1.緊張の転校初日
リクエストにお応えして続編に突入です。
よろしくお願いします(*^^*)
クライドル高等学院は、アリシアが通っていたランタナ王立学園よりも規模が大きかった。
あちらは三年制の学校だったけれど、こちらは中等部と高等部があって六年制となっている。
おまけに高等部は全員入寮することになっていて、アリシアの荷物も昨日のうちに寮の部屋へと運び込まれている。
「ランタナ王立学園から転校して参りました、
アリシア・ブルーベルと申します。よろしくお願い致します」
転校初日。
新しい制服に身を包み、かなり緊張していたアリシアだったが、クラスの皆が概ね笑顔で迎えてくれたのでホッと胸を撫で下ろす。
歓迎の拍手が止み、教師から勧められるまま席に着く。
そこは、窓際からは二列目の一番後ろの席だった。
右隣にはひらひら手を振る、ちょっと軽そうな男子。
前の席には、振り返ってまで微笑んでくれる人の良さそうな男子。
それから窓側の男子は、無愛想だったけれど目が合った瞬間、頬を真っ赤に染めて固まってしまった。
(まあ、極度の照れ屋さんなのね)
やたらと男子が多いことが気になった。
けれど、周りを見ても男女が交互に座っているため、アリシアはそういう並びなのだと理解した。
そのまま授業に入り、アリシアも新品の教科書を開いてはみたものの......
正直かなりレベルが高く、今日来ていきなり飛び込めるような内容ではなかった。
そしてそれはどの教科も似たようなもので、四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った時にはアリシアもくたびれ果てていた。
「大丈夫?」
右隣の男子が声を掛けてくれる。
「ええ、正直とても難しくて。さすがクライドル高等学院はレベルが高いですね」
そう言ってアリシアが微笑むと、その男子はなぜか息を呑んで固まってしまった。
(一体どうしたのかしら……?)
アリシアは自分の容姿にあまり興味がない。
けれど、一般的に言えばかなりの美少女な上、最近ますます色気も出てきた。
つまり転校早々、男子生徒を中心にかなりの視線を集めている。
もちろん前の学園でも、入学した時にはかなり注目を集めたのだが。
お察しの通り、脇目も振らずマーク一筋なアリシアだったので、次第に興味を持たれなくなっていったのだった。
アリシアが昼食のため立ち上がると、女子の集団が近づいてきて声をかけてきた。
「アリシアさん、とお呼びしてもいいかしら?」
なんだかとても迫力のある女子生徒だった。
左右に二人ずつ従えた彼女は、顎をくいっと上げて品定めするかのような目線をアリシアに向けている。
(あら、あのお胸は本物かしら?)
アリシアは、制服の上からでも主張の激しい彼女の胸部に一瞬、視線も興味も奪われてしまった。
「ええ。あの、えっと、貴女のお名前をお伺いしても?」
彼女の高慢ちきな態度が少し気にかかったけれど、アリシアはひとまず笑顔で尋ねた。
すると。
「まあ! ロスヴィータ様をご存知ないなんて、信じられないわっっ」
「これだから小国の田舎貴族は……」
左右から一人ずつ順に前に出ると、大袈裟な身振り手振りでそんなことを言った。
そして二人とも、言い終わった後は申し合わせたように大きなため息を吐いた。
セリフの無かった両外の二人は、真ん中のロスヴィータ同様、顎をツンと上に向けアリシアにきつい視線をぶつけている。
転校早々、波乱の予感である。
(まあ、まるでお芝居だわ!)
しかし、当のアリシアは場違いな感想を抱いていた。
「ねえ、そういうのクライドルの恥だと思うんだ。やめた方がいいよ?」
アリシアが困っていると思ってか、前の席の男子が間に入ってくれた。
「アリシアちゃん、こっちへおいで。ランチルームへ案内するよ」
そして右隣の男子が、アリシアにさっと手を差し出した。
ただランチルームに行きたいだけなのにエスコートはちょっと......と、アリシアは躊躇った。
けれど、出された手を断るのは失礼にあたる――その時、
ーーパシッ
と、軽く音を立ててその手を払ったのは、もちろんアリシアではない。
窓際に座っていた、無愛想な彼の仕業だった。




