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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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まさかのライバル出現?

 サブクランが動き出し、うちのパーティーは神楽坂ダンジョン下層でいい感じになってきた。

 これでランキングリセットされたら、いよいよ駆け上がる時だ。準備は万全で気合が高まるね。


 私たちはマジでランキング上位を目指しているから、6月からは忙しくなる。


 そんなわけで、6月に入る直前はちょろっと続けてお休みすることにした。

 去年のこの時期は交流会で、あちこちのクランにおでかけしたのがなつかしいわ。

 今年の交流会もちょっと気にはなるけど、スルーすることに決めた。


 私たちは集中して、ランキングをがんばる。交流会に行く時間があったら、ダンジョンで稼ぐんだよ!


 さて、せっかくのお休みだからね。

 みんなで遊びに行くのもいいけど、ちょうど休みが同じになった夕歌さんに会いに行く。しかもケーキバイキングだ!


 ふほほっ、楽しみだね。



 午後の早い時間にやってきたのは、中野のカフェだ。

 夕歌さんが持っていた割引券で超お得になるはずなんだよね。お得感があるとより楽しいからね、ありがたや。

 待ち合わせのお店の前に行ったら、夕歌さんがすでに待っていた。


「久しぶりね、葵ちゃん」


 会うのはムショから出たあとで、あいさつしに行った時以来かな。そんなには経ってないと思うけどね。

 それにしても夕歌さんのいつもの笑顔を見ると安心するわ。


「夕歌さん、おいすー! お昼抜いてきたからさ、めっちゃお腹減ったわ」

「ふふ、私も。ケーキ以外に軽食もあるみたいよ」

「おー、いろんなのがあるっていいね。制覇する勢いで食うかな」


 さっそく中に入って席に案内されたら、ここからバイキングの始まりだ。座ってる暇なんてない。

 まずは看板メニューをいただきだよ。ショーケースに並ぶケーキたちが、私を呼んでいる気がするわ。

 ほうほう、どれも美味しそうだね。これと、これと、これと……なんと、これもほしいわ。うおっと、こっちも美味そう!


「取りすぎじゃない?」

「ちっちぇーし、大丈夫だよ。よゆーよゆー。あとで軽食? そっちも食べるし」


 ミニサイズのケーキをお皿いっぱいに乗せて、席に戻った。

 夕歌さんはたった3つだけしか取ってない。絶対、食い足りないだろ。

 あ、そうか何回もおかわりする気だね? あとから新商品とか出てくるかもしれんし、様子を見ながら取るのもアリだね。


「それで葵ちゃん、最近はどう? 神楽坂ダンジョンは盛況みたいだけど」


 洋梨のタルトと紅茶がいい感じで合うね。うん、うめーっす。


「盛況? まあ、毎日めっちゃ混んでるよ。朝っぱらからさあ」

「そんなに?」

「うん。でも私たちったら、いい感じだよ。もう第三十三階層まで進んでるからね。この調子で、ガンガンいってやるわ」

「雪乃から聞いてるけど、相変わらず凄いわねえ。でも葵ちゃん、もしかして知らない? 神楽坂ダンジョンていま、注目の的になってるのよ」


 ほーん、そうなんだね。すげー混んでるし、そんな感じはするかな。


「あ、もしかして。将来有望な私たちが通いまくってるから?」

「それもあるけど、大ニュースがあったじゃない。少し前に『東京ダンジョン探索旅団』と『紅の魔法愛好会』の合同チームが、ついに第五十階層に到達したの」

「おあー、なんか銀ちゃんとマドカが、そんなこと言ってたね」


 うっすら覚えてるわ。


「知らん人たちだけど、第五十階層ってマジすごいね」

「そうね。ダンジョン下層のさらに先、秘奥と言われる領域よ。日本では天剣、紫雲館に続いて、3つ目になるわ」

「すっごいねー」


 でも私だって、そのうちには行くもんね。未来のいつかには!


