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ROYAL BOUNTY  作者: アオキチ
二章 開放領都スートレス

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18/31

交渉と提案

 残骸回廊は、密林のようだった。


 道は細く一列でしか進めない場所もあれば大きな広間もあり、瓦礫の段差を登り降りする場面も出てくる。


 横から魔物が飛び出し壁が崩れ、道が塞がれるが崩れた先に新しい道ができる。


 残骸の壁の隙間に埋もれた魔鉱石の橙色が弱く明滅して、足元は苔の青白い光がぼんやりと照らしている。


「残骸回廊の地図はないのか?」

「あるわよ。食事台を拭いたり靴底の汚れを落とすのに使うわね」


 どういう意味だ? 皮肉か?


「地形は天気みたいに変わるからな、後で分かる」


 聞くより見る……そういう世界だったな。


 肩を捕まれる……狐の獣人? 

 またかよ、いい加減にしてくれ。

 目を細め振り返る。



 人差し指を口に当てて目線で何かを探る。

 真剣な顔がそこにあった。

 ジェリコが後方を警戒し音を立てず陣形を狭める。 


「前方、分岐路。右に二人」

「音を消した、警戒してる」


 武器を抜き構える。


「待て」

 ジェリコが静止する。


「無駄な争いは避ける。事情を話して通る」

「こっちは数で有利なのよ?」


 声を押し殺した会話。

 同時に俺を見る。


 どうする? ……交渉だろ。


「争いたい訳じゃない。依頼をこなしに下層に来た、通してくれないか?」


 残骸の壁の陰から覗くように現れたのは二人組、同じ犬顔が並ぶ軽装の獣人。


「そんなの信用できねぇ」

「ここはオレたちが先に押さえた稼ぎ場だ」


 剣を構え牙を見せる。


「これが依頼紙だ。許可証もある」

 ジェリコは目の前で広げて見せる。


「こっちに投げろ」

「ハッハ! 確認してやるよ」


 俺は犬の獣人に刃先を向ける。

 狐の獣人は手をかざす。


「ここまで来て確認しろ。力づくで押し通ってやろうか?」

 ジェリコの声に怒りが滲み、俺たちは視線を鋭くさせる。


 犬の獣人たちは横目でお互いを確認し牙を引っ込めた。


「ほっ、本気にすんなって」

「こっ、ここでは挨拶みたいなもんだろ?」


 犬の獣人たちは剣をしまい下がる。


 「オレは《ドーナ・イシビリ》。回収屋」

「《ダーナ・イシビリ》。解体屋のハイエナの獣人だ」


 状況を理解して自己紹介……こちらの警戒を解きたいのか?


「反対方向なら奥に続いてる」

「こっちは行き止まりだぜ。本当だ、オレたちの"収穫"に誓っていい」


「収穫?」


 残骸回廊の収穫ってなんだ? ゴミ山にしか見えないところで。


「食いぶちのために必死なんだよ」

「お互い仕事だろ? 勘弁してくれ」


 犬の獣人たちは身振り手振りで弁解している。

 情報もくれたし、もういいだろう。

 

「ありがとう。さぁ、先に進もう」


 ジェリコは舐められた態度が気に入らず、まだ視線を外さない。

 狐の獣人は『収穫』に耳にして尻尾をゆっくり動かしている。


 ……二人を動かすのは骨が折れる。



 反対方向にしばらく進むと違和感がある。

 妙に歩きやすく足が沈まない。


 行き止まりだ、他に道がない。

「…戻るしかないか」


 来た道を戻ろうと振り返る。

 壁の奥で何かが動く音がする。


「なにか、来る――」

 言葉は遮られた。


 瓦礫の壁を破り芋虫の魔物が無造作に襲いかかる。


「グラン!」


 誰の声だ? ――犬の獣人か!


 石柱が地面から突き上げ、身をよじるが肩にぶつかり衝突の勢いで壁に打ち付けられる。


 体を立て直し構える。

 飛びかかってくる魔物を短刀で受け止め蹴り飛ばして距離を空ける。


 ジェリコが拳を魔物に叩き込み貫き、血肉を散らしながら犬の獣人へ飛び出した。


「奴ら! 魔物の餌にしてやる!」


 犬の獣人は小さく笑い逃げ出した。

 ジェリコが後を追い足を踏み出した瞬間、地面が沈んだ。


 瓦礫が崩れ視界が下がる。

 足が地面に埋まり抜け出せない。

 視界の端ではジェリコが腰まで埋まっている。


しゃち! 足場!」


 見上げると狐の獣人が空中に跳んでいた。

 ジェリコは地面に指を食い込ませ踏ん張り肩に狐の獣人の足が乗る。


 目を細め視界の魔物を掌握する。

「フレイ・レイア!」


 狐の獣人の回りに火球が一斉に現れ魔物に放ち、火球は次々と襲いかかる。


 ……凄い。


 複数の魔物に正確に当てている。

 魔物を焼き焦がす匂いが下層の匂いを押し退け、辺り一面魔物を燃やす炎で明るく照らす。


「こいつは凄い賞金稼ぎが来たもんだ」

「早速だが命は助けてやるから荷物を全部差し出しな」


 犬の獣人たちはニヤニヤ笑いながらこちらを見る。



「焼き殺せ! 騙す奴が命の保証するわけないだろ!」


 ジェリコの言う通り最初から罠に嵌めて命を取りに来てる奴らだ、信じられるわけがない。


 だが、俺とジェリコは動けない。

 数と環境の有利を取られた。

 相手の手の内はまだあるのか?


「そんなのあたしが得しないじゃない。新しく提案するわ」


 狐の獣人の言葉にその場の空気が固まる。

 視線だけが静かに集まった。


「この二人の命と引き換えにあなたたちの"収穫"と取引でいかがかしら?」


 ジェリコの頭を踏み台に壁に飛び、蹴り上げる。

 犬の獣人の間に火球を放ち退け、その隙間を縫って走り抜けた。


 ……何を言ってるんだ?


 まさか――俺たちを差し出して自分の利益に逃げたのか!?

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