Vol.093【確かめたいこと】
沙羅「確認って……何なの?」
ケンジ「まず単刀直入に言う。
凶器はナイフだ!!」
沙羅「ナイフ……?私の……?
そんなもの持ってた覚えないけど……」
ケンジ「特徴を言うから、よく聞いてくれ。」
沙羅「う、うん……。」
ケンジ「グリップが壊れてて、少し割れてる。
最近割れたような感じだった。」
沙羅「グリップが割れてるナイフ……?
ますます覚えがないけど……。」
ケンジ「少し変わった形なんだ。
サバイバルナイフっていうのか……
先端が少しギザギザしてて、刃の部分に“鷲”の刻印。
それと――
『1957年 50thモデル』って彫られてた。」
沙羅「……ま、まさか。」
ケンジ「心当たりあるのか!?」
沙羅「そのナイフ……
黒のエンボス加工のグリップで、ハサミみたいな指掛けが付いてなかった?」
ケンジ「……言われてみれば、そんな感じだった。」
沙羅「グリップの後ろ!!先端を見て!!」
ケンジ「あ、あぁ……。
……H.Mってイニシャルがある。」
沙羅「や、やっぱり……。
私の父親、
三奈月仁史のイニシャルだよ……。」
ケンジ「っ……!!」
沙羅「お父さん、登山が趣味でね。
そのナイフ、昔よく持ってた。
……間違いない。
あれ、お父さんのサバイバルナイフだ……。」
ケンジ「マジかよ……。」
沙羅「いつの間にか無くなってたの。
まさか来夢が……?」
ケンジ「家に来た時に盗んだってことか……。」
沙羅「でも……
あのナイフ、グリップなんか割れてなかったよ!?」
ケンジ「……!!
待てよ。
ナイフの一部が割れてて、破片が無いってことは――」
沙羅「来夢が、その破片をどこかに……?」
ケンジ「あぁ……。
証拠として残すつもりだった可能性がある。」
沙羅「ケンジ……もう警察に全部話そう?
ねぇ、お願い。」
ケンジ「……わかってる。」
ケンジは深く息を吐いた。
ケンジ「実際、沙羅は無関係だ。
このナイフも、おそらく来夢が交際してた頃に家から盗んだんだろう。
……でも、それを証明する証拠がねぇ。」
沙羅「……うん。」
ケンジ「だから俺、自首はする。」
沙羅「ケンジ……!」
ケンジ「けど……
もう少しだけ待ってくれねぇか。」
沙羅「え……?」
ケンジ「せめて一目……
空央に、“空”に会ってから。」
沙羅「…………」
ケンジ「このまま捕まったら、
せっかく目の前に現れた空と、もう二度と会えない気がするんだ。」
ケンジの声が、少しずつ震えていく。
ケンジ「それに……
空が、ネバーランドで変わっちまった理由を聞かねぇと……
俺は……
孤独で耐えられねぇ。」
沙羅「ケンジ……」
ケンジ「一言でいいんだ。
“どうして変わったのか”
それだけ聞ければいい。
それを聞けたら……
俺、安心して行ける気がするんだよ……。」
沙羅「……ケンジは、本当に空央さんを愛してたんだね。」
ケンジ「あぁ。」
沙羅「……うん。
私が疑われることを心配してるなら、気にしなくていい。」
ケンジ「沙羅……。」
沙羅「空央さんに会おう、ケンジ。」
ケンジ「……すまない。」
沙羅「ううん。」
ケンジ「ありがとう……沙羅。」
紗羅「それよりケンジ?
漓久にはどう伝えるの?」
ケンジ「アイツにはまだ言えねぇ!真っ先に言わなくちゃいけねぇんだけどな!」
紗羅「やっぱりSoRaの事?」
ケンジ「それもある……
でも他の事も!
ありすぎてわからなくなる!」
紗羅「うん……」
ケンジ「せめて俺が自首するまではシラフで漓久と過ごしたい。
もう俺にはあの頃のようにアイツとは過ごせないから……
もう少しだけ漓久と今まで通りに……」
紗羅「ケンジ――」




