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ROYAL BOUNTY  作者: アオキチ
三章 上層 王冠宮

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王冠宮の乱闘 前編

 賓客から悲鳴があがり会場の外へ向かって走り出す。


 エイダは近衛将に手を突き出し詠唱するが、ガリウは掴んでいた俺の腕を離し、エイダを制止する。


 ガリウは血を拭い、瞳をギラつかせ視線を近衛将に突き刺した。


「歯ごたえのある前菜じゃないか……覚悟は出来てるんだろうな」

「女の前で見栄張って大怪我する前に帰りな」

 

 ガリウは近衛将のあごを目掛け拳を突き上げる。

 近衛将は半歩下がり鼻先を掠め、拳を躱す。


 近衛将は引いた足を軸に回し蹴りをガリウのかおに放ち、肘で防ぐ。


 近衛将の足の着地と同時にガリウの掌底が近衛将の額を撃ち抜いた。


 ガリウは近衛将の軸足を踏みつけ拳を腹にメリ込ませる。

 近衛将はくの字になり強制的に息を吐き出した。


 ガリウは肘を上げ近衛将の頭に打ち下ろす。

 近衛将は頭を振って避けガリウのアゴに頭突きを食らわせる。


 ガリウは踏みとどまり横腹を狙って蹴りを放つ。

 近衛将は膝を上げて受け止め返す動きで応酬する。


 目を奪われる光景に油断していた。

 首の後ろの襟を掴まれ俺の足が横に蹴り払われた。


 羽のように宙に浮いて床が迫り叩きつけられる。


 背中に重くのしかかり腕を取られた。

 視界の端にエイダが背に膝を乗せ組み伏せている。


「貴様を拘束する。将軍のお気に入りだ。()()に護送してやろう」


 冷気を纏った言葉の後、地鳴りが視界を揺らす。

 軍国の鬼人たちがテーブルを弾き飛ばし、銀器を踏み荒らして向かってくる。


 っつ! 逃げれない……腕から嫌な音が伝わり、すじが伸びて耐えられない痛みが続く──。


 暗くなった……なんだ?


 見上げると獅子顔がエイダの脇腹を蹴り上げる。


 ズドッ!


 エイダの体が吹き飛び、倒れたテーブルにぶつかり会場入り口近くに転がる。

 

