深くなればなるほど……?
銀の骨の体から、炎をまとった体になったでっかい犬。
迫力あるし、結構カッコいい。
「うおー、すごいね」
変身したモンスターが、2匹まとめて襲いかかってきた。
パワフルだけど速くはないね。ツバキが広げた結界の中だから、だいぶ動きがにぶい感じだ。
炎をまとったでっかい犬2匹のダブルタックル!
普通に避けてもいいけど、ここはスキルを使ってみるかな。
1匹は『ぬるぬるアーマー』でにゅるんと防いでやって、もう1匹を相手してやるかな。
考えながら、ぬるぬるのシールドを展開。同時にタックルに合わせてハンマーを顔面に叩き込むよ!
「どりゃーっ、うえ!?」
炎のタックルをハンマーでドカンとはね返したと思ったら、にゅるんと防いでくれるはずのシールドが燃えちゃったよ。
本当ならシールドで通せんぼしたはずの犬が襲いかかってきた。
振りかぶったハンマーを戻すのは間に合わないね。
でも全然大丈夫。ハンマーから手を放して、後ろ向きに宙返りしながら炎の犬を蹴っ飛ばしてやった。
ハンマーでドカンと殴った犬は光に変わりつつあったし、蹴っ飛ばした犬も豪快に吹っ飛んでる。
着地したらささっとハンマーを拾って追撃だよ。
おりゃっとジャンプ攻撃を決めてやったら、それで終わりだ。
「なるほどー。炎の犬、こんな感じか」
まさか『ぬるぬるアーマー』が燃やされちゃうとは思わなかった。普通に火に弱かったんだね。
これから防御する時は『カチカチアーマー』と上手に使い分けていかないとだ。
「お、あっちも終わったね」
残りの犬はリカちゃんが引き付けつつ、マドカの散弾銃と沖ちゃんの刀で3匹仕留めた。連携してちゃんと弱点を攻撃すれば、いい感じに倒せそうだね。普通に殴ると結構硬いけど、特に強くはないかな。
みんなで集まって、いまの戦いを振り返ることにした。
「ダンジョン下層に入ってのまともな戦闘は、これが初めてと言っていいだろう。所感はどうだ? まだ余裕がありそうに思えたが」
「三鷹ダンジョンの天使型モンスターのほうが手強いわね。ただ神楽坂ダンジョンで考えれば、中層とはモンスターの強さが確実に違ったわ」
「はい。結果としては圧勝でしたが、モンスターの攻撃と防御はかなり強くなっています」
そんな感じはするね。神楽坂ダンジョンの骸骨くんはモンスターのくせに戦闘技術が高かった。でも下層に入ってからはカッパと犬になっちゃって、パワーと骨の防御力がずっと高くなった気がした。
強さの系統が変わっちゃったね。私としては技術で戦う骸骨くんのほうが好きだわ。
「アタシはスケルトンが相手だと、状態異常系のスキルが効かねえ。いつもの『耐性喰い』は効果あるが、それだけだ。次はアタシも前に出るか、周辺警戒はこっちでやってやる」
「そうだな。さっきは戦闘が起こっていても別の群れは無反応だった。攻撃するか特定の範囲に入らなければ、おそらく無視しても構わないのだろうが、念のため次はまゆが警戒に当たってくれ」
「うちも呪符、効くか試したい」
「それも試そう。モンスターの群れはおおむね6匹前後だ。梨々花が正面で受け止めて、ひとり1体ずつを目安に仕留めるぞ」
カッパくんの階層はスルーしちゃったから、この階層でもうちょい慣れてから次に行きたいね。
「それと葵、スキルで作ったシールドが燃やされていなかったか?」
「銀ちゃん見てた? そうなんだよ。私のぬるぬるしたシールドがさ、燃やされちゃってびっくりしたわ」
ホントにね。
「燃やされた? そんなことがあるのね」
「思わぬ弱点があったんだな。まあ早めにわかってよかったじゃねえか」
「それはマジでそう。一応、次も試してみるわ」
もしカッパくんのマグマ攻撃の時に、こんな弱点が判明してたらやばかったわ。あぶねー。
あ、まさか『カチカチアーマー』は燃やされないよね? 前の時は大丈夫だったと思うけど、炎の犬でも試してみるかな。
「葵のあのシールドは特別火に弱いのかもしれんな。梨々花の『拡張魔力装甲』は異変なかったか?」
「わたしの盾は大丈夫でしたねえ」
「よっしゃ、もう1回やってみようよ」
「ではやるか。次の群れに向かう」
そんな感じで次から次へと群れをなぎ倒していったけど、結構余裕だった。
ダンジョン下層に入ったのに、私たちったら全然やれてしまうわ。
たしかにモンスターはワンランク上になった感じがするのに、この余裕の感じ!
