アイオライト防衛線 Lv.3(十六話)
例え、心が折れてしまっても再び立ち上がらなくてはならない。なぜなら、大切な人たちを守るために
晴れ晴れとした快晴、キャリーはある場所へと向かっていた。
メアリーと再開したあの場所へ……
アンとリードを捕まえたキャリーたちは、二日後、ルークがお礼をしたいと集まることになった。
ルークを待つためにキャリーは、早めにバシレイア兵士の基地に向かっている。
そこでメアリーと最後に話した牢屋を見つけてしまった。
石レンガの冷たい壁の下、小さな鉄格子の窓が見える。
今は誰もいないがかつてメアリーが投獄されていた。
キャリーは俯きながらマジマジと牢の中を覗き込んでいる。
「メア姉、あたし頑張ったよ……泥棒を捕まえたんだ……」
無意識に語りかける様に、彼女は独り言を話し始めた。
「泥棒はね。女の人たちで、前にあたしを助けてくれた人たちだったの……すごく残念な。一緒に捕まえにいった仲間でね。ダインって人がいるんだけど、泥棒の女の人に告白しちゃったんだよ! 驚いたよね……」
何をやっているんだ……自分は、と口をつぐむ。
目頭が熱くなる。
「ねぇ、メア姉……もし、あたしがここで話していたら喜んだ? 会えなくて寂しいよ……」
足元の使い古された自分の靴を見つめる
(あぁ、もし、過去に戻れたら会いに行きたいのに……)
あと少しで涙が溢れそうになった。
「相変わらず、早いなキャリー」
声をかけられ慌てて顔を上げる。
見ると、そこにはへこんだ兜を被ったルークが歩いて来ていた。
「泣いてたのか……?」
彼に尋ねられて、自分が泣いていることに気がつく。
慌てて涙を拭き取る。
「ううん」
微笑んで見せた。
「兜ボロボロだね」
話題を逸らす。
何も言われたくないから。
ルークは自分の頭を触りながら答える。
きっと、複雑な表情を浮かべているだろうとキャリーは思った。
「あぁ、新しいのが届くまでつけてようと思ってな……」
口ごもる。が、ルークは先日のことでキャリーに言いたいことがあった。
「こないだは、助かった。おかげでアンリードを捕まえる事ができた。ありがとう」
首を振って答える。
「ううん、依頼だから。それよりケガの方は大丈夫?」
「あぁ、お前が教会からシスターを連れて来てくれたおかげで大丈夫だ。ありがとう」
「どういたしまして」
満面の笑み浮かべる。
ルークはもう一つ聞きたい事があり、首を傾げながら尋ねてきた。
「なあ、キャリー、昨日、隊長からすごい褒められたんだが、お前、隊長に何か言ったのか? あの娘から色々聞かせてもらった。て言われたんだが……」
キャリーはこくりと頷く。
「うん、ルークのおかげでお宝を取り戻す事ができたって言ったよ」
「そうか……」
ふと、ルークは感謝の思いで子供の頭を撫でてやりたいと手を伸ばす。しかし、寸前のところで止まった。
仇である自分が、彼女の頭を撫でて良いものだろうかと……
彼女は首を傾げてこちらを見つめている。
朝のトレーニングを終えたダインがやってきた。
「おやおや、また、私が最後みたいですね」
「遅いよ、ダイン!」
ルークは触れようとした手を下ろす。
「キャリーにはさっき言ったが、改めて二人ともアンリードの逮捕に協力してくれてありがとう。二人を雇えてよかった」
「私もあなたと仕事ができて良かったです。バーのビーフシチューは、とても美味しかったですよ」
ダインとルークは固い握手を交わした。
ふと、ダインは浮かない顔を浮かべて、申し訳なさそうに尋ねる。
「私、先日の事をよく覚えていないんですよ。背後から誰かに殴られた後から意識が朧げで……必死に何かしていたのだけは覚えているんです」
彼の表情からして冗談じゃないとキャリーたちは気づく。
あれが無我夢中でやっていたなんて、意味が分からない。
二人は誇らしげにあの夜の彼の活躍を話してあげた。
話を聞き終えて、ダインは顔を赤く染め膝をつく。
「なんて、下品な告白をしてしまったんだ! ありえない!」
プライドが知らないうちにズタズタにされていて可哀想だと感じた。
ルークは慰めの言葉をかける。
「何言ってるんだ。お前らしいワイルドな告白だったぞ」
「そんなはずはない! 本来なら薔薇の花束とかを贈るべき行為なのに……私と言う男は……」
ダインの嘆きが面白かったキャリーはくすくすと笑ってしまった。
ふと、馬車が通り過ぎるのが見える。
観光客や貴族が乗るには重々しく息の詰まる様な黒色をしていた。
馬車の後を追って見ると二人の囚人が乗り込むのが見えた。
誰だろうと思い、目を凝らしてみるとアンとリードだった。
「ルーク、あの二人はどうなるの?」
馬車に乗り込む二人を見ながら尋ねる。
「西北の方にある刑務所に連れてかれるんだ。盗みだけならともかく、片方は殺人にも手を出しているからな。檻の中で過ごす事になるだろう」
「……」
そうなんだと思った。ふと、このままでいいのか不安な気持ちになる。
キャリーは慌ててダインに尋ねる。
「ねぇ、ねぇ! あのまま行かせていいの! もう会えないかもしれないよ!」
「お、おい、何言ってるんだ?」
キャリーの発言にルークが反応する。
流石にここで問題を起こさないでほしいと思った。
せっかく共に頑張った仲間が今、敵対する様なことになったら、目も当てられない。
しかし、キャリーが言いたいのはそうじゃなかった。
「もう一度、思いを伝えた方がいいよ! 別れたら当分会えないんだよ!」
彼女の言葉に頭を抱えていたダインが、顔を上げる。
しばらく黙っていたが、その通りだと頷いた。
「キャリーさん、ルークさん、もう一度思いを伝えにいって来ます!」
馬車に向かって走り出す。
彼の背中を見ながらルークが息を漏らす。
「脱獄させるんじゃないか、ヒヤヒヤしたぜ……でも、そうだな……」
そう言いながらルークはキャリーの頭を撫でていた。
撫でられたキャリーは、ゴツゴツとした手でメアリーと全く違ったが、同じようにくすぐったいと思った。
快晴の空の下、思いを伝えに行くダイン、そんな彼を暖かく見守るキャリーとルークの先に一羽の白い鳩が飛んでいた。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
アイオライト防衛線はこれでお終いです。
とても、長かったですね。書いてる時からやべえなこれと思ってました。
この話で今のキャリーの心情がうまく伝わってたら嬉しいです。
キャリーなりに納得しようと心の中で言い聞かせてる感じです。
それでも、寂しい気持ちは変わらずにある。
「アイオライト防衛線」を読んでくださりありがとうございます。
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(こういうのおこがましい様に思ってしまうのですが、
欲しいものは、欲しいと言わないといけないので言わせてください)
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