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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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ごあいさつと今後の話!

 私が捕まっていた間、いろんな人に世話をかけてしまったらしい。

 そんなわけで、また前のようにあいさつ回りをして数日が過ぎた。


 お世話になったごあいさつは、やっぱ大事だよね。私はクランマスターだし。

 早く普通にダンジョンに入りまくりの日常に戻りたいわ。でも、それももう少しの辛抱だ。

 今日はめっちゃ忙しくてなかなか会えなかった、セーラさんたちのところにお邪魔できる。久しぶりに会いたかったし、やっとな感じだね。


 ごつくてカッコいいSUVは銀ちゃんの運転で、あとはマドカと私だけ。

 全員で行けばよくね? と思ったけど、みんなは遠慮するらしい。別にかしこまることないのにね。


 さてと。相変わらず、ここのお庭は綺麗だし全体的に雰囲気がいい。すごい上品だし、私の文明レベルもちょっと上がった気になるわ。


「あ、おいすー! セーラさん、琴葉さん!」


 お庭まで出迎えにきてくれたのは、どこからどう見ても女優っぽい超美人のセーラさんと、秘書っぽい琴葉さんだ。


 たしか、セーラさんは『武蔵野お嬢様組』のサブクランマスターで、琴葉さんはよくわからんけど幹部とか聞いたような気がする。

 トップクランの幹部って考えると、なかなかすごい人たちだね。でも偉ぶった感じがしないのは、とってもいい。親しみやすいわ。


「葵、変わりなさそうで安心したわ」

「こんにちは、葵さん」

「いやー、私ったら前科モンになっちまったよ。でもあれこれ助けてもらったみたいで、ありがとね」


 本当は私は悪くないって、信じてくれたんだよね。

 しかも、いろんな情報を集めてくれたり、事情を知ってそうだったり協力してくれそうな人を紹介してくれたりしたらしい。

 お世話になった人たちのそういうお助けによって、私の評判は悪くならなかったみたいだ。マジでありがたいよ。


「気にしなくていいのよ。九条さんと大蔵さんもいらっしゃい」

「屋敷の中へどうぞ」


 ぞろぞろと立派なお屋敷の中に入って、まずはお茶とお菓子だ。こういうおもてなしがいいんだよね、最高っす。


「花園は挨拶回りをしていたと聞いたけど、もう落ち着いたの?」

「今日でひと区切りって感じかな。だよね、マドカ」


 春らしいイチゴのタルト、うまいっす!


「そうね。あたしたち花園はいつものペースを取り戻せそうだけど……」

「ハンター業界としては、まだ落ち着くどころの騒ぎではない。紫雲館はまさに、その渦中にあるのでは?」

「大蔵さんの言うとおりね。あの天剣が一部の政治家と癒着して、だいぶ大きな傷跡を残してくれたから。その後始末で大手クランは大変よ」


 やらかした奴らが大変なのは当然だけど、そのフォローに回る人たちも大変みたいだね。花園はまだちっちゃいクランでよかったわ。


「結局のところ、天剣はどうなるのでしょう? あれでも現状でのダンジョン攻略実績は日本1位です。解散や高レベルハンターの引退は、日本全体として考えた時にはマイナスになりそうですが」


 おお、広い目で見るといろいろあるんだね。銀ちゃんのそんな疑問には、琴葉さんが答えてくれるみたいだ。


「天剣ほど大きなクランともなれば、スポンサー契約の絡みやサブクランも含めて、関わる組織や人数が非常に多いです。一部の犯罪者の追放や代表が責任を取って終わる話ではありません。今後の先行きは不透明ですが、まずクランのイメージがあまりにも悪いのは大きな問題です」

