新しいことが次々起こる日常!
たくさんの炎の犬に、みんなそれぞれ攻撃だ。
ツバキの結界のお陰で、本当はたぶん素早い犬の動きがのろく感じる。でも前の階層よりはパワフルな感じはする。
炎の犬の激しいタックルを『カチカチアーマー』にぶつけて弾き返してやったと思ったら、それを乗り越えるようにして別の犬が飛びかかってきた。
やっぱ前の階層よりパワフルだし、にぶくても明らかに動きがいいね。
「おらよっと、『ヒエヒエハンマー』!」
飛びかかりを避けて顔面にぶち込んでやった。
いい手応えだったのに、これだけじゃ倒せなかったよ。やっぱ防御力高くなってるね。
それと炎の犬だから冷え冷え攻撃には弱いかと思ったのに、そんなことはないっぽいのかな。
「でも効いてはいるよね!」
よろけた犬の顔面を思いっきり蹴っ飛ばして、また襲いかかってきた別の犬をハンマーで殴って吹っ飛ばした。
うん、殴った後に蹴った犬は倒せた。一撃で倒せなくなっちまったけど、まあちょうどいい階層のモンスターってこんなもんだよね。
「うおっと」
今度は左右から同時に犬が飛びかかってきちゃったよ。なかなかやるね。
「全然、当たらんけどねー。ほいよっと」
ちょろっとだけ動いて避けたら、犬同士が正面衝突しそうになったタイミングで、下からハンマーを振り上げる。まとめて2匹のあごをドカンとぶっ叩いて吹っ飛ばしてやった。
「とーうっ」
ジャンプして吹っ飛ばした犬の背中に着地! 弱点を踏み抜いちゃうよ。
お、もう1匹のほうは、まゆまゆが引き受けてくれたみたいだね。お任せだよ。それじゃ私は後ろにいるボスをぶっ倒すかな。ボスはどのくらい強いかね?
ダッシュでボスに向かったら、ボス犬は上に向かって遠吠えみたいなポーズをした。声は出てなかったけど、なんかしたよね?
まあいいや。
「おりゃー」
普通にハンマーを叩きつけようとしたら、ささっとバックして後ろに避けられた。
やるじゃんね。私の普通の攻撃は、そこらのザコモンスターには避けられないくらい超すごいのに。
でもこれで終わりじゃないんだよね。
超重いハンマーだって完璧に制御できちゃう『念動力』で、ピタッと止めたら追いかけダッシュだよ!
おー、ボス犬ったら逃げずに正面からタックルかよ。いいね!
ところがどっこい。私のほうがずっと強いんだよね。ボス犬はすごい迫力あるけど、それだけなんだよね。
でっかい牛みたいな炎の犬の突進を、上から振り下ろしたハンマーで地面に叩きつけてやった。
これだけで倒せないことはわかってるよ。
すぐにハンマーを戻してちょろっとジャンプ!
「くらえーい、『ヒエヒエハンマー』!」
今度は弱点の背骨の真ん中、これでどうだ!
「ふいー、やったわ」
モンスターは光に変わったけど、手下の犬よりもさらに防御力が高いっぽかった。なかなか硬いね。
階層をひとつ進んだらモンスターの強さも上がるけど、これはわかりやすいかも。次はもっと強くなるんだよね?
