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ROYAL BOUNTY  作者: アオキチ
二章 開放領都スートレス

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覚醒

 狐の獣人に魔物が襲いかかる。


 片膝をつき肩に銃床を当てる。

 照準も曖昧なまま震える手で銃身を押さえ込む。


 引き金をひいた。


 氷柱が放たれる。

 ぶれたはずの軌道が収束していき魔物に衝突して弾き飛ばし、空気が凍りついた。


 撃てた……!?


 これがミラーラが言っていた。

 『定義祈檻ていぎきかん』――魔法武器。


 視界の端でジェリコが白い蟻の上位種と組み合いになり、背の白い塊が大きく揺れる。


 霧状の麻痺が来る! なら炎か!


 狐の獣人の炎が脳裏をよぎる。

「フレイ!」


 血の気が引き指先の感覚が消えていく。

 銃身が紅く煌めく。


 白い蟻の上位種の下半身を狙い引き金を引く、火球が噴霧を巻き込み白い塊と足を焼く。


 体勢が崩れた瞬間、ジェリコが蹴り飛ばす。


 ジェリコが駆け寄り背合わせの状態で魔物と対峙する。

 魔族の背後に唯一の入り口が視界に入る。


「全部は相手出来ない。魔族だ! 首を取って離脱するぞ!」


 犬の獣人たちは耳をピクリと動かす。

 魔族への進路を塞ぐ魔物へ向かう。


 ジェリコは魔物を殴りつけ間合いを取る。


「どうするつもりだ?」

「考えがある! 障壁を一点集中で破ろう」


「ハッ! 分かりやすい作戦だな。まずは雑魚の掃除か」


 ジェリコは狐の獣人を脇に抱える。

 「前は任せろ、合図を待ってるぞ」


 撃退しつつ足止めが必要……。

「グラン!」

 銃身は琥珀に煌めく。


 威力は弱いが素質はある。

 なら戦況で使い分ける。

 それが俺の戦い方だ。


 近付く魔物から距離を取る。

 集団へ雑に狙いをつけ引き金を引くと地面がうねる。


 魔物の集団から石柱が突き上がり魔物の足が止まり体勢が崩れ、犬の獣人たちが一気に距離を詰める。

 

 狐の獣人が目を覚ます。


 「っ……やってくれるわ」

 「起きたか! 一気にケリをつけるぞ!」


 ジェリコが狐の獣人を降ろし、一体、二体と叩き潰す。


 魔物の足が止まった。

 流れを作れる、これで押し切れる──。



「煩わしい」


 低く構え翅を高速で震わせる。

 腹部が発光し粘ついた何かが翅へ流れる。

 結晶化し翅がガラスみたいに尖がる。


 次の瞬間、跳んだ。

 空中で身を捻り弾ける。

 翅が砕け無数の刃の結晶が降り注ぐ。


 遮蔽物が見当たらない──!


「後ろに回れ!」

 ジェリコは魔物の肉塊を掴みあげ盾に使う。

 ジェリコの背に回り刃から身を隠す。

 犬の獣人たちは刃の届かぬ場所を求め走りだすが、片方が魔物に足を噛まれ転がる。


 犬の獣人体中に刃が突き刺さる。

 小刻みに震え、刺された箇所が黒く侵食していく。

 魔物が群がり飲み込まれる。


「ドーナ!」


 犬の獣人は群がる魔物に襲いかかる。

 牙を噛み締め、眉間に皺が刻まれ、目は見開かれている。


 牙が食い込んでも止まらない。

 魔物に覆われていく。



「鯱! 魔力根は!」

「あぁ!? 腰の革袋の中に上等なのが入ってる!」


 狐の獣人がジェリコの革袋と()()()を漁る。 


 降り注ぐ刃が止んだ。

 魔族の背が再び脈を打ち翅が開かれる。


 狐の獣人は魔力根を取り出し口で噛み潰し、息を吸い込む。


 息を止め目を閉じた。

 狐の獣人が、白く──淡い青の光に包まれる。


 何が起きるんだ?


「舌も涙も焼き尽くす。命請う姿すら叶わない」


 魔族を見据え手をかざす。


蒼炎円舞そうえんえんぶ


 白に近い淡い青の炎が魔物に侵食していく。

 炎から逃れるため振り払う姿は踊り狂っている。


 魔物に燃え広がり魔族を襲う。


硝壁プロテクト


 小さな硝子がきめ細かく敷き詰めたような幕が張られる。

 

 青白い炎の波が障壁に阻まれる。

 それでも離れない。

 飲み込まんとばかりに食らいつく。


 魔族は変わらぬ顔で青白い炎を見つめる。


 ジェリコに目で合図を送る。

 そのまま魔族へ走り出す。


「フレイ」


 銃身が紅く煌めく。

 ここからはぶっつけ本番だ……。



 青白い炎が勢いを失い障壁から剥がされていく――。


「オルカ・ストライク!」


 ジェリコが勢いのまま障壁を殴り付ける。

 衝撃が一点に集中し障壁を撃ち抜く。


 障壁が破壊される。

 魔族の表情が変わる。


「チロス!」

 銃身は紅く、碧く、交互に煌めく。


 障壁の砕けた箇所、魔族に狙い――放つ。



 白い蟻の上位種が魔族を庇うように前へ出る。


 空気が張り裂けた。

 衝撃が爆ぜ辺り一面に広がり雲のように煙が沸き上がる。


 白い蟻の上位種は吹き飛び壁に叩きつけられる。

 顔の半分が消えていた。

 砕けた甲殻と肉片が崩れ落ちる。


 魔族は動かなくなった白い蟻の上位種を一瞥する。


「橋頭堡を維持する戦力を失った。これ以上は無意味だ」


 視線で俺を射貫く。

 踵を返し魔族が背を向け立ち去る。


 その動きに合わせ魔物たちがぴたりと向きを揃える。


 無言のままぞろぞろと後に続いた。


 「今度こそ終わったのか?」



 これが、初めての依頼だった。

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