中編
数ある作品の中から本作をお選びいただき、ありがとうございます。
拙い部分もあるかと思いますが、最後までお楽しみいただければ嬉しいです。
【中編】覚醒と断罪
暗闇の中で、記憶が流れ込む。
知らないはずの景色。
知らないはずの人生。
だが——
「……知っている」
理解してしまった。
これは、自分だ。
⸻
名前は、鈴木明子。
三十七歳。
戦略コンサルタント。
終わらない仕事。
評価されない努力。
上司に奪われる成果。
「いい資料だな。これ、使うぞ」
その一言で、自分の仕事が他人のものになる。
何度も、何度も。
そして最後は——
過労死。
⸻
「……同じだ」
クレアは呟いた。
前世も、今世も。
やっていることは変わらない。
働く。
搾取される。
壊れる。
「ふざけるな」
初めて、感情が言葉になった。
「二度目はない」
⸻
目を覚ます。
天井。
静かな部屋。
実家だった。
母が泣いている。
「クレア……!」
三日眠っていたらしい。
体は重い。
だが、思考は異様に冴えていた。
⸻
「婚約を解消します」
その一言で、空気が止まった。
「な、何を……」
父が言葉を失う。
だがクレアは続けた。
「これは感情ではありません」
「契約の問題です」
⸻
机に資料を並べる。
三年間の成果。
数字。
利益。
削減。
全て、可視化されている。
「私は無償で働いていました」
「本来なら報酬が発生するレベルで」
父の顔色が変わる。
「……ここまでか」
「交渉します」
⸻
数日後。
ベルクシュタット侯爵家。
怒号が飛ぶ。
「婚約破棄だと!?」
クレアは冷静だった。
「契約解除の提案です」
資料を提示する。
完璧な論理。
逃げ場のない構造。
「選択肢は二つです」
「穏便に終わらせるか」
「全てを公開するか」
沈黙。
長い沈黙。
そして——
侯爵は、折れた。
⸻
その瞬間。
クレアは完全に自由になった。
⸻
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけたなら、
評価やブックマークで応援していただけると励みになります。




