動物たちの本能?
ランキングリセット前の最後の休日。
連休中はそれぞれ勝手に動いていたけど、今日はみんな朝から暇そうだ。ロビーでだらけているね。
私はもうあちこちおでかけしたし、今日はどうするかな。のんびりしてもいいし、どっかで遊んでもいいかも。
「まどかおねえ、動物園行かへん?」
なんと? ツバキが突然言い出した。
「動物園? 急にどうしたのよ」
「上野動物園で虎の赤ちゃん、生まれたんやって。見たい」
ほーん? 虎はいいよね。私のスカジャンは背中の虎の刺繍が、マジでイケてるからね。久々に本物の虎を見たい気がしてきた。
「あ、それ話題になってますよね。私も見たいです」
「ルリもなの? 虎の赤ちゃんか……たしかに気になるわね。アオイも行く?」
「マドカさんや、何を言っているのかね? 私は虎の刺繍のスカジャン持ってんだよ? そりゃ行くよ」
もうだいぶ暑いから、いまは着ないけども。
「ツバキとルリとアオイ、それとあたしね。ほかはどうする?」
「アタシはいい。動物園なんてガラじゃねえからな」
「私もだ。それに午後から予定がある」
なんでよ?
「え、虎だよ? 見たくないの? リカちゃんは?」
「それが美容室を予約しちゃってるんで、わたしもまた今度にしますね」
うえー、なんだよー。雪乃さんも朝からいないし。
でもそっか。まあ虎の赤ちゃんなんて、猫と変わらんよね。そんなもん別に、いちいち見に行かなくてもいいっちゃいいのかな。私はちょっとだけ気になるから行くけど。
「早く準備」
「ちょっと待ってて。じゃあ、1時間後にロビーに集合ね」
「わかりました」
マドカはいつも準備に時間かかるね。おしゃれな女はやっぱ違うわ。
せっかくのお出かけだし、私もちょっとくらいおしゃれするかな。
日差しが結構キツそうだし、夕歌さんがプレゼントしてくれたベレー帽はかぶって行こう!
そんなこんなで、ハイパー上野動物園にやってきた。
平日の午後なのに結構人が多いね。みんなちゃんと働けよ、まったくもう。
マドカが全員分の入園料を払ってくれて、さっそく園内に入る。
「うおー、動物園とか超久しぶりだわ」
「私もです。小学生の時以来ですね」
「うちも」
「あたしは仕事で……まあいいわ。それより虎はどこにいるの?」
「こっち」
いつになく、ツバキがやる気だね。先頭になって歩くツバキに付いて行った。
虎の赤ちゃんなんて、どうせ猫とそんな変わらんのにね。それよりも、私はでっかい虎のほうが楽しみだ。わくわく感が高まってきたね。
とっとこ歩いて、人が多いそれっぽい場所に到着した。
肝心の虎はまだ先のほう、ガラス窓の向こう側にいるっぽい。並ばないといけないんだね。
やべー、わくわく感が高まりまくりだよ。
虎のあとは象とかゴリラとかも見たいね、なんて話していたら、そろそろ見えるっぽい場所までやってきた。
「どんなもんかねー」
「あ、見えましたよ!」
「ちっちゃい……かわいい」
「本当。毛並みがふわふわしてて、かわいいわね」
さらに先に進んで、もうちょっとでガラスの前ってところにたどり着いた。
赤ちゃんの虎は母虎にくっついて、じゃれついている。
「うおーっ、でっかい虎かっけー」
やっぱ赤ちゃん虎は、ちょっと変わった猫じゃん。
でも3人は目を輝かせている。そんなにいいもんかね? 猫と変わんなくね?
