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ROYAL BOUNTY  作者: アオキチ
二章 開放領都スートレス

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19/31

萌芽と信頼

「あ、の、狐ーー!」

 ジェリコは力の限り踏ん張る。

 地面が割れんばかりの音が響く。


「盗られる前に捕まえるぞ!」

「コイツらを先に始末するべきだろ!」


 犬の獣人たちの意見が割れた。

 抜け出すのが先決、両手で足元を掘り出す。


「やるぞ! ここで始末しないと殺される」

「待て、あそこには商売道具まで入ってる。二手に別れよう!」


 あと少し……抜けた! 

 短刀を握りジェリコを助けに向かう。

 掘り起こせば、まだ終わらない。


 片割れは反対方向へ走りだす。

 犬の獣人は剣を構え襲いかかる。


「抜け出すまで耐えろ!」

 ジェリコは体を掘り起こしている。

 やるしかない!


 犬の獣人は大振りで斜めに斬り込む。

 俺は避けて切り上げる。

 一歩下がりアゴをあげて避けられる。


 犬の獣人は足を引き分かりやすく蹴りあげ、短く飛び避ける――足に引っ掛けた残骸が飛んでくる。


 顔に飛んでくる残骸を肘で受け止める。

 視界が遮られ見失う――姿勢を低く剣を突き出された。


 避けるのは無理――武器は間に合わない。

 身をよじり背中を向ける。

 『ガラクタ』を剣にぶつけ反らす。


 体勢が泳ぐ。

 踏み込み、飛び込む。


 転がって距離を取る。

 ……駄目だ、動きに無駄がない。


 勝てるのか?

 いや、時間稼ぎさえすればいい。


 犬の獣人はジェリコを横目で確認する。

 決着を早めるため突っ込んでくる。


 しゃがみ手のひらを突き出す。

 撃てない魔法だが牽制にはなる。


 犬の獣人は舌打ちし横に飛び狙いを散らす――ジェリコが先読みして残骸を投げる。


 犬の獣人の足に残骸がぶつかり体勢を崩して転ぶ。 


 今だ! 短刀の刃先を胸に突き込む。


 犬の獣人の口角がつり上がる。

「グラン」 

 刃先が岩にぶつかり砕ける。


 しまった!


 地面を蹴り上げ距離をとる。

 残された武器は銃の形をした"ガラクタ"のみ……やるしかない。


 装填されてない銃口を犬の獣人へ向ける。

 犬の獣人は立ち上がり、剣を構え距離を詰める。

 銃を向けても迷いなく踏み込んでくる。


 不味い! 必死に片手を突きだす。

 脳裏に浮かぶのはあの時のミラーラだ。


「チロス!」

 

 掌の痛みに備える……痛みじゃない。

 指先の血の気が引き視界の端で銃身が(あお)く煌めいている。

 

 犬の獣人は足を踏ん張り立ち止まる。

 腰を落とし顔を剣で隠すように構えた。


 ……今、何が起きた? ガラクタの銃が冷たくなっていくような気がする。



 犬の獣人の後ろに黒い影が質量を持って現れた――ジェリコだ!


 怒気が込められた拳は犬の獣人の後頭部を殴りつける。

 顔面は構えた剣に叩きつけられ、鈍い音とともに地面へ崩れ落ちる。


 ジェリコは拳を振りかぶり狙いをつけている――頭を潰す気か!? 


「向こうの助けに行こう!」


 慌てて言葉で行動を遮る。

 勝負はついてる、これ以上は見たくない。


「あの裏切った狐の助けにか?」

「……気持ちは分かるけど向こうの敵を野放しにできない。こいつを人質にして降伏させよう」


 ジェリコはしばらく睨みつけたまま振り上げた拳をゆっくりと下ろし、無言でポーチから麻紐を取り出す。


 「……まぁいい。お前には助けられた、行け」


 犬の獣人の剣を腰に差す。

 持ち手に違和感あるがないよりましだ。


 二人の逃げた先へ向かう。

 銃身は未だに碧く煌めいている。


 狐の獣人が見えた!


 荷物を――物色している……。

 隣で犬の獣人が麻縄で縛られ伸びている。


「あら、終わったの?」

 こちらに気づくが手は止まらない。


「別れてすぐ隠れたのよ。犬の獣人が走っていく背を追っただけ、"収穫"の隠し場所にたどり着いたら後ろから――これよ!」


 得意気に語る狐の獣人。

 俺たちを裏切ってこの態度はなんなんだ?


「この肘当てと革のチュニック、あんたに似合うじゃない」


 荷物を覗きこみ防具を手に取る。

 欠けて血が染みてるが使えそうだ。


「コイツらの物だろ勝手に盗ったら不味いんじゃないか?」

「ならコイツが起きたら交渉する? 命と引き換えに荷物をよこせ。素敵な取引だわ」


 勝者が敗者から奪う、この世界を分かりやすく教えてくれた。


 狐の獣人が何かに気づきその場から飛び退く――縛り上げた犬の獣人が足元へ投げ込まれ、地面に叩きつけられて転がり荷物にぶつかる。


「狐! よくも頭を踏みつけて裏切りやがったな!」

 ジェリコは狐の獣人に早足で駆け寄り見下ろす。


「あんた達なら切り抜けられる。あたしは信じて任せたのよ」


 ……詭弁だ。


 しかし、堂々とした立ち振る舞いは見上げたものだ。

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