「隅に隠れておれ、我輩に任せるがよい」


 軍国の鬼人が獅子顔に迫る。

 勢いをつけた拳に真っ向から拳で迎え打つ。


 拳が互いの顔へめり込み、顔が歪む。


 鬼人はすぐさま拳を打ち込み獅子顔の頭を掠める。


 鬼人の懐に入り体を持ち上げて担ぐ。


 驚いた顔の鬼人をそのまま向かってくる鬼人たちへ投げ飛ばす。

 獅子顔は鼻を鳴らし鬼人たちを睨みつける。


 シノとフェスカが皇子の後ろに静かに回り込み、シノが皇子の耳元で囁く。


「聖王国が"ニンゲン"に執着しています」


 皇子の顔が険しくなりシノに振り向いた瞬間──フェスカが聖女に瓶を投げつける。


「なんだと!? "ニンゲン"はオレ様の物だぞ!」


 ぶつかる寸前、聖王国の騎士が身を挺して瓶を防ぐ。


 青白い顔の騎士が瓶を投げつけられた方角に視線を鋭くさせる。


 皇子が聖女の元に距離を詰める。


「聖王国の聖女! "ニンゲン"はオレ様の物だ! 黙って国に帰るんだな!」


 青白い顔の騎士が剣先を皇子へ向ける。


「先ほどの発破、貴様の仕業か! 飽き足らず重ねて聖女様への愚行、聖王国の名の下に成敗してくれる!」


「オレ様に刃向かうのか? どうなるか分からないなら教えてやる! 処刑だ!」


 聖女が前に出て言葉を投げかける。

 騎士たちが間へ割って入り声は喧騒に呑まれた。


 従者たちが皇子の横をすり抜け聖女に襲い掛かる。

 騎士たちは聖女を中心に陣形を組み刃が重なる。


 青白い顔の騎士が聖女の手を掴み会場の入り口まで避難させる。

「ここでお待ち下さい。必ずや蛮国に制裁を加えて戻ります。」


 青白い騎士が指揮を取り皇国の従者を押し返していく。 



「待たせたな、どういう状況だ」

 後ろからジェリコの声が聞こえた。


「遅いぞ! ……ジェリコ?」


 遮光マスクではなく顔全体を覆う黒い滑面の仮面に、鼻や口の凹凸はほとんどなく目元だけが白い。


 賓客の格好をしているが体格が合っておらず服が悲鳴を上げていた。


「これしかなかったんだよ! 船の準備は出来てる、さっさと脱出するぞ!」


「あ……あぁ、さっさと逃げよう」


 俺とジェリコは入り口に視線を向けると、入り口にはエイダが起き上がろうとしていた。


 エイダが力なく立ち上がり口を動かしている。


「クズ共、クズ共、クズ共! まとめて淘汰とうたしてくれる」


 なんだ? 嫌な予感がするぞ……。


 エイダは手を掲げて叫ぶ。


「クロン・ウィン・イアル!」


 エイダの掌へ会場全体の空気が引きずられていく。


 唸りを上げる風が球状に圧縮されて疾風の塊へ変わった。


 次の瞬間──風が解き放たれた。


 無数の刃となって王冠宮にいる者たちを斬りつけ、風圧が自由を奪う。


 風圧が皇子を壁に叩きつけ、ぐったりと横たわり気を失う。


 柱が抉られて照明が砕け、壁に深く爪痕を刻む。


 頭上で何かが千切れる音が響いた。

 フェスカが削っていた吊り鎖だ。


 天井が崩壊し巨大な照明が傾く。

 聖女の頭上へ瓦礫が降る。


「危ない!」


 咄嗟に俺は聖女を抱き寄せ床へ倒れ込む。

 瓦礫が背中へ直撃して衝撃が走り、歯を食いしばる。


 崩落した照明が魔導灯を巻き込んで眩い火花を撒き散らした。


 次の瞬間──。

 王冠宮から灯りが消えた。

 割れた天井と窓硝子から月光が差し込む。


 疾風の塊は離散していく。

 咳き込む声が終わり再び怒号が響く。


 粉塵の中、誰かがこちらへ駆け寄ってくる。


「何やってんだ」 


 ジェリコが駆け寄り俺の返事を待たず抱え上げる。

「金にならない人助けは子供のうちに終わらせろよ」


 ジェリコは聖女を抱えたまま粉塵の奥へ走り去った。


 ……俺を置いて。


 あのシャチ、聖女と俺を間違えたのか?


「聖女様が連れ去られたぞ! 動ける者は賊を追え!」

 聖騎士たちがジェリコを追跡する。



 シノとフェスカが俺に駆け寄る。

「やったな! 文句無しの仕事だぜ!」

「これ以上は危険、私たちと逃げよう」


 フェスカの肩を借りて立ち上がる。


 逃げようとした矢先、横合いから拳が顔面に打ち込まれる。


 景色が白く塗りつぶされて火花を散らし吹き飛ぶ。


「お前らが首謀者だな。好き勝手したんだ、ツケを払ってもらうぜ」


 近衛将が口角を上げて立ちはだかる。


 フェスカが椅子を掴んで構える。

 シノは落ちてる剣を掴み、目線と同じ高さへ水平に持ち上げる。


 床を這って落ちてる剣を掴もうとするが視界が定まらず世界が回る。

 それでも無理矢理立ち上がり震える足を押さえつける。


 「ここは任せろ! 皇子を連れて船の準備をしろ!」

 近衛将が叫ぶと従者たちが気を失ってる皇子を抱えて離脱していく。


 フェスカが椅子を抱えて近衛将に襲い掛かろうとした瞬間──踏みとどまる。



 獅子顔が掲げた瓦礫をフェスカの後ろから振り下ろした。


 フェスカは横に飛び、振り向き様に椅子を獅子顔の顔面に振り抜いた。


 椅子が砕け散るが獅子顔は止まらず、正気を失って手当たり次第に襲い掛かっている。



 シノは月光の当たらない暗闇を駆ける。

 闇に紛れるシノを捉えられず近衛将の足が止まる。


 動く方向に足先と視線を合わせている。

 俺は背を向ける近衛将に剣先を向けて狙いを定める。



「ダンスの相手をお探しかな?」



 戦場で聞き慣れた声が背後から聞こえ振り向いた。

 余熱を帯びた瞳のガリウがこちらを見据えている。


「私好みの夜会になったぞ。礼に最後の踊りを教えてやろう!」

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