打ち破るべき地味な道のり
みんなで集中して、金ピカ騎士を倒し続けた。
倒しては次、倒しては次と繰り返して、ちょっとずつ強くなる。地道!
「ういー、今日も働いたね。もう夕方じゃん」
ダンジョンの中にいると時間の感覚がわかりにくい。こまめに気にしないと、いつの間にか夜になっちまうよ。
「もうそんな時間ですか」
銀の恐竜くんは無視して、金ピカ騎士をずっと狙った。私としては結構いい感じになった気がする。
「今回だけで20体以上は仕留めたかしら。徐々に慣れてはきたけど、あたしはまだまだね」
「金のメタル系とやり合うには、単純に火力が足りてねえな。こいつはどうしょうもねえが」
「装備の更新も現状以上にすることは難しい。基本的には戦い方の工夫は続けるとして、あとはレベルアップによる火力の増加を期待するしかないな」
地味だけど、そんなもんだろうね。
みんなのレベルが25になれば、また新しいスキルとかで強くなるかもしれないし、それに期待だ。私ももっとパワーアップしたいよ。
「うち、お腹空いた」
金ピカ騎士と戦うのはちょっと緊張感あるし、疲れは普通の探索よりずっとある。私もめっちゃお腹減ったわ。
「そろそろあがります?」
「いいんじゃねえか? 移動の時間もあるしよ」
「今日はなに食うかねー」
そういや商店街のラーメン屋に、新メニューあったわ。
「あ、近くにゴールドの騎士がいます。最後に倒していきませんか?」
いったん終わるってなったら気合がしぼみそうなもんだけど、沖ちゃんやる気があるね。
「よっしゃ、最後にさくっと倒して帰ろう! ちょっと行ってくる」
「あたしも行くわ」
マドカと沖ちゃんの3人でやってやる!
ちょっとだけ帰りのコースから逸れて、金ピカ騎士に襲いかかった。
盾を前に突き出すようにしながら走ってきた騎士が、私たちの周辺を広く包み結界を広げた。
これでシャキッとした感覚がちょっと弱まって、ステータスが弱体化されてしまう。
でもなれたもんで、そんなことには構わず、まずはマドカが散弾銃をぶっ放した。
普通に当ててもすごい防御力のモンスターには、たいしたダメージは通らない。だからか、マドカは足元の地面を狙って撃った。
ドカンとえぐれた地面に、金ピカ騎士がまんまと足を取られてこけそうになる。
「おりゃー、くらえ『ギラギラハンマー』!」
その間にダダッと走って近づいた私が繰り出すのは、パワーアップしたつよつよスキルだ。
立派な体格の騎士の横から、背中をギラギラハンマーしたたくさんの魔法のハンマーでぶっ叩く。
でも金ピカ騎士はこけそうな体勢なのに、体をくるっと回して盾で防御した。すごいね。
それでも私のつよつよスキルならダメージは通っていそうだし、すっごい攻撃の圧力で動きを封じることはできる。
さらにマドカが散弾銃をドカドカ連射して、こけた騎士に覆いかぶさるようにあった金の盾をどかしてくれた。
そこをすかさず沖ちゃんが攻撃だ。
「いきます! 『黒雷閃刀』――『刀影斬撃』ッ!」
いいね。最後だから消耗なんか気にしない攻撃だ。
黒い雷みたいな沖ちゃんの最強技に加えて、私のギラギラした魔法のハンマーみたいな、影っぽい魔法の刀が追加で出てきて攻撃した。
そこそこ強めのモンスターだってこの攻撃だけで終わりそうなのに、メタル系で防御特化の金ピカ騎士はしぶとく生き残っている。
「とりゃー、『メラメラハンマー』!」
「まだまだですっ、『疾風穿刀』ッ」
ドカドカッとタコ殴り!
私たちったら、いまの時点でもかなりいい感じだけど、まだまだ伸びると思う。伸びしろありまくる気がするわ。金ピカ騎士はちょうどいい相手な気がするね!
おりゃー、私たちの糧になりな――!
