もうひとつのクラン!
サブクランの名前かー、どうするかな。
花園のクランマスターとして、もうちょい前から考えておけばよかったわ。
「うおー、いざ名前ってなると結構ムズイね」
「基本的には親クランとの関係がわかる名称が良いと思います」
「似た名前ってこと?」
「そうですね。似た名前か、花園やオルタナティブのワードを取り入れるのも一案でしょうか」
なるほど。絶望はちょっと違うから、取り入れるならそのふたつかな。
「あ、でもオルタナティブは花園のクランメンバーの証でさ、フォーチュン・オルタナティブから取ったんだよね。サブクランの人にあの宝石はあげないから、オルタナティブは使えないわ」
「絶望もなしだろ? 略称で『絶望』がどうのって言われるだろうからな」
「そうすると花園だけになるわね。本来はうちが付けるはずだった『絶佳の花園』にする?」
うーん。
「いい名前だけど、私たちの使い古しみたいになっちゃうわ。どうせなら新しいのにしようよ」
「そう? まあいい案が出るなら、それに越したことはないと思うけど」
「やっぱさ、すごいカッコいい名前がいいわ」
サブクランだからこそカッコよくないとね。しょぼかったら二軍感あるし、入ってくれる人だって嫌だよね。私だったらしょぼい名前の時点で、入りたくなくなるわ。
「たしかにな、クラン名ってクランのイメージに直結するもんだしよ。だが、花園か……ガーデンとか、言い方を変えてみる手はあるか?」
「言葉を変えてみるのは良い案だと思います。幅が広がりますね。葵さんの望む、カッコいいという条件を満たすとなると、また別の表現のほうが相応しいでしょうか」
「ガーデンか。庭園や箱庭、遊園、あるいはもっと飛躍して楽園か?」
ほうほう、あれこれある感じだね。でもまだ超カッコいいって感じはしないかな。
「楽園と言えば、パラダイスとかユートピア、理想郷とか?」
「おー、さすがマドカ。なんかいい感じになってきたかも。それともっと勇者感がほしいわ。私たちったら、すっごい戦士のクランだしね! サブクランにもそんな感じがほしいわ」
「……戦士の理想郷ですか。北欧神話か何かで、そうしたものがあったような」
「ヴァルハラのことか? アタシは詳しく知らねえが、雪乃なら知ってそうじゃねえか」
え、なんかカッコいいワードが飛び出してなかった? なんと?
「私も詳しくは知りませんが、たしか……勇敢な戦士の魂が戦乙女によって導かれる、それがヴァルハラという場所だったと思います」
「なにそれ、カッコよくね? 勇敢な戦士の魂が行く場所? マジかよ」
めっちゃカッコいいわ。ヴァルハラかという言葉の響きもカッコいいし。
「ただ、海外の著名なクランで『ヴァルハラ』というのがすでにありますね。日本にも同様の名前のクランがあったと思います。大手ではなかったはずですが」
「ええー、なんだよ。まあカッコいいもんね、そんな名前のクランはいくつもあって当然かー。でもやっぱ、勇敢な戦士の魂が行く場所とか、めっちゃカッコいいわ」
そんな感じのクラン名にしたいね。
「もうそのままでもいいんじゃねえか? クラン名『勇敢な戦士の魂の理想郷』とかよ」
「語呂が悪いわね。そうね、勇敢な戦士の魂は……英霊とかどう?」
「そもそも魂や英霊では死者を意味してしまいますが、そこはどうなのでしょう」
「言えてるな。英雄のほうが妥当か?」
「カッコよければいいんだよ。カッコよければさあ!」
超絶カッコいい名前のクランなら、入りたいって人もドバドバ増えるはず。
「……英霊の理想郷、英雄の理想郷?」
「どっちもいい感じかな? でも英霊のほうがカッコいい気がするわ」
「花園にもう少し近づけて、楽園ではどうだ」
「クラン名『英霊の楽園』か? サブクランにしてはあれだな、さすがに格好よすぎねえか?」
