八重する企みと囚人たち Lv.4(十二話)
暖かく、気付けば夕焼け空に変わっていた。
カラスが枯れ木の森に消えていくのを見ながらキャリーはぼんやりとしている。
(頭が働かない……今日、あたしどのくらい運んだかな?)
魔法の鞄が使えなくなってから久しぶりに一つずつ運んだので腕に感覚がなかった。
(疲れた……)
そう思いながらどさっと地面に寝転ぶ。
「はぁ、へぇ、マジでふざけんなよ……」
「リードさん、へばり過ぎです。ワザとですか?」
「そんな事ないよ。ちゃんと頑張ってたよ」
「アン、テメェは馬鹿力過ぎだろ。そのせいでこっちまで運ばされただろうが」
ガヤガヤする方を見る。
そこには和やかに話すアン、リードたちがいた。
囚人服を着ていても、楽しそうに話す彼女たちに気が引かれる。
(あたしもそっちで話したいな……)
そう思って起き上がる。
キャリーはゆっくりと彼女たちの元へ行った。
「みんなーお疲れー」
「お疲れ」
笑顔でアンはキャリーを話しの輪の中に入れる。
後ろに周り軽く抱きついた。
アシュメの時と違い、悪意を感じない。安心する。
そのまま、彼女たちの話を聞くことに。
「ねぇ、存在しない囚人って誰なんだろうね?」
「さ、さっあ、分かりません……」
サチは苦笑いを浮かべる。
「存在しない囚人って?」
ヘンリクの話を聞いていないキャリーは首を傾げる。
(どんな噂話なのかな?)
アンはキャリーを見下ろしながら教えてあげた。
話す時の顔はどこかニンマリとしていてダインに見せるのとまた違った幸せそうな顔になる。
「見つかるといいね」
話を聞いたがどうと思う事のなかったキャリーは呟く。その時、静かにしていたサチが突然、叫び出した。
「よくないですよ!」
彼女が叫ぶと思わず近くにいた三人は目を見開いた。
「サチ、お前……急にどうした?」
「い、いえ、その人にも事情があって潜伏してるんだと思うんです。だからその……探さないであげたほうがいいと思います」
慌てながらに話す。
そう言うものなのか?
キャリーは首を傾げる。
「囚人ども!」
赤髪の看守のノアルアがうるさい口を開けた。
「刑務作業は終わったんだ。いつまでくっちゃべってるつもりだ。さっさと牢屋に戻れ!」
話すに話せなくなった彼女たちは大人しく牢屋へと向かう。
「キャリーちゃん、またね」
アンは手を振って離れていった。
一人ポツリと取り残されたキャリーは漠然としていた。
そこにダインが声をかけにくる。
「キャリーさん、良かったらでいいのですが、小さな小屋に泊まって行きませんか? シャーフさんが許可してくれました」
と一つ目の門の横を指差す。
そこには周囲の石像建築と異なり木材を利用した小さな小屋にが立っている。
「明日も荷物を運ぶので、泊まる場所は近いほうがいいと思いまして」
彼は呟く。
「もちろん、あなたが良ければなんですが」
キャリーはしばし考え込んでからこくりと頷く。
「うん、ありがとう」
ダインはホッと息を吐く。
「それでは、荷物を置いて待っていてください。夕食の支度をしてきます」
彼はそう言って小屋へと向かっていた。
一人取り残されたキャリーはキョロキョロと辺りを見渡した。
この後の予定を考えていたのだ。
牢屋に戻った、アン、リードたち。
最後に幸が中に入った後、ゆっくりと牢屋の檻は再び閉じられる。
ノアルアが立ち去っていった。
疲れたと言いながらベッドに座り込むアン、リードの二人だったが入った場所から動かないサチを見て不思議がる。
「どうしたの、サチちゃん?」
アンが尋ねるとサチは檻の外をチラチラと見渡す。
彼女はゆっくりと向き直る。
「あの、お二人は"転生者"をご存知でしょうか?」
小さな囁き声で尋ねてきた。
「テンセイシャ……?」
アンは何のことか首を傾げる。
どこかの階級なのかと思った。
以前、刑務所の書庫で読んだような気がする。とリードは頭を掻く。
「あ? 知らんこともないが……あれだろ? 一度死んだ人間が記憶そのままに蘇る事だろ。他には……」
リードは大まか、本来の意味で答えてしまう。しかし、サチが言いたいのは後者の方だった。
「ここじゃない、世界から迷い込んだ人たち」
サチは胸に手を当てて尋ねる。
「もし、私が転生者だと言ったら信じてくれますか?」
「ッ! いきなり何を……まさか、いや、いや、そんな、馬鹿馬鹿しい……」
何かを察するリード。ただ、あまりにもトンチンカンの絵空事の様で笑い飛ばそうとした。
サチは俯いて思い悩んだ顔をしている。
彼女の顔色を見て、冗談で言っている訳がないと分かった。
それでも、あり得ない話だとは思っている。
「おい、おい、サチ。テメェはいきなり何言い出すんだよ?」
苦笑いを浮かべながらリードは言う。
「え? なに、どう言う事?」
この状況にアンだけが取り残されていた。
彼女の問いかけを拾う事すら出来ないほどリードは頭を働かせている。
(いきなり、何言い出すんだ。第一、俺が読んだのは昔話から元に出来た童話で本当にある訳じゃない。きっと、コイツの冗談だ)
冗談と締めくくろうとした。だが、違和感しかない。
サチは自分らより先にここに居るからこの情報を知っていてもおかしくはない。
だが、共に過ごしていてふざけた事は言わない奴だと分かっている。
気づけば、同様のあまり、口元を覆っていた。
「ッーーー」
リードは再び同室の女の顔を見る。
長い黒髪に、前髪が跳ねて特徴的だ。
顔立ちは東より、この辺の人間じゃないと学のないリードでも分かる。
改めて尋ねてみた。
「お前が存在しない囚人……なのか?」
サチは頷き、自分の正体を明かす。
「はい、私の名前は黒咲 幸ここじゃない世界から迷い込んだ人間です」
気づけば、彼女は震えていた。
事情は知らないが今まで正体を隠していたのだ。
きっと、それなりの勇気を振り絞ったのだと察する。
幸は話せたと安心してしまい、ホッと胸を撫で下ろす。その時、予期せぬ来客が皆を驚かせた。
「やっほー遊びにきたよ」
綺麗な金髪に、黄色い瞳をした少女が鉄格子の窓から顔を覗かせてきた。
アンとリードは元気のある声に驚く。
幸は偶然、現れる瞬間を目撃してしまった。
「キャッ!」
一瞬の悲鳴と共に倒れてしまう。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ、
どうも、あやかしの濫です。
転生者? おやおや、ラノベでしか聞かない単語が来ましたね。
ここ、ラノベの宝庫のなろうだぞ。とくだらないボケは、置いていきましょう。
思った以上に早く、存在しない囚人が見つかりましたね。
一日挟んだから、早くない方かな?
「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、
是非、ブックマーク、評価を付けてくださると嬉しいです。
最近、X(Twitter)始めました。
よろしければ、こちらのフォローもどうですか?
https://x.com/28ghost_ran?s=11&t=0zYVJ9IP2x3p0qzo4fVtcQ