第四十話 鞍上は三嶋華音
華音とフォルチュンヌのG1二つ目は話題になるという言葉では収まりきれないぐらいに話題となった。
華音のジョッキーカメラの再生は他のものとは比べ物にならないぐらいの再生数を記録し、毎日再生数を伸ばしている。
「三嶋。お前に凄く可愛いファンレターがきてるぞ」
「可愛い……ですか?」
手渡された可愛い封筒の中には『がんばれかのんちゃん。がんばれふぉるちゅんぬ』と拙い平仮名でメッセージが書かれた芝の上を走るフォルチュンヌと背中に乗る華音の似顔絵が入っていた。
「こんなファンレター……初めてです。嬉し過ぎ……」
幼い子供からの応援を受けて、華音はますます勝ち鞍をあげた。
そして、あっという間に有馬記念のファン投票の時期がやってきた。
「三嶋。フォルの票数凄いな。先輩達も驚いてたぞ」
「うん。私が一番ビックリしてる」
響太や詠一だけでなく多くの先輩達からも褒められた。
恐らく夏に陽介が取材を受けたからだ。
✤✤✤
「あの……月城馬主。話って……」
「三嶋さん、忙しいのに時間を作ってくださりありがとうございます」
夏競馬の最中、陽介は札幌に出向いてきてくれた。
「いえ。あの何かありました?」
「フォルの引退の事です」
華音は心臓がギュッと握り潰されているかのような感覚がした。
「三嶋さんにはフォルにG1二つと言うとんでもない喜びを与えていただきました。サイアーラインの復活の話はしましたよね。G1を二つ獲ってフォルは素晴らしい繁殖牝馬としての泊がつきました。本当にありがとうございます」
陽介の声が遠くに聞こえる。
(分かってる……。フォルは私の馬じゃない……。フォルにはフォルのやるべき事がある……。けど……けど……)
脳裏にフォルチュンヌとの日々が次々と浮かぶ。初めて会った日。初めて跨った日。デビュー戦や初めて重賞やG1を獲れた日……。
「本当に本当にありがとうございます。あなたは僕が思っていた以上の騎手でした」
華音は陽介の差し出した手を見詰めた。そして、華音はその手を取りギュッと握り締めた。
その後、陽介は正式にフォルチュンヌの引退を発表した。
「フォルチュンヌは今年いっぱいで引退をし、繁殖牝馬となります。たくさんのファンの皆様。応援ありがとうございました」
次々と記者達からの質問が飛ぶ。
「引退レースは、まだ決定はしていません。ですが、有馬記念を目標にしています。昨年もかなりの票数をいただけたので、皆様のお力で有馬記念をフォルチュンヌのラストランにしてやってください。よろしくお願いします」
陽介はニッコリと笑った。
「ところで月城馬主。鞍上は?」
「それ、愚問ですね。フォルチュンヌの鞍上は三嶋華音です。僕は三嶋騎手以外にフォルチュンヌを乗せるつもりはありません」
陽介はキッパリと言い切った。
✤✤✤
「華音。華音の乗るフォルと響太のノワールの直接対決がまた見たいって盛り上がってるぜ」
「うん。頑張るよ、詠一」
「ああ。俺、応援してるからさ」
華音と響太がG1を獲り、詠一もG1への騎乗依頼がくるようになった。
「俺、随分と華音と響太から遅れを取ってるけど、その内一緒にG1で勝負出来るように頑張るから。俺の目標でいてくれよな」
「うん。お互い頑張ろうね」
数日後、有馬記念の出場馬が決定した。
有馬記念をラストランとし引退するフォルチュンヌと華音、エイルノワールと響太の最後の勝負が見られると世間は大盛り上がりをした。




