ。これからスタジアムに行くこともあるだろうから仲良くしなさい。」
「え???お父さん、わたし弟がいるなんて聞いてないよ!!!???」
「おっぉぉぉおぉぉおっ弟だなんて滅相もない。裕一郎さんにはとてもよくしてもらっているだけで、そのっ、俺が勝手に父親みたいに思ってるっていうか・・・・」
「?????」
全力で首を左右に振りながら真っ赤になっている隼人をみて、事情を知らない華穂様の頭に疑問符が浮かんでいる。
それを見ながらちょっと意地悪そうな顔をする裕一郎様。
「私が息子みたいに思っているだけで、残念ながら法律上でも血縁上でも血は繋がっていないから、華穂の弟にはなれないかな。
でも、法律上でもよければ私の義理の息子にはなれるなぁ・・・・」
裕一郎様は華穂様をチラッと見て、それから隼人に視線を向ける。
その意味がわかった隼人の顔はまさにゆでダコ。漫画だったら確実に顔から湯気が出ている。
真っ赤な顔のまま華穂様を見つめる視線はまんざらでもなさそうだ。
「高良田社長、あんまり隼人をいじめないでやってくださいよ。
こいつのことだからあんまり意識すると、今度はスタジアムに来てもらっても華穂さんの前に出て来れなくなりそうだ。」
「おや、それは困るな。今年は華穂と観戦にいくのが楽しみなのに。」
そういって『ハハハッ』と笑うおじ様2人に話の内容がよくわかっていない鈍チンな華穂様と、赤い顔で口をパクパクさせている隼人。
年下というのは大人になってもまだ年長者のおもちゃなのである。
なんだか流の時もだけど、裕一郎様が最初のイメージより暴走気味・・・・・・




