表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

第28話 裏側

 夜。


 領地の灯りが、ひとつ、またひとつと消えていく中で。


 まだ消えない場所があった。


 裏通り。


 人目につかない建物。


 その奥。


「……来ると思ってたわ」


 サラが言った。


 椅子に腰掛け、足を組みながら。


 その視線の先に、一人の女が立っている。


「ええ」


 カティアが、静かに答える。


「あなたなら、来るでしょう?」


 微笑む。


 柔らかく。


 だが。


 その奥は、冷たい。


「用件は?」


 サラは、興味なさそうに問う。


 だが。


 その指先は、わずかに机を叩いている。


 完全に無関心ではない。


「簡単よ」


 カティアは言った。


 一歩、近づく。


「こちらに来なさい」


 その言葉は、あまりにも直接的だった。


 沈黙。


 サラは、少しだけ目を細めた。


「……理由は?」


「利益」


 即答。


 迷いはない。


「あなたが一番好きなもの」


 その一言で、空気が揺れる。


「……」


 サラは、何も言わない。


 だが。


 否定もしない。


「今のままだと、あなたは“使われる側”」


 カティアは続ける。


「でもこちらなら」


 一歩、さらに踏み込む。


「“握る側”になれる」


 その言葉は、甘い。


 そして。


 危険だ。


「……へえ」


 サラが、わずかに笑う。


「随分と評価高いじゃない」


「当然よ」


 カティアは言う。


「あなたがいなければ、ここまで回っていない」


 事実。


 だからこそ。


 価値がある。


「……で?」


 サラが問う。


「条件は?」


 カティアは、少しだけ考える仕草をした。


 そして。


「五割」


 と、言った。


 沈黙。


 一瞬。


 時間が止まる。


「……本気?」


 サラの声が、わずかに低くなる。


「ええ」


 カティアは頷く。


「あなたが入れば、それくらいの価値はある」


 迷いはない。


 それはつまり――


 本気の勧誘。


「……」


 サラは、視線を落とした。


 机。


 指先。


 そして。


 自分の手。


「……いい条件ね」


 小さく言う。


 だが。


 すぐに顔を上げる。


「でも」


 一歩、立ち上がる。


「一つ、聞かせて」


 カティアをまっすぐに見る。


「エレノアは、どうするの?」


 その問いに。


 カティアは、ほんのわずかに笑った。


「潰す」


 即答。


 その一言に、躊躇はない。


 そして。


 感情もない。


「……」


 サラの表情が、わずかに変わる。


「理由は?」


「邪魔だから」


 それだけ。


 それ以上でも、それ以下でもない。


 沈黙。


 サラは、しばらく何も言わなかった。


 考えている。


 利益。


 位置。


 未来。


 すべてを。


「……ねえ」


 小さく言う。


「もし私が断ったら?」


 カティアは、少しだけ首を傾けた。


 そして。


「それでもいいわ」


 と、言った。


 その言葉に、サラの目がわずかに開く。


「どうせ」


 続ける。


「どちらかに転ぶ」


 静かな声。


「中立は、ない」


 その一言は、真実だった。


「……」


 サラは、息を吐いた。


 ゆっくりと。


「期限は?」


「二日」


 即答。


「ちょうどいいでしょ?」


 その言葉に、意味がある。


 エレノアと同じ。


 二日。


 その中で。


 決めろと。


「……分かった」


 サラは言った。


 短く。


「考える」


 それだけ。


 カティアは、満足そうに頷いた。


「ええ」


 一歩、下がる。


「いい返事、期待してる」


 そのまま、背を向ける。


 止めない。


 止められない。


 扉が閉まる。


 静寂。


「……」


 サラは、その場に立ち尽くした。


 何も言わない。


 ただ。


 考えている。


 利益。


 位置。


 そして――


 あの女。


「……」


 小さく、笑う。


 どこか、楽しそうに。


「ほんと、面白いわね」


 その呟きは、誰にも届かない。


 だが。


 確実に。


 何かが、動き始めていた。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。


 ついに“裏側”が動きました。


 サラという重要キャラが、

 どちらにつくのか。


 この選択が、

 この後の流れを大きく左右します。


 次話では、

 エレノア側の“攻め”が本格的に始まります。


 一気に展開が加速しますので、

 ぜひブックマークしてお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