「ふいー、終わったー」
やっぱ硬すぎる。いろんなパターンで、最初にこかす戦法を使ったら割と余裕なのに、この硬さだけは面倒だね。
普通にめっちゃ強いし、練習相手にはちょうどいいけど。
ただ、これだと銀のモンスターをぶっ倒しまくったほうが、稼ぐ効率はよさそうだよね。その辺のことも考えないとだ。
「行くわよ、アオイ」
「うん、今日の労働に感謝を!」
また明日からどうするか、みんなで考えてみよう。そうしよう。
いったんクランハウスに戻ったら、雪乃さんも連れて商店街に繰り出した。
今日はやっぱラーメンの気分だわ。
「濃魂軒にしようよ。新メニューやってるからさ」
「アタシもいまは、あの塩気がほしいな」
最近はちょっと人気があるらしい、濃魂スペシャルが食えるラーメン屋だ。背脂たっぷりの超ドロドロスープが特徴で、疲れた労働後にはうってつけの美味しいラーメン屋だよ。
ほかの希望が特になかったから、店に直行!
「おいすー、きたよ」
「あ、葵ちゃん。いらっしゃいませ!」
「いらっしゃい。奥の席に座ってくれ」
バイトの姉ちゃんは元気だね。
でも店のオヤジは相変わらず顔が怖いわ。あれで愛想よくしてるつもりだっていうのが、だいぶ意味わからん。
みんなで店の奥にある、半個室のテーブル席に座った。
「アオイ、新メニューっていうのはどれなの?」
「……メニューに書いてない?」
「ふふん、裏メニューだよ。この前、バイトの姉ちゃんに聞いたんだよね」
「そんなのあるのかよ?」
「裏メニューか。気になるな」
みんなでわいわいしていたら、バイトの姉ちゃんが注文を取りにきた。
「お決まりですかー?」
「私は例のアレ、頼むよ」
「お、アレですね?」
「そうそう。新メニューにして裏メニュー、濃魂油そばで! あ、大盛りでね」
「油そば……うちも」
「じゃあ、アタシもそれにしとくか。姉ちゃん、あとビールも」
「スープ餃子も食べたいですねえ」
「それと――」
なんやかんやと注文して、それを待つ間も楽しいものだ。
まゆまゆだけビールを飲み始めたけど、ラーメン屋で飲み物ってあんまり注文したことないわ。みんな普通にお水を飲んでいるね。
「あ、そういやさ。私がムショにいる時に、マドカが新しい仲間を探すとか言ってなかったけ? あれってどうなったの?」
ちょっと前、セーラさんと琴葉さんにサブクランを作ったらどうとか、あれこれ教えてもらったけど。仲間のことはその前から言ってたはずだ。
「前々から雪乃さんに検討してもらってはいるのだけどね」
「候補の選定は進んでいたのですが、花園が悪い意味で目立ってしまったこともありまして……」
雪乃さんがちょっと困った感じになったけど、それって私がムショにぶちこまれたからかな。ホントは私ったら、全然悪くないのにね。
「我々はクランとして強くなるという目的もある。新しい仲間は必要だ。改めて具体的に進めるべきだろうな」
「そうですねえ、せっかく紫雲館の方にノウハウまで教わりましたから」
「今後のダンジョン探索という意味でも、戦力の増強は必要ではないですか?」
「そのとおりよ、ルリ。第三十一階層から始まる下層は、複数パーティーでの探索が基本とされているわ。あたしたちは普通よりも厳しい環境の中で戦うのだから、その意味でも仲間は必要よね」
実際のところ、いまやってるメタル系モンスター出まくりダンジョンでも、ちょっと手間取ってはいるからね。
あと、いつかは攻略する練馬ダンジョンに向けても、戦力アップは欠かせないっぽい。蒼龍のおっさんから、レベルを上げろとか人数を増やせとか、あれこれ言われたことあるし。
「お先にスープ餃子10人前、お待たせしましたー」
うおっと。いい匂いだね。
「よっしゃ、小難しい話はあとにしようよ」
「そうですね。いただきましょう」
なにをするにも、まずは腹ごしらえだね。
スープに浸かった餃子がめっちゃ美味そうっす!
疲れた体にしみそうですなー。