「やはりそのまま、というわけにはいきませんか。当然ですね」

「はい、解散は免れないと思います」


 解散って、マジかよ。

 あー、でもただでさえ女子人気が低そうなのに、セクハラとかやってたんだよね。だったら挽回なんてムリか。

 うん、素直に解散したほうがいいわ。


「それでもハンターとしては実力者がそろったクランです。不祥事の内容や及ぼした悪影響から、他クランへの移籍は簡単ではないと思いますが、だからといって実力者の引退は日本にとっての損失になります。落としどころとしては、契約関係や資産、人員などを整理したうえで一度解散し、新しいクランを立ち上げ再スタートを切ることになると思います。もちろん相応の苦労を伴った再スタートになるでしょう」


 琴葉さんがまとめてくれているけど、ややこしすぎてやっぱ私にはよくわからんね。


「新しく始めると、クランランキング上位に与えられる様々な特権がなくなるのよね。スポンサー契約も難しいでしょうし、自ら抜ける有能な人員もまだ出るはずよ」


 まあ花園に関わらないなら、天剣のことなんてどうだっていいわ。

 そもそもハンターなんだから、ダンジョンで労働すればいいんだよ。そうすればメシくらい食っていけるわ。


「気になっているのですけど、フロレゾの扱いはどうなると思いますか? その、もっと言えば高千穂の扱いなんですけど……」


 あの小娘、昔のマドカの仲間だよね。ベリーハードなダンジョンにできる奴。やっぱマドカは気になるんだね。


「事実上、天剣の庇護下にあったフロレゾや高千穂さんは、別の大手クランの庇護下に入ることになります。あの『ベリーハードモード』のスキルは海外のクランから見ても特別ですから、放っておくわけにはいきません」

「紫雲館の庇護下ではない、ということですか?」

「打診はあったのだけどね。業界のバランスを考えて、うちは断ったの。代わりに『くれないの魔法愛好会』を推薦したわ」


 なんか聞いたことあるクランな気がするね。


紅魔会こうまかいですか……そうだったんですね」

「紫雲館はダンジョン攻略実績でも、天剣を追い越す勢いでした。その紫雲館が高千穂を抱えることの不公平感を嫌ったということですか」

「客観的には高千穂さんのスキルは魅力的なのだけどね。うちは葵の協力が得られるのだから、魅力よりも彼女を抱えることで生じるだろう問題のほうが気になるわ」


 あの小娘もなかなかめんどくせー立場になっちまったもんだね。私のスキルはこれまでと変わらず秘密にしよう。そうしよう。


「その紅魔会と言えば、魔法系スキルの研究に熱心なクランで有名ですね。ある意味特殊なクランですし、権力との癒着のような噂も聞きません」

「研究熱心すぎるのが玉にきずだけど、その研究の邪魔をするような存在には苛烈なクランでもあるわ。あそこは研究成果を狙った工作を仕掛けられる側のクランでもあるから、意外と頼りになるのよ」


 ほーん、セーラさんが頼りにするくらいなら、きっとそこもすごいクランなんだね。

 てゆーか、そろそろお茶のお代わりがほしいね。



 超気のつく琴葉さんがお茶を淹れ直してくれて、ちょっとひと息つけた。

 小難しい話は聞いてるだけでも疲れるわ。


「ところで花園はこれからどうするつもり?」

「え、これから?」

「そう。花園がなにをしようとしているのか、気になっている人は葵が思っているよりずっと多いのよ?」


 ほーん、そうなんだね。

 まあクランとしても武闘大会で優勝しまくったり、あちこちのダンジョンに顔を出したりで、結構目立ったもんね。


「おー、そっか。派手にやりたいところだけど、地道にレベル上げかな? 私も早く上級クラスになりたいし。あとそうだよ、クランランキングでも上位に入りたいわ。いろいろ余計なことがあったせいで、その目標を達成できてないんだよね」


 ずっと前から思ってたのに、なんだかんだあって花園はランキング的に全然だ。覚える気にならないくらい、ヘボい順位だった気がする。


「マドカと銀ちゃんは? それ以外になんかある?」


 あれ、ふたりとも難しい顔をしているね。

 私のとは別の目標があるのかな。


 悩むことはないよ。やりたいこととか目標なんて、いくつあってもいいんだからね。

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