あのでっかい虎のほうが絶対、カッコいいのに。
そしていよいよガラスの真ん前だ。もっとじっくり見たいね、なんて思っていたらだよ。
「え、なに? アオイ、なにかした?」
「いやいや、なんもしてないって」
母虎がめっちゃ威嚇してんだけど。おっかない顔して、グルグル唸ってるよね? なんでだよ。
無邪気に遊んでいたチビ虎まで、母虎の後ろに隠れてしまった。
「葵姉はん、嫌われとる……?」
「いやいやいや、私じゃないって。あ、ほら、沖ちゃんを怖がってんだよ。剣士のすごい殺気みたいなやつが漏れちゃってんだよ。沖ちゃん、頼むよもー」
「そんなはずは……やはり葵を睨んでますよ」
たしかに、そんな気がしなくもない。
周りがちょっとざわざわしたけど、私はホントになんもしてないし。ちょっとずつ移動していく人波に押されて、虎の前から徐々に遠ざかるのに、なんかずっと威嚇され続けていたわ。
おかしいだろ。なんでだよ。
気を取り直して、お次はライオンを見ることにした。
やっぱ見るべきは百獣の王だよ。ホントは虎も超いいはずなのに、この動物園のはちょっと違ったわ。
人を無意味に威嚇しやがってよー、余裕ってもんがないんだよね。その点、百獣の王なら心配無用だ。
「あれだよ、あれ! 迫力が違うわー」
「ライオンもこうして見ると、随分のんびりしてるわね」
「野性味が薄れとる」
「でもあのたてがみ、立派ですね。虎とは違った魅力を感じます」
岩の上にどーんと寝そべっている。暇そうだけど、王者の余裕感があるわ。さすが百獣の王!
柵に近づいて、じっくり見ようと思ったらだよ。
「うおっ」
目が合った瞬間に、超警戒モードになってしまった。
そんでもって、ほえられちゃったよ。ガオーッじゃねーんだよ、なんなんだよ。
「待って。アオイ、本当に何もしてないのよね?」
「ほかのライオンにも警戒されてませんか?」
「こっちきた」
マジかよ。3匹のライオンが一斉に、こっちに向かって走ってきたんだけど。金網に体当たりまでしちゃってさ。
すげー迫力だけど、なんでそんな怒ってんだよ。意味わからんわ。
「離れたほうがよさそうね」
「なんだよ、でっかいの猫のくせによー」
人間様にさからうなよな、まったくもう。
「葵姉はん、行く」
「あ、向こうに猿山が見えます。次はあっちに行ってみましょう」
まあいいけどね。
そうだ。猿なら猫よりかしこそうだし、無意味に威嚇なんかしないよね?
よっしゃ、お猿の群れでもちょっと見てやるか。
移動中はあんまり気にしないようにしていたけど……なんか私ったら、いろんな動物に警戒されてね?
そんなことはないよね? さすがに気のせいだよね。
お猿どもが何匹もいる、あそこをのんびり鑑賞だ。私だって畜生どもに癒されたいよ。
どーれどれ。猿山に近づいみるよ。
「……やっぱりダメね」
猿軍団は私を見るなり、キーキーわめきながら猿山の頂上にすごい勢いで逃げて行った。
しかも全員で小さく固まって、こっちを警戒してるんだけど。
「あれ、1匹出てきよった」
「なんでしょう、ボス猿ですかね」
たしかにボスっぽいね。ほかの猿に比べてちょっと体が大きいし、強そうな感じがする。
でもあんなお猿に、人間様で超強い私がなめられていいわけねーわ。なんだよ、あれ。めっちゃなまいきそうな顔に見えてきたわ。
「おうおう、お猿の分際でよー。ケンカ売ってんのかー?」
「ちょっとアオイ、係員さんに叱られるわよ」
いーや、ここは黙ってられないね。畜生にはちゃんと上下関係ってもんをね、わからせてやらないといけないんだよ。
もう乗り込んでやろうかね?
「おらーっ! こんにゃろー、こっちこいやー!」
「マズいですよ、葵」
「葵姉はん、うるさい」
お、逃げて行ったね。弱っちいね。
「このお猿がよー、ボスのくせに怖気づきやがってよー。おらーっ!」
「なにしてるのよ。ほら、行くわよ」
「がははっ、私のほうが格上だってわかったっぽいわ。二度とさからうなよ、こんにゃろーが!」
「葵、ほかのお客さんが見てますから」
知ったこっちゃねーわ。こっちは人間様の尊厳がかかっているんだよ。お猿になめられていいわけねーわ。
「……葵姉はん、動物に嫌われとる?」
「いやいや。そんなことはないよ。ツバキったらさあ、そんなはずはないって」
嫌われるなんて、そんなことある?
たぶん、今日は機嫌が悪かったんだよね。畜生どもにだって、そんな日はあるよ。
とにかく次だよ、次。もっとかわいくておとなしい動物を見に行こう。
今度こそ、癒しの時間になる。そのはずだよ。
お休み最後の日を、超充実した一日にするんだよ。
気を取り直していこう!




