最終話 メリルの独白
皆さま、ごきげんよう。
私、アリシアの唯一無二の親友であることを自負しております、メリル・バークレーと申します。
ーーカラーン、カラーン
聞こえますかしら?
晴れ渡る青空の下、教会の鐘の音が鳴り響いておりますわ。
本日は私の結婚式ですのよ。
バークレーは私の新しい家名ですの。って、私の話などどうでもよろしいわね。
さて、私もアリシアも、学園(あちらは学院ですわね)を卒業して半年が経ちました。
アリシアは学院では色々と、ふふふ、楽しく過ごせたみたいで、私、アリシアからお手紙が届くたび胸をときめかせて読んでおりましたの。
あ、ちなみに今、私と旦那様は誓いの儀式を終えて教会から外へ出たところです。
『両家の繁栄をお祈りいたします』
『末永くお幸せに!!』
ご列席の皆様が花びらを撒きながら私達を温かく出迎えてくださいましたわ。
「おめでとう、メリル!! えぐっ。本当に、きれ、うぐっ、きれいよ、メリルぅぅう」
あらまあ。
アリシアったら、そんなに泣かなくたってちゃんと気持ちは伝わっていましてよ?
「アリシア、お顔が大変なことになっているわよ?」
「だって、だって、えぐっ、久しぶりにメリルに会えたのに、ううっ、お嫁に行っちゃったらまた会えなくなるじゃない、うわぁあん」
まあまあ。私の旦那様もご列席の皆様もドン引きするほどの号泣っぷりですわね。
けれど、アリシアの横に立つ彼は先程からずっと優しく微笑んで、アリシアの涙を拭っていらっしゃいます。
彼のアリシアを見つめる眼差しと言ったら!!
まあ、まあ、まあ!!
ハッ、いけませんわ、少し落ち着かなくては。
「心配しないで、アリシア。
私の旦那様はとぉってもお優しいの。結婚したからって自由にお出かけくらいさせてくださるわよ。ね?」
そう言って旦那様に視線を向ける私と、泣き顔のアリシア、そしてアリシアの横に立つ彼。
三人分の圧がこもった視線に耐えかねて、うちの旦那様は苦笑いとともにコクコク頷いて下さった。
皆さま、ご興味がないかもしれませんけれど、少しだけ私の話にお付き合いくださいませ。
旦那様と私は、旦那様が六歳で私が三歳の頃に婚約いたしました。ですからもう十五年の付き合いになりますわね。
はっきり申し上げて、旦那様にときめいたことはございませんの。けれど、私も旦那様も、ずうっとお互いに相手を思いやったお付き合いを続けてまいりましたのよ?
ですから、今日この日を迎えられて私はまずまず幸せなのですわ。
政略結婚とは、本来そのようなものでしょう?
お互いに家と家の関係がございます。相手を無下に扱っていいわけがないのですわ。
フロックス様が悪い例でしたわね。
えーと、私と旦那様の関係はそのような感じですから、正直なところ結婚したからといって何が変わるとも思っておりませんの。
けれど、もしかしたら今夜、今まで知らなかった旦那様のお姿を目の当たりにして……ムフフ。
ハッ、嫌ですわ!
失礼。私としたことが、また取り乱しておりました。
私の目の前では、アリシアがまだグズグスと鼻を啜っているものですから、以前と同じように、アリシアの背中をそっと撫でて差し上げました。
「もう泣くのはおよしなさい。ほら、次はあなた達の結婚式で会えるのだから。半年後でしょう?」
そう言って、私はアリシアの肩を優しく抱き寄せる隣の彼を見上げました。
背が高く、まるで騎士のように立派に鍛え上げられた体躯を持つ彼は、隣国クライドルの辺境伯家嫡男だと伺っております。
まあ、まあ、まあ!
見てごらんなさいな。
彼、ボロ泣きでメイク崩壊気味のアリシアを蕩けるような瞳で見つめていらっしゃるのよ?
相当ですわ!
ベタ惚れですわ!
なんでも昨年、高等学院生活も残り一年というところで転入してきたアリシアに、彼は一目惚れしたらしいんですの。
アリシアは、中身はさておき、外見は本当に美しくて目を惹きますからね。
転入早々、たくさんの男子生徒が彼女に心奪われたそうですのよ。
けれど皆さまよくご存知のとおり、アリシアはフロックス様とのことがありましたでしょう?
『恋愛は当分の間お休みすることにしています!』
なんて宣言して、言い寄る方たちのお誘いをことごとくお断りしたらしいのです。
そこに登場するのがこちらの彼ですわ!
彼はアリシアにこう言ったのだそうよ。
『君は休んでいろ。俺は俺の好きなようにする』
キャーッッ!!
素敵ですわ! 積極的な殿方最高ですわ!!
ハッ、失礼致しましたわ。
何度も申し訳ございませんわね。
とにかく、アリシアのペースなんてお構いなしにグイグイ押してくる彼に、いつしかアリシアも絆されていったんですって。
ふふ。
アリシア、本当に美しくなったわね。
白く透き通る肌にサファイアのように煌めく青い瞳。
長い黒髪は艶やかで、幼い頃は正直申し上げて可愛げのないキツめの印象でしたけれど、大人に近づくにつれてアリシアはどんどん華やかに、香り立つような色気を纏うようになっていきましたわ。
今、そんなアリシアの側には頼もしい騎士が優しく、それでいて、決して離さないと言わんばかりに抱き寄せていらっしゃいます。
ふう。
さあ、そろそろブーケトスですわね。
私はその場で後ろを向いて、両手に持っていたブーケを空高く放り投げました。
「「わあ!」」
歓声が聞こえたので振り向いてみましたら、幸せの詰まったブーケは見事にアリシアの手元へと収まっておりました。
アリシアと彼のまわりには不自然な空間がありましたので、きっとご列席の皆様が空気を読んでくださったのでしょうね。
「メリル、ありがとう! 私たちも絶対幸せになるわ」
アリシアは今まで見たことがないくらいの眩い笑顔で、隣の彼と見つめ合っております。
まあ、まあ、まあ!
皆さま、ご覧になりまして?
ほら、私、間違っておりませんでしたでしょう?
実は私、アリシアとは幼い頃からの付き合いなのですわ。ですから、ずっと長い間フロックス様に恋するアリシアを応援して参りましたのよ?
ね?
わかって頂けますでしょう?
『アリシアが勿体なかったのですわ』
(終わり)
最後までお付き合いくださってありがとうございました!!
この一年、書きたいことがたくさんあるのに書けない沼に落ちてました(>_<)
それと三人称で書いてみたいという思いがあり、そこも苦戦したところです。
今回、とりあえず短めのものを、とチャレンジしてみたのですが本当にビックリしております!
こんなにたくさんの方に読んで頂けて、色んな意味で励まされております!
まだまだ課題は多いですが、ひとまず書き上げたことで一歩前進です\(^o^)/
改めて、最後まで読んで頂きましてありがとうございました。




