挿話 メリルへの手紙
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親愛なるメリルへ
ごきげんよう!
私がいなくなった後、学園ではどうかしら?
皆、驚いていた?
彼もさすがに驚いたんじゃないかしら……
って、きっと、そうでもないわね。
彼にとって、私なんていないほうがいいのでしょうし。
やっぱり何も聞かないでおくわ。
何を聞いても今更だしね。
そんなことより、今日は早速クライドル高等学院について話していくわね。
まだ三日しか経っていないけれど、わかったことがあるのよ。
とにかくここは広いわ!
クラスの数もランタナより三つ多くて、図書館なんて倍以上の広さなの!
それからね、何より私が驚いたのが『紳士教育』が目的のサポートシステムがあることなの。
助けが必要な女子生徒がいたら、彼女の前後左右に座る男子生徒が彼女をサポートするシステムなのですって。
だからね、転校初日から両隣と前の席の男子がずっとつきっきりで私をサポートしてくれているの。
あ、私の席は一番後ろだから前と左右の三人なのだけれど。
それでね、やっぱり授業はとーーっても難しいのよ。
私一人だったら絶対泣いてるレベル!
けれど、昨日も今日も、彼ら三人が遅くまで私の自習に付き合ってくれたのよ。
これって素晴らしいシステムじゃない??
でね、その中の一人がいきなり私のこと呼び捨てで呼んだの!
『アリシア』って。
私そのときボーッとしてて、うっかり返事しちゃったものだから、今さら言いにくくて……結局そのままになっているの。
しかも彼、私に愛称で呼べって言うものだから、なんか流れっていうのかな、私もつい呼んじゃったの、『ギル』って。
あとね、もう一人はアリシア嬢って呼んでくれるけれど、残りの一人がね、これまたアリシアちゃんって呼ぶのよ?
メリルもさすがにどうかと思うわよね?
でもね、聞いてメリル。
親切で面白いクラスメイトが教えてくれたのよ。
そういうのぜーんぶ含めて、紳士教育の一環なのですって!
転校生の私を気遣って、優しく接してくれているのですって!
私、どうして皆さんがこんなに親切にしてくださるのか、正直少し疑問だったの。
だから、義務だって聞いて安心したの。
万に一つもないとは思うけれど、もし私のことが気になるとか、私みたいに一目惚れしたとかいう理由だったら困るもの。
私ね、今はそういう気分じゃないの。
婚約が白紙に戻って、私だってゆくゆくはどこかの誰かに嫁ぐ必要があるけれど、それはわかっているけれど……
今の私にはそんな資格もないし、自信だってないもの。
私って十年以上もほら、ずっと彼に想いを傾けてきたじゃない?
メリルにもよく言われたわね。
『あなた、ほんと彼のことばっかりね』って。
ねえ、その想いが消えた今、私って中身スカスカなんじゃないかしら……?
だから今はね、まず自分の中身を詰めたいの。
だって彼が詰まってたところ、たくさん空いているんだもの。
そこにね、勉強とか学院生活の楽しいこととか、素敵な思い出とかいっぱい詰めたいの。
なんだか、眠くなっちゃったから今日はここまで。
何かあったら、いえ、何もなくたってまたお手紙書くわね。
あなたがいなくてさみしいわ。
アリシアより心をこめて
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まあ、転入早々モテてるのね……
アリシアったら、本当にそれら全てが紳士教育の一環だなんて本気で思っているのかしら?
ふふ、相変わらずズレているのね。
心配しないで、アリシア。
あなたの中身は、ふふ、『面白い』と『可愛い』がたくさん詰まっているのよ。
スカスカなんかじゃないわ。
ギルってことは、ギルバート?
いえ、クライドルだとギルベルトかしら……
その彼がアリシアを呼び捨てにですって?
まあ、まあ、まあ!
それにちゃん付けで呼ぶ彼も、どうなのかしらね。きっと話しやすい系のちょっと軽い感じなのでしょうね。
ふふ、次のお手紙が楽しみだわ。