たぶんメタル系モンスター出まくりダンジョンのお陰だ。超強かった天使のモンスターに慣れちゃったから、そのせいだね。
「ねえねえ、次の階層に行こうよ。このままじゃ、つまらんわ」
マドカといい感じの連携でモンスターを倒したところで言ってみる。
「そうね。正直、あたしもそう思うわ。みんなはどう?」
「私も次の階層に進んでいいと思います。この階層でやれることはまだありますが、稼ぎやすい階層を見つける目的もありますし」
「いいんじゃねえか? ダンジョン下層だからって、慎重になりすぎてもよくねえだろ」
「通常の神楽坂ダンジョン下層は、しばらく動物型のスケルトンが出現する。この『ウルトラハードモード』の環境でも、その傾向は変わっていない。おそらく次の階層もそうだろう。犬型にはもう十分に慣れたからな、頃合いかもしれん」
ダンジョンの下層は難しいよって、聞いていたからね。ちょっとビビりすぎてたかもって思うわ。
でもさすがにねー。もうちょい手応えってもんがほしいわ。
炎の犬モードになったモンスターはちょい強めだとは思うけど、群れでもそれほどの数じゃない。ひとり1匹倒せば終わっちゃうからね。
「ほいじゃあ、次だよ次! どっち行ったらいいの?」
「ここからだと東方面だな。距離があるから、群れを倒しながら向かうぞ」
「行きましょう!」
そんなこんなで、第三十三階層!
またまた到達階層の更新だ。私ったら更新しまくりだわ。すごくね?
景色は相変わらずの針の草原。つまんないわねー。江戸の町のほうがまだよかったわ。
でもモンスターは、ちょっとだけいい感じになったっぽい。
「同種のモンスターに見えるけど、群れの数が増えたわね。単純に倍くらいになったかしら?」
「数はそうですね。ただ、ひと回り大きい個体が混ざっていませんか?」
「沖ちゃんマジで? よくわかるね」
うーん? 大きいかな、あんま変わらんくね?
「距離があるからわかりにくいが、各群れに1匹少し大きめの個体がいるな。群れのボスのようなモンスターか?」
「群れにはボスがつきものだからな。そうだとすりゃあ、さっきまでとは動きが変わるかもな」
いいねいいね。階層が深くなった分だけ骸骨犬は強くなるはずだし、ボスはもっと強いよね。数も増えて、やっぱいい感じじゃない?
「北にいる群れが近いな。引き寄せるのではなく、こっちから行ってみるか。梨々花」
「うおー、早く戦ってみたいね。リカちゃん、先頭で頼むよ!」
「じゃあ行きますね」
白くてカッコいい鎧姿に、白くてでっかい盾を持ったリカちゃんは超重装備だ。それでも軽々と走れちゃうのがなんかすごい。
そんなリカちゃんにみんなで続いていったら、群れが反応した。
あ、近くで見たら、たしかに1匹だけちょっとだけでかいわ。あれがボスだね。
「前の階層よりも、確実に手強いわよ」
「はい、圧力が違います」
「まどかさん、スポットライトのスキルをお願いしますー!」
緊張感が高まってきた。みんながいつものスキルを発動して、戦いの準備はオッケーだ。
骸骨犬の群れのほうもやる気だなって思っていたら、いきなり火を吹いて炎の犬モードになった。
ほうほう、最初からなんだね?
それで準備完了なのか、ボス以外の犬っころが一斉に向かってきた。
なんかボスが群れの後ろから操ってるっぽい感じがするね。
統制の取れた動きのでっかい犬のタックル。でも不動のリカちゃんには効かないよ。
弾かれては次の奴のために、きちんと横に転がって移動する犬っころたち。こうやって見てるとなんか面白いね。
でも黙って見ているだけじゃないよ。そんな横に避けた奴には私たちが攻撃だ!
がははっ、どんなに群れようがボスがいようが、関係なくやっちまうもんね。
やっと楽しくなってきた感じするわ!