「片付いたわね。アオイ、大きめの犬はどうだった?」
ちょっとだけ時間かかった気がするけど、無事に全部倒せたね。
「さすがは群れのボスだよ、ほかのより強めだったわ。あ、そういや最初にさ、なんか遠吠えみたいなポーズしたんだけど、あれなんだったんだろ」
「アタシも見たが、あれは群れの仲間を集合させるもんじゃねえか? 遠吠えのポーズの直後によ、犬っころが葵のほうに向かおうとしてやがった」
「だから急に動きが変わったのですか。もちろん、向かわせることなく倒しましたが」
おー、なるほど。みんなが阻止してくれたんだね。
「私としては別の群れまで集まらないかが気になった。どうやら自身の群れにしか効果がないようだったが」
「葵の『ウルトラハードモード』はともかく、通常のダンジョンでこういったモンスターの情報はねえのか?」
「群れのボス、あるいはリーダーが存在するケースはある。ただ、ウルトラハードとの具体的な差異がいまのところはわからんな」
「ところでこの階層の場合って、群れのボスは後回しにしたほうがいいんですかねえ?」
ほうほう。どっちを先に倒したほうがいいとか、そういうのはありそうだね。
「群れの配下を連携させる能力があるのよね。その群れを先に潰すか、先にボスを狙うか……一長一短ありそうね」
「さっきの戦闘を振り返ると、先に群れを潰したほうがよさそうに思えます」
「素直にやるならそうだろうな。だが、これは『ウルトラハードモード』の環境だ。ボスの能力が群れを操っているだけとは思えん。おそらくだが、あのボスは群れを統率しながら、何かバフのような効果を与えている可能性はないか?」
「それはありそうね。モンスターの能力を確認することは、この先のためにもやっておいたほうがいいと思う」
犬っころ、ザコモンスターの割にはちょっと強めだったしね。でもこれがダンジョン下層のモンスターなんだよって言われれば、それはそうかもって思うっちゃうわ。
「ここ、前の階層よりはモンスターの数多いし、稼げるスポットなのとちゃう?」
「たしかに、モンスターの数と戦いやすさの面で考えれば、いまのところは最も効率がよさそうだ」
「まあな。次の階層に進むには気が早いしよ、しばらくここをメインに考えてもいいな」
第三十三階層には転送陣がないから、行きも帰りも第三十階層を経由しないといけない。
「いいんじゃない? あたしは賛成よ。アオイは?」
「そうだね。ちょっと移動がめんどくさいけど、とりあえずの稼ぎスポットにはなるかな?」
「レベル30の我々としては、この階層でも十分以上だ。6月のランキングリセットが入ったタイミングで、もし先に進んでもいいと思えたらまた考えよう」
そうそう。そのランキングで上に行きたいから、がんばろうって話なんだよ。
あとは練馬ダンジョンにもちょこちょこ入りつつ、悪魔のモンスターにもなれていければいいね。
「では今日は時間まで、この階層で頑張りましょう! 次は私も群れのボスと戦ってみたいです」
「じゃあその次はあたしね」
「おいおい、たまにはアタシにも美味しいところをいかせろよ」
「うちもたまにはやりたい」
「いくらでも機会はある。順番にやればいいだろうが、私もどの程度の『収束充填』で倒せるか試してみたいな」
みんなやる気だね! めっちゃなれたら、バラバラに戦ってみるのもよさそう。
なんだかんだ、この犬っころの階層は楽しめるかもしれんね。
今日もいっぱいダンジョンで戦って、いっぱい稼ぎまくった。
戦利品の魔石がちょっと大きいし、ダンジョンの下層ってやっぱすごいわ。いくらになるんだろうね?
ダンジョンから出ての移動中。これからみんなでメシを食って、まったり自由時間かと思いきや、雪乃さんから集合がかかった。
雑談で済むことならメシの時に話してくれるから、こういうあらたまった感じだとマジメな話かな?
クランハウスに戻ったら、いつものようにロビーに集合だ。
「雪乃さん、またややこしい話?」
最近はあれこれめんどくせー話が多くて嫌になっちゃうよ。
「いえ、サブクランに進展があったのでその話です。難しい話にはならないと思いますよ」
「そっかー、よかった」
「人数が集まったんですよね。クランの設立要件としては最低5人ですが、どうなりました?」
マドカが雪乃さんにあれこれ聞いてくれている。
「まずは9名からスタートです。とは言いましても副代表には詩乃を据えますし、鷹宮さんとその紹介によって加入予定の轟さんは教育係です。なので実質6名ですね」
ほーん? 雪乃さんの部下一号の詩乃さんがサブクランマスターなんだ。
「順調ですね。今日はその経過報告ですか?」
「それもありますが、大事なことがありまして。サブクランの名称です。皆さんで考えていただき、最後はやはり葵さんに決めてもらうのがよいと思っています」
「おー、名前! そいつは大事だね!」
「え、最後はアオイにですか?」
「大丈夫かよ。アタシら『絶望の花園オルタナティブ』だぜ?」
「ほんまは『絶佳の花園オルタナティブ』になるはずやった」
そんなこともあったね。なつかいしわ。
よっしゃよっしゃ、私がいいクラン名をつけてあげようね。なんてったって、私たちのサブクランだからね。
やっぱ超絶カッコいいのがいいわ。もう絶対!