「神楽坂は元々日本有数の人気ダンジョンだけど、それでまた注目されてるの」

「どうりで混みまくってるわけだ。もう慣れたから、あんま気にならんけど」


 並ぶのは受付だけだし、雑談してれば割とすぐ順番がくる。ダンジョンにさえ入っちゃえば、誰もいないから気にならんし。


「人が増えると問題も多いんじゃない? 管理所経由で、そういう話は耳に入ってくるわよ?」

「変な奴は前からいるよ。だからそれも気にしてないわ」

「そんなもの?」

「そんなもんだよ」


 いちいち相手にしないからね。それに警備の人が増えてるからか、騒ぎが起こってもすぐに収まる感じだ。

 管理所の人たちも、結構がんばってくれてるね。



 夕歌さんがケーキのお代わりを取りに行って、私は味変でサンドイッチでも食うかな。

 肉と野菜がモリモリのサンドイッチを取って戻ったら、夕歌さんがお茶を注いでくれた。

 ほうほう、なかなかのサンドイッチですな。ケーキ以外も美味いわ。


「あ、そういやさ。さっきの『紅の魔法愛好会』だっけ。そこにあの……なんだっけ、マドカの知り合いが入ったんだよね? アイドルハンターの小娘。そいつらも注目されちゃってんの?」

「フロレゾと高千穂さんのことね?」

「そうそう、その小娘だよ」


 天剣と一緒にやってたみたいだけど、天剣が終わっちまったからね。

 紅のなんとかってクランの子分になったよ、みたいな話は聞いた気がする。


「聞いてないの? フロレゾも注目されてるわよ。それというのも紅魔会の庇護下に入って、本格的に活動を再開したらしいから」

「本格的? アイドルの?」

「ハンターとしてよ。高千穂さんも含めてね」


 ほーん、労働するのはいいことだよ。マジメにやってんのかね。


「あれ、でも『ベリーハードモード』のせいで、そこらのダンジョンには勝手に入れないんじゃないの? ムズくね?」

「それが紅魔会管理下の専用ダンジョンで活動しているらしいのよ」


 なるほど、それなら問題ないね。

 あちこち好きには行けないけど、変なダンジョンじゃないならバンバン労働できるよね。


「がんばってんだねー」

「それどころじゃないわよ。紅魔会に匹敵する勢いで注目されてるんだから」

「え、そうなん? なんで?」

「天剣の庇護下にあったことで、それが悲劇のヒロインみたいに扱われてるのよ。彼らに体よく利用されたって感じ?」


 うーん? そうだったのかな。わからんけど。


「紅魔会の元での活動ということで、次々とスポンサー契約を結んでいるらしいし、なによりアイドルハンターとしての配信活動が大人気なのよ。視聴者数をどんどん伸ばしてるみたいよ」

「よくやるねー」


 隠したいスキルがないなら気兼ねなくやれるよね。

 まあ私はしょぼい奴らの配信なんか見てもイライラしちまうから、話題になってようがたぶん見ないわ。


「葵ちゃんもクランランキングの上位を目指してるんでしょ? 油断してるとフロレゾに負けちゃうわよ?」

「いやいや、さすがに負けねーわ。私たちのほうが、ずっとずっと超強いし」


 もう全然、実力が違うわ。知らんけど、攻略中の階層だってこっちのほうがずっと先に進んでるよね?

 まさかあんな小娘に負けないよね?


「それが紅魔会の専用ダンジョンは、特殊な環境だけあって高価なアイテムがドロップしやすいらしいのよ。紅魔会が貸与する特別な装備がないと厳しい環境らしいのだけど、フロレゾはもちろん借りられるってわけ。ランキングはダンジョンから獲得した物資の売却金額と、スポンサー収入の合計で決まるのよ? 結構、いいところまで行きそうじゃない?」


 マジかよ。ずるいだろ。

 あいつらと勝負するわけじゃないけど、負けちゃったらちょっとこどろじゃなく悔しいわ。想像しただけで腹立つわ。


「うおーっ、負けらんねー!」

「膨らみ続けるスポンサー契約、ドロップしやすい高価なアイテム、それに『ベリーハードモード』では高品質魔石もドロップしやすいわね」

「でも階層は私たちほうが深いよね? そっちのほうが断然、魔石は高く売れるよ」

「葵ちゃんたちの場合、その点は有利になりそうね」


 うちはスポンサーとかいないし、神楽坂だとホントはマジックバッグが高値で売れるはずのに、私専用になっちゃうから意味がない!

 いまの階層よりもっと先に進んで、いい感じの稼ぎスポットが見つかるといいな。

 小娘どものクランなんかどうでもいいっちゃどうでもいいけど……いやー、ちょっと負けたくはないわ。


「いっちょまあ、がんばるかな」

「ところでこのあとはどうする? お買い物でも行く?」

「買い物かー。あ、そうだ。暑くなってきたし、新しい帽子とかほしいわ。直射日光やばいよ」

「じゃあ私が見立ててあげようか。葵ちゃんの服装ならそうね……」


 よっしゃ。美味しいもの腹いっぱい食べて、お買い物!

 ランキングに向けて、しっかり英気を養うぞ。

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