なんかどんどんいい感じになってね? みんなすごいわ。
「まゆまゆ、カッコよすぎるくらいでちょうどいいんだよ。よっしゃ、でももうちょっとなんかほしいね」
「付け足すってこと? 英霊の楽園でいいじゃない」
「私たちのサブクランなんだからさ、超絶カッコいいくらいじゃないとダメだよ。だから待ってね、なんかいいのないか調べてみるわ」
ほぼみんなに考えてもらっちゃったからね。最後のところくらいは、私が自分で考えたいね。
スマホでちょちょっと、なんかないかな。やっぱ付け足すなら、花園みたいにオルタナティブ的な言葉を付けたいよね。なんか似たようなのはないかなっと。
「あ、これよくね? アンビバレンスだって」
「相反する感情、あるいは両面性のような意味でしたか? 二者択一や代替などを意味するオルタナティブと、あまり関連しないように思いますが……近いと言えば近いでしょうか」
そうそう。近い感じがしなくもない。
「すると『英霊の楽園アンビバレンス』がクランの名前になるのかしら」
「え、カッコよくね? めっちゃいいよね?」
あらたまって人が言ってるのを聞くと、すごいカッコいい感じするわ。
なんか『絶望の花園オルタナティブ』と同じくらいカッコいい気がしてきたわ。
「随分とまた、目立つ名前な気がするわね」
「いいんじゃねえか? 注目されるなら、サブクランの奴らだってやる気が出るだろ」
「私もいいとは思うが、サブクランに直接関わる詩乃さんには、あらかじめ意見を聞いたほうがいいだろうな」
「その点に関して詩乃からは、皆さんで決めてほしいと言われています。余程おかしな名称でなければ、反対しないと思いますよ」
おー、それならよかった。きっと喜んでくれるよね。
あれ待てよ、そういえば。
「雪乃さん、クランマスターって誰がなるの? 詩乃さんはサブクランマスターなんだよね?」
「代表にはスカウトした女性のハンターになっていただく予定です。クランの設立要件のひとつに、代表はレベル20以上であることが必須となっていますので、どうしても必要な人材でした。もし相応しい人が見つからない場合には鷹宮さんを考えていましたが、彼の場合はずっと残るとは限りませんので」
そういやそうだ。クランマスターはレベル20以上じゃないといけなかったね。
「事務的なところは詩乃さん、指導者としての役割は鷹宮とその元仲間の轟が行う。代表の役割としては、当面は名前だけになるな」
「ええ、銀子さん。実情としてはそういうことです」
「とにかく、これでクラン設立の要件は全部満たしたってことか。レベルの足りたマスターと、そのマスター含めて最低5人の所属メンバー、クランの拠点、あとはクラン規約と初期資金の準備だったよな」
よく覚えてるね、そんなこと。
「メンバーさえ集まれば、あとはうちからサポート可能です。拠点は前にもお伝えしたように、練馬駅の近くに準備しました。規約は花園のものを流用していますし、初期資金は問題ありません」
「いよいよサブクランの設立ね。しばらくしたら、合同でダンジョン探索するのもいいわね」
「葵の『ウルトラハードモード』をどうするかという問題はあるが、将来的には練馬ダンジョンなら問題はクリアできる。あそこに挑むのは、当分先のことになるだろうが」
私のウルトラハードなスキルは秘密だからね。サブクランのメンバーには明かせないよ。
まあほかになんかいい方法があれば、一緒にダンジョンアタックしてみたいね。
いやー、楽しいことがいっぱいありそうだわ。
それにしてもクラン『英霊の楽園アンビバレンス』かよ。めっちゃイカした名前じゃね?
すごい強そうなクランな感じするわ。名前に負けちゃわないよう、がんばってもらわんとね。
新入りたちよ、超がんばって超絶強くなれよ!




