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ROYAL BOUNTY  作者: アオキチ
三章 上層 王冠宮

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24/31

理不尽な圧政

 見覚えのある倉庫部屋。

 扉を床に倒し仰向けに寝ている。

 停泊したジャンバラヤ号だ。


 そういえば停泊中は吊るされてる状態だったな。


 昨日は悪夢のようだったが目が覚めても消えない。


 狐の獣人――ロルメ。


 体を伸ばし船の貯水槽から水を汲む。

 布を濡らして体を拭き身支度を整える。

 ジェリコを探し館内を歩く。


 船室、動力室、貯蔵庫、整備場、操舵室、共有スペース。

 不気味な見た目だが見慣れてきたな。


 「契約場か?」


 一通り調べた後ジャンバラヤ号を出て契約場に向かう。


 普段より大通りは人が少なく中には甲冑を着用して巡回している者もいる。

 昨日はいなかったはず……契約場に近付くと閑散としていた。


 何かあったのか? 


 契約場に入る。

 いつもは掲示板の依頼を吟味し相談で溢れているのに誰もいない。


 依頼を確認する――。


 ――――――――――――――

【沙汰待ち】

 各国会合につき、他依頼は延期。

 

 報酬:――――――

 期限:閉会

 発行:開放領都スートレス 契約場

 応募資格:――――――


 署名:――――――

 ――――――――――――――

 

 これはなんだ? 他に依頼紙もないし、どうなってるんだ?


「まだ期限があるはずだ!」

 大声に振り向くジェリコがロッケンに詰め寄っている。


「今まで太陽が七つ沈むまで滞在費の精算はなかっただろう!」

「それは依頼紙の達成がない場合だ。今回は高額依頼をこなしてる。それで精算出来るのに()()()のが問題だ」


 ロッケンが依頼紙と許可証を束ねて弾く。


「まず書類を上に出さなきゃならん。賞金も出してる。即刻ツケと滞在費を精算するのが鉄則だ。使いこまれて取りっぱぐれは避けたい」


「だから太陽が沈むまでに精算しろだと!?」

「本来は太陽が昇るまでだが付き合いだ。これでも期限は伸ばしてる」


「ならなぜ依頼紙が一枚もないんだ!」

「各国の会合だ。上層でお偉いさんが来るから、今日は大人しくしてろとさ」


 ジェリコがカウンターを叩き、飛び出してズカズカと契約場を出ていく。

 ロッケンは鼻から短く息を抜く。


 カウンターへ行き尋ねる。


「精算はいくらなんだ」

「ん? 船を二つの夜まで預かって一食三人の飯代で五千コルだな」


 千コルで銀貨一枚、銀貨五枚。

 賞金稼ぎ以外手に入れる方法は思いつかないぞ。


「念のためだが今日は悪い事はするなよ。あちこち監視の目があるからな」

「捕まったらどうなるんだ」

「大から小まで国際問題にこじつけられて待った無しの処刑だろうな」


 軽口で言っているが冗談を言っている様子には見えない。

 ロッケンは話を切り上げるように手で追い払う仕草をする。


 契約場を出て当てもなく大通りを歩く。

 ここまで乗せてくれて一緒に戦ったジェリコを見捨てるか? いや、手助けしたい……けど、どうすればいい?


「おい」


 反応して立ち止まり、振り向くと無骨だが傷のない甲冑が目の前に立っている。

 


「……俺か?」

「そうだ。その背中の物はなんだ?」

 腰の剣に手を掛け声に疑いが乗る。


「銃だ」

「銃? 知らんな没収する。」

「没収!? 何でそうなる!」

「黙れ。反逆罪になりたいか?」


 いきなりなんだ!? そんなの許される訳がないだろ……隙を見て逃げられるか?


 「さっさと寄越せ」


 苛立ちを含めた声。

 手を伸ばす――遠くで騒ぎが聞こえる。


「捕まえろ、逃がすな!」


 向こうから片目の男が走ってくる。

 顔立ちは人間に近い、短く荒れた黒髪を後ろで束ねて片目は潰れてる。


 その後ろを甲冑の一行が追う。

 伸ばした手を止め振り返る。


 今だ! 


 踵を返し走り出す。

「おい、待て!」


 大通りを抜け小路を走る。

 土地勘がなくて先が分からない。


 「こっちだ!」


 片目の逃亡者は並走して走る。

 考えるより先に言葉に従い走り出す。

「仲間がいたのか!? 追い詰めろ!」


 立て掛けた木材を倒し木箱を飛び越えて後ろを確認する。

 人数は減っている……二~三人か? 距離はまだある。


 片目の逃亡者の足が止まる――。


 行き止まりかよ。


 振り向くが脇道のない通路、戻れば鉢合わせになるかもしれない。


 登れそうではあるな……協力すれば。

 けど、会ったばかりの奴を信じるのか? 散々騙されてきたのに。


 片目の逃亡者がこちらを見る。

 一瞬、訝しげな顔でこちらを見た。

「てめぇは……」


 金属の軋む音が迫る。

 時間は余り残されていない。

 片目の逃亡者が壁を背に掌をすくうように重ねる。


「先に行け!」


 本気か? しかし、真っ直ぐな視線が俺の疑問を打ち消す。

 片足を掌に乗せ反対の足で肩を踏みつけ飛び、壁に手が掛かりそのまま登る。


 俺は手を差し出すと片目の逃亡者はその手を掴み壁をよじ登り、反対側へ飛び降りそのまま駆け出した。



 空き家の前で立ち止まると辺りを見渡し扉を開き、首で促されるがまま踏み入れる。


「助かったよ、ありがとう」

「気にすんな"頭目"。いや、あの集団を率いたなら旗頭か? ハミトン」


 俺の名前を知ってる?

 頭目って呼ぶことは。


 頬から首、肩、手にかけて砂色の硬い鱗がびっしりと広がり、乾いた岩肌みたいな質感に屈強な体つき。


「俺様は《フェスカーアス・ティスア》砂蜥蜴の鱗人。俺たちの間柄だ、"フェスカ"って呼んでくれ」

 「監獄リンプインの生き残りか!?」


 この出会いが開放領都スートレスを揺るがす始まりになるなんて、俺はまだ知らなかった。

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