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ROYAL BOUNTY  作者: アオキチ
二章 開放領都スートレス

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残骸回廊

 俺と狐の獣人は道具の補充を終え契約場へ戻った。


 ジェリコが壁に寄りかかり山の天気を読むように依頼紙を眺めている。


「準備終わったわよ」

「そうか、いつでもいいぞ」


 二人の間に余裕はあるがまだ雰囲気は良くない、一歩踏み出し流れを切った。


「下層までどうやって行くんだ?」


「開放領都の"中央昇降リフト"で行くのが正規の移動手段だな」


 声に振り向くと鯰の魚人は仕事の案内を読み上げるように告げた。


「《ロッケンマーカー・ボン》、鯰の魚人だ。親しみを込めて"ロッケン"と呼んでくれ」


 こちらを見ていない、案内台越しに見える太い指先が紙をめくり大きな目が内容を追っている。


「そんな道は使わん、"旧運搬路"を使う」

 ジェリコは壁の開放領都 内部が書かれた地図をさす。


「行けば分かるわよ」


 狐の獣人が急かすように声を張った。

 確かに説明より一目見たほうが早い。


「よし、行くぞ」


 俺は契約場の扉を開くと二人の顔つきは引き締まる。

 鯰の魚人は、横目でその背を見送った。



 契約場を出て大通りへ向かう。

 二人は即席の協力関係を言葉少なに擦り合わせていく。


 商業区域を横切る。

 商人達は俺達三人を品定めするように隅々まで目を走らせていた。


 下層の入口、旧運搬路に近くなる。


 湿度が肌に纏わりつく感覚、汚れた空気の匂いがして足の感触が重くなる気がした。


 接合祈療堂 分堂へ向かう人影は足を引きずる者や、意識を失った者を担いで駆け込む姿が次々と目に入る。


 ここから先は仕事場だ。

 用意した道具の中には、命そのものも含まれている。


 喧騒から離れた場所にある一角。


 入口は口を開けた穴、中は斜めに落ちていて歩ける傾斜だが戻れる保証はない。


 錆びたレールと千切れた鎖が垂れてかつての機構は面影を残して朽ちている。

 下から吹き上がる湿った風が腐った匂いを運んでくる。


 ……ここから先が下層だ。

 足を踏み入れると『ミシッ』と軽い音が足裏に返ってきた。


 狐の獣人からは足音がしない。

 地下足袋ちかたびのブーツが、地面を舐めるように滑る。


 ジェリコは周囲に目を走らせている。

 重厚な革と金属が擦れる音。

 肩と腰に巻かれた装備は使い込まれているのに無駄がない。


 下層に一歩踏み入れたその時。

 自分の身は自分で守るしかない。


 傾斜がなくなり血と廃棄物の匂いが濃くなる。


 硬木や皮、麻布が折り重なり瓦礫のように積み上がって通路を成して、縄紐で固定され壁として組み上げられていた。


「どうせ下層も初めてでしょ。この"残骸回廊ざんがいかいろう"も」


 残骸回廊?


「中層から船の残骸が降ってくる。持ち主をなくした船は解体されそのまま捨てられる場所だ」


 ジェリコは鉄拳甲を嵌めて残骸を眺めた。


 乾いた音が響く。


 まるで船の墓場が崩れてそのまま迷路になったようだった。


「あんた斥候とかなんでしょ? 先導しなさいよ」

「俺? そんなのやった事ないぞ」


 狐の獣人に言われるがまま先頭を歩く。

 後ろから二人の話し声が聞こえてくる。


 「あんな田舎者どこで拾ってきたのよ。子供のほうが世間知ってるわよ」


「軍国領内だ、面白いだろ? 最初見たときは箱入りみたいな反応だったが、服は紋章の刺繍入りで武器は軍国産ときた。あれは金持ち貴族の迷子だな」


 二人の仲が良くなるなら好きに言ってくれて構わない。


「そのうち捜索願いの依頼紙がでる。その時がきたら保護してましたと引き渡す。簡単な依頼だ、報酬は貴族からなら期待できる」


「ちょっと! あたしも子守りしてるんだから一枚噛ませなさいよ!」


 これが賞金稼ぎか……。

 監獄の仲間たちと同じ世界の生き物なのか疑問がよぎった瞬間だった。


 視界がずれた。


 次に目に入ったのは地面だ。


 背中から重みを感じる。

 

 ――動けない、襲われたのか!?


 ドゴッ!


 音と共に背中の重みは消え壁から衝突する音が響く。


 身をよじり、正体を視認する。


 ……芋虫? 一人分はある大きさ。

 口周りに禍々しい牙を備えている。

 この世界なら――魔物か。 


「フレイ」


 狐の獣人は手をかざす。

 壁に叩きつけられ痙攣けいれんする芋虫に火球を放ち燃え上がる。


 息絶えた肉塊を背にジェリコは俺に近付き倒れた案内板を直すように掴み上げて立たせる。


「あ、ありがとう」

「せいぜい死ぬなよ」


 俺たちは依頼紙にある目的地を探し入り組む下層の探索が始まった